危険な夜の日に①
画面に視線を送ると、そこには『侵入者』を示す文字が。
ドローンの映像にはサーモグラフィによる人型が映し出されていた。人数は……ひとり。単独で乗り込んできたのか?
「てっちゃん、これは……」
「やっぱり来たか。みんな戦闘に備えろ」
緊張感が漂う中、北上さんが手を挙げた。
「あの、啓くん。ちょっとよろしいでしょうか」
「なんだい、北上さん」
「この人形には見覚えがありますね」
「なぬッ!?」
どういうことか聞いてみると、どうやら北上さんの知り合いの刑事である可能性が高いということだった。
サーモグラフィを解除し、通常の映像に切り替える。しかし暗くて何も見えないな。
「では、あたしが偵察しに行きます。恐らく彼だとは思いますけどね」
「一人じゃ危険だ。俺も行く」
「分かりました。では、二人で……」
しかし、みんなも手を挙げた。
「ちょっと二人きりとか危険すぎでしょ! わたしも行く!」
天音さん、目がマジだ。
「そうです。ここはみんなで行くべきでしょう!」
千年世まで……。
しかし全員は多すぎる。ので、俺は恒例のじゃんけんを推奨した。結果、月が勝ち残った。
というわけで、俺、北上さん、月の三人となった。
「よろしくお願いします、兄様」
「月と一緒なんて珍しいな」
「なにが起こるか楽しみです」
なにも起こらないで欲しいところだけどね。
祈るように外へ。
夜道を歩いていく。
当然、この島に街灯なんてない。
ので、シェントスのLEDランタンで周囲を照らす。1300ルーメンもあるから、かなり明るい。ただ、虫も寄ってくるけど。
桃枝に教えてもらった地点へ向かう。
俺たちの拠点から700メートル先にある草むらだ。
警戒しながら向かうと、途中で人間の気配を感じた。……この先に誰かいる。
草むらから現れる影。
それは姿を現した。
「……ふぅ。ようやくここまで――って、君たちはいったい」
疲れた表情で汗を拭う男。歳は俺たちより上で、二十代後半に見える。ラフな格好はしているけれど、なんだろう……一般人とはオーラが違う。明らかに正義感が強そうだ。
「遠路はるばるようこそ、木下さん」
「やあ、北上さん。君の指示通りに観光客を装ってきたよ」
どうやら、北上さんの知り合いである刑事さんらしい。
「わざわざありがとうございます。男を預かって欲しいのですよ」
「ああ、例の転覆事件を引き起こした主犯の息子。彼には父親の情報を教えてほしかったので任意同行を求めていたんだけどね……」
「そうでしたか。では丁度いいですね」
「ありがたく身柄を確保させてもらうよ。……ところでそちらは?」
北上さんは、俺たちを紹介した。
ここには友人の別荘があり、そこで学生限定のパーティをしていると上手く誤魔化してくれた。
「というわけなのです。久保だけ引き渡します」
「そうか。それじゃあ、邪魔しちゃ悪いな」
いったん家へ戻ることに。
俺は、その前にこっそりと電話して久保を小屋から出すようリコたちに指示を出した。
到着すると、リコや久保の姿があった。
早々、木下さんが久保の顔を確認した。
「久保くんだね」
「……あんた誰だ?」
「私はこういうものだ」
警察手帳を示す木下さん。それを見て久保は驚いていた。
「刑事!? くそっ……ここまでか」
「悪いが同行してもらうよ」
「……分かった」
久保は観念したのか木下さんについていくことに。早めにここを立ち去ってくれれば、襲撃に巻き込まれる心配はない。
帰りは北上さんをつけることにした。
罠の位置を全部把握してるからな。
「では、行ってきます」
「頼んだよ、北上さん」
北上さんは途中まで同行し、木下さんと久保は小型船で『久米島』へ戻るようだ。
三人が歩きだした――その時だった。
銃声が響き、久保の胸を貫いた。
「ぐああああああああああああ……!」
地面に倒れ、血を流す久保。
こ、これは……まさか!!
「敵襲だ!! 北上さん、みんな……戦闘態勢!!」
来やがったか、ホワイトウォーター共!!
建物に隠れるとまた弾丸が飛んできた。
「スナイパーですね。距離700ヤードといったところでしょうか」
「北上さん、分かるのかよ」
「ええ、まあ。ちなみに約640メートルです。想定より早く来ましたね」
罠が500メートル辺りにあるから……なるほど、まだ安全圏にいるわけか。向こうもプロだから、そういう罠に警戒しているのだろう。だから、まずはスナイパーで狙撃ってわけか。
……なら、こっちも狙撃でいくしかない。