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0.1秒のチャンス

「その程度か!!!」


 ブルースも最後の力を振り絞ってパンチを繰り出してきた。強烈なヤツだ。

 こ、これはまともに食らったら死ぬ……!

 しかしもう目の前に拳が迫っていた。



 よ、避けられねえ……!!



 その時だった。

 誰かに足を引っ張られ、俺は足元を滑らせた。おかげでブルースの攻撃を回避できた。いったい、誰が……って、一人しかいないよな。


「北上さん!! 助かったぜ!!」

「あとは……頼みますよ」

「任せろ。これで勝てるッ!!」


 おかげで俺は反撃する最大のチャンスを得た。

 今しかない。

 この0.1秒の隙を付くしかない!!



「ば、馬鹿な!!! なぜ私の拳が避けられた!?」



 困惑するブルースだが、俺はそんなのに構わず力いっぱいの右ストレートをぶち込んだ!



「うおおおおおおおおおおおおお!!」

「そんな貧弱な拳ごときいいいいい!! ――ぶふぁあああああああああああああ!?」



 ブルースの頬に俺の拳がメリ込んだ。そのまま地面へ叩き落としていく!


 ヤツの体と共に何十メートルも地面をえぐり、ついに大木に激突。俺は尚も拳を限界まで打ちつけ、更に何度も何度もブルースの顔をブン殴った。



「いい加減に倒れろ、このバケモノ!!」

「ぐふっ……ごふぉ…………」



 白目になりながらも、ブルースはまだ立とうとした。いったい、何なんだこの男の異常な耐久力。もうトドメを刺すしか方法はない。


 近くに落ちている大きな石を拾い、俺はブルースに頭上に向けた。



「言い残すことはあるか」

「……地獄で会おうぜ」



 そのまま石を振り下ろそうとしたが、その前に銃弾が飛んできてブルースの頭をブチ抜いた。



「なっ……誰だ!?」

「間に合ったようですね」



 背後には、恐ろしいほど血塗れの千年世がいた。



「ち、千年世……びっくりしたぞ! そ、それって自分の血じゃないよな?」

「これは返り血ですよ。現れた敵と揉み合いになり、戦闘の末に……」

「いったい、どんな戦い方をしたら、そんな風になるんだよ!?」

「相手はプロでしたからね。ナイフを使い、襲い掛かってきたのですが、こちらは斧で対抗しました」


 なるほど、それで血塗れなわけか。

 しかし、まさか千年世が現れるとは思いもしなかったな。どうやら、家の周辺にいた敵は倒してくれたようだな。


「助かったよ、千年世。って、そうだ、北上さん!」


 ズタボロになって倒れている北上さんの元へ。さすがの彼女も、あのバケモノには苦戦した。というか、俺もよく戦えたものだと我ながら感心した。


「……啓くん、あの男は恐ろしく強かった……」

「二人の力がなければやられていたさ。だから、北上さんがいてくれて良かった」

「そう言っていただけて良かった」

「さて、家に戻るぞ。向こうの様子も気になるし」

「そうですね、天音さんたちが心配です」


 北上さんは歩けそうになかったので、俺がおんぶした。


「千年世、前を頼む。俺は後方を気にしておく」

「まだ敵が潜んでいるかもしれないですもんね。分かりました」


 周囲を警戒しながら家を目指した。


 到着すると家は中々に破損していた。くそ、銃撃のせいで穴だらけだ。しかし、それよりもみんなだ。


 家の中へ入り、様子を伺う。


 リビングには誰もいない。

 二階か?


 千年世に確認してもらうが、いなかったらしい。


「みんなどこへ……?」

「おかしいですね。私が外へ出る際はみんないたんですけど……」


 何か緊急事態があってどこかに移動したのか。

 ということは、まだ敵がいる……?


 あと思い当たる場所といえば……そうか!

 車庫があった。


 そのまま廊下を歩き、車庫へ向かった。


 扉を開けると――そこには。



「ウアアアアアアアアアアアアア!!」



 椅子に縛り付けられ、叫ぶ男の姿があった。

 リコが男の膝にナイフをぶっ刺していたところだ。な、なにをやっているんだ!?


「ちょ、リコ!」

「あ、てっちゃん。無事だったんだね」

「そ、その男は?」

「コイツの名前はメイス。他にもブルースってボスの男とロスって奴もいたみたい」


 なるほど、男を捕まえて尋問していたわけか。

 俺はブルースを倒したことをみんなに報告。


「――というわけで、あとはこの男とロスって奴だが」

「そのロスって男は私が倒しました」


 どうやら、千年世が処理したのがロスだったようだ。となると、このメイスが最後の一人か。


「メイス、お前のボスは俺たちが殺した。もうホワイトウォーターは終わりだ」

「……終わりだと? 本当にそう思うか……?」

「なに?」

「お前たちは世界から一生狙われ続けるのさ……」

「どういう意味だ」

「そのままの意味さ! もういい、俺は先に逝く」


 ガリッと何かを噛み砕くメイス。

 すると急に容体が悪化し、メイスは白目をむいて泡をふいた。こ、これは……青酸カリ!


「この男、口の中に毒を仕込んでいたのですね」


 冷静に分析する北上さん。

 なるほど、スパイ映画とかでよくあるヤツだ。

 情報を漏らすくらいなら死を選ぶってわけだ。なんて男だ……。


「天音と艾も無事で良かった」


 二人とも抱きついてきた。

 俺は二人を受け止めた。


「早坂くん、怖かった……」

「無事でなにより」


 二人とも軽傷のようだ。これでホワイトウォーターは壊滅した……はずだ。しかし、家の被害は甚大だ。死体も片付けなきゃいけないし。



「兄様、わたしたちも頑張りました」

「こっちも褒めて」


 月と星も寄ってきた。

 聞くところによれば、この二人も戦ってくれたようだ。慣れない銃器を扱い、防衛してくれたのだとか。


「よくやったな」


「ありがとうございますっ」

「えへへ、嬉しい」


 二人とも嬉しそうに微笑む。


 しかし、家がボロボロだ。

 これは早くも移住かなぁ……。

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