さらばオーハ島!
オーハ島の生活はあっと言う間に過ぎていった。
最終日である三日目を迎え、荷造りを進めていく。
残念なことに、銃撃戦で穴だらけになったいせいで、虫や動物の侵入が多くなってしまった。結果、住みづらくなるという最悪な事態に。
このままでは生活どころではない。
結局、この家にはいられなかった。
「こっちは終わったよ~」
キャリーケースを引くリコ。生粋のギャルだから様になっているというか、そのまま旅行に出てもおかしくない雰囲気だった。最近、ネイルやピアス、アクセサリー類が派手になってきている。あのまま学校へ登校するのだろうか。
「俺も準備完了だ」
「みんなはまだ掛かってるみたい。それまで一緒に待ってよっか」
「そうだな。この家ともおさらばかぁ」
「もう少しいたかったねよねえ」
その通りだ。襲われることがなければ、この島でのびのび生活するのも悪くないと思っていた。けれど、ホワイトウォーターに襲われた以上はもういられない。
新たな敵に狙われるかもしれないしな。
それに、ロシア人のことも気掛かりだ。
あれ以来、姿を現す気配がなかった。
しばらくして、みんな準備を終えてきた。
「お待たせ~、早坂くん」
「おう、天音。って、そんなに荷物あったっけ!?」
「うん、着替えとかね。いろいろ」
それにしては多すぎる気が。引越しかよってレベルであるけどな。
まあいいか、大体は運送会社に任せるからな。
玄関へ向かい、家を出た。
この家も見納めだ。
「短い間だったけど世話になったな」
「そうですね。また機会がれば次回はのんびりしたいです」
ケガが回復した北上さんは、少し疲れた表情で言った。ミイラとはまではいかないが、包帯まみれで痛々しい。
……まあ、ブルースからかなり殴られたり蹴られたりしたからな。俺も未だに体のあちらこちらが痛い。死ななかったのが幸いだけど。
家を去り、船へ向かった。
このオーハ島へ来る前に乗った船だ。
そこから一気に沖縄へ向かい、荷物は運送会社へ預けた。あとで地元に送ってもらう。
月と星は沖縄に残ることになった。財宝の件で。
俺たちは港へ。
道中はトラブルなく到着。船に乗り、また鹿児島へ戻る。
しばらくは船旅だ。
沈まないことを祈り、俺は休憩スペースでノートパソコンとスマホを広げ、情報収集にあたっていた。
「なにしているの~?」
俺の隣に座る天音。とてもいい香りがするし、胸元も緩いぞ……。そんな屈むと見えちゃうんだがな。目の保養にはいいので黙っておく。
「まずはSNSをチェックしてる。トレンドとか追っておきたいしな」
「なるほどねえ。とりあえず、宝島のことは相変わらずだね」
「ああ、まだ財宝が残っていると信じている人がいるらしく、島に乗り込んでいるヤツがいるらしい。もう金貨一枚も残ってないのにね」
そう、俺たちが徹底的に回収済み。
しかしフェイクニュースが流れ、連日はずっと“三百億の財宝”のことで盛り上がっていた。ついには報道機関もバラエティ番組を通して現地取材に向かったようだ。
みんな、騙されすぎだろ!
こうなったのもホワイトウォーターのせいだろうな。いや、どちらかといえばストラトフォーかね。思い当たる組織はもうそこしかない。だが、ロシア人の動きも気になる。
「ニュースもそんな感じなんだね」
「そうなんだよ。前にも言ったが、日本政府も動きつつある」
「なんだか大事だよね。大丈夫かな」
「大丈夫さ。海外移住しちゃえばこっちもんだよ」
「安全な場所が見つかるといいな」
天音は小さな体を俺に寄せてきた。
そんな恋人みたいにされると嬉しいっていうか、癒される。
「おや、天音さん。抜け駆けとはずるいですね」
北上さんが現れ、空いている方に座ってきた。彼女も大胆にくっついてきた。こう挟まれると作業し辛いのだが――いや、このままの方が俺の脳が回復していく。
「もー、せっかく二人きりだったのにー」
不満を漏らす天音。そうか、そんなに俺と二人きりになりたいのか。地元に戻ったら、直ぐデートしたいな。
「まあ、あたしは啓くんの愛人なので、どんなことになろうと関係ないですけどねっ」
そんな風に北上さんは気にせずスキンシップを取ってくる。……うぉい、こんな公衆の面前で俺の乳首をいじるなっ! 足をからませてくるなっ! ありがとう!!
「二人ともそのままでいいから、一緒に情報収集しよう」
「仕方ないなぁ~」
「えっちな動画を見ましょう」
天音は渋々納得。北上さんは……って、そんなもんここで見れるか!




