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天音さんのお家で二人きり

 バスに揺られること半日。

 ようやく地元に到着した。懐かしき故郷、この空気感……久しぶりだ。


 各々久しぶりに実家に帰るのもアリなのだが、俺は家がない。すでに両親は海外移住し、安全場所で暮らしてもらっているのだ。


「参ったなぁ……」

「早坂くん、どうしたの?」


 散り散りになる中、天音が声を掛けてきてくれた。俺は事情を説明。


「俺、帰る家がないんだ」

「え……? マジ?」

「ああ、マジだ。実家は売っぱらった。両親は海外にいる」

「え! なんでそんなことに!?」

「ほら、物騒じゃん。だから俺一人で何とかしなきゃって思ってさ。財宝を売った金の一部を両親に渡した」

「わぁ、偉いね。ちゃんと親孝行してるんだ」


 微笑む天音。その表情はみとれるほど可愛い。それに、そんな風に褒められると照れるな。


「まあな。……家がないし、ネカフェで泊まるかな」

「それじゃあ、家に来なよ。駅から歩いてそんなに掛からないし」

「天音の家に行っていいのか?」

「もちろんだよ。早坂くんと一緒なら楽しいし」


 俺の腕に抱きついてくる天音さん。俺は心の中でガッツポーズ。これはありがたい! 天音と一緒に行動できるだけでも幸せなのに、家に上がらせてもらえるとか!


「もうみんな家に帰ってしまったし、天音の家にお邪魔するかな」

「いいよいいよ~。わたしは一人暮らしだし、家族は東京で暮らしているからさ」


 天音の家は金持ちだ。

 父親が社長であっちこっち飛び回っているような人だからな。主に東京で活動しているらしいが。


「それじゃ、お言葉に甘えて」

「うんうん!」


 恋人みたいに歩きだす俺と天音。周囲からの注目も抜群だ。――って、そりゃそうだ。天音は有名アイドルなのだからな。分かる人には分かるのだろう。

 このままでは声を掛けられるだろうから、俺はグラサンを取り出し、天音に掛けさせた。


「これで変装完了だな」

「おー、いいね! これならバレにくいかな。帽子もかぶっとこ」

「よしよし、偉いぞ」

「えへへ。それじゃ、マンションへ行こっか」


 雑談を交えながら駅から少し離れた超高層マンションへ……って、ここかよ!! 市内一番のマンションだぞ!!

 芸能人とか有名人が住んでいるようなマンションだ。

 セキュリティも何重にもなっており、まず泥棒は侵入不可能。


 エレベーターに乗り、最上階の五十階へ。そんな上にあるのかよ。


 セキュリティを何度も何度もくぐり、ようやく到着。どうなっているんだよ、このマンション。面倒臭さがあるけど安心感もあるなァ!


「ここがわたしの部屋」

「部屋って……お城かよ」


 扉を開ける天音さん。最先端のスマートロックかよ!

 そんなツッコミをしている間にも廊下が見えてきた。馬鹿みたいに広くて、ピカピカ。なんだこの空間。凄すぎて感想らしい感想が思いつかん。


「どうぞ、上がって」

「あ、ああ……」


 廊下を進むと、テニスコートくらいあるリビングが現れた。いや、それは言い過ぎた。でもそれくらい広いのだ。窓も背よりも高くて広い。

 夜景が一望できるとか、最高の展望台だな。


「どう、凄いでしょ!」

「凄すぎだって。天音って本当に金持ちなんだな」

「パパが凄いんだよ。ちなみに、この部屋は誕生日プレゼントで貰ったんだ」


 普通、貰えるものなのか!?


「ソファに座って夜の街を眺めるのも悪くないな」

「綺麗だよね、ここ」


 寄り添ってくれる天音。

 俺は自然に天音を抱き寄せる。

 こうして二人きりになる約束だった。

 ようやく叶えられた。

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