危険な夜の日に②
「狙撃なら、私に任せてください」
千年世が名乗りでた。
確かに、彼女はかなりの訓練を積んだ。北上さんだけではない、わざわざ海外へ行って元グリーンベレーの軍人から特殊な狙撃訓練を受けたとか。
なら今、一番狙撃の腕があるのは千年世だろう。
「頼んだ。こっちは援護する」
「お願いします」
猟銃を渡し、千年世に任せた。
正直、猟銃と向こうのスナイパーライフルでは性能差があるろう。けど、千年世ならきっと……。
「天音、桃枝はドローンの方で監視を頼む」
「了解」
「分かったよ~」
二人は家の中へ戻った。
残った俺たちは、千年世の援護だ。
「北上さんと俺で迎撃する。リコたちは木下さんを守ってやってくれ」
「あいよ~。こっちは任せて」
サムズアップするリコは、木下さんを連れて家の中へ向かおうとする――が。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 北上さん! これはいったいどういうことだ!」
そりゃ、混乱するよな。
いきなり弾丸が飛んできて久保が瀕死なんだから。……って、そうだ。久保を助けてやらないとな。
「その前に久保だ。えっと……ああ、月と星が対応済みだったか」
死体袋に包まれているところを見ると、助からなかったか。
「手遅れでした」
「遺体は小屋に保管しておきます」
冷静に月と星が言った。
この二人、死体に慣れているのか?
処置が早すぎるし、手慣れているな。
けど助かった。
「いや、だから……これはどういうことだ!!」
再び状況説明を求めてくる木下さん。
そうだな、少しは軽く説明しておくか。
「実は――」
「なんだってぇ!?」
「理解早ッ!」
木下さんには、北上さんが狙われているということにしておいた。多分、一番説得力があるからな。
「……なるほど、北上さんが。確かに彼女なら命を狙われてもおかしくない」
やっぱり納得するんだな。
おかげで助かったけど。
「というわけです、木下さんは家の中へ」
「いや、私も刑事だ。銃の所持くらいしているさ。任せなさい……ていうか、君たちは銃刀法違反ではないかね!?」
「大丈夫です。ちゃんと猟銃免許はありますよ」
「むぅ、ならいいが」
そんな会話の間にも弾丸が飛んできた。
……あっぶね!
「身を低くしてください、啓くん」
北上さんが的確に指示を出してくれたおかげで、弾が当たることはなかった。千年世が反撃に出て弾を撃ち返す。
「……チッ、外しました」
千年世は何度か狙撃するが、この暗闇だ。なかなか命中しないようだ。やはり、ドローンの位置情報が必要だな。
家の中に避難した天音と桃枝に無線連絡した。
「天音、スナイパーの位置情報が欲しい」
「今、ドローンは上空を飛行中。見つからないように慎重に進んでるから、もう少し待って」
「了解。分かり次第、大至急で頼む」
まだ掛かりそうだ。
少し前に設置した物陰に隠れ、南方を確認。
直後、爆発が起こった。
『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!!』
「うわッ!!」
どうやら、敵のひとりがトラップを踏んだらしい。この爆発は地雷か!




