ムラムラしているんです
なら、あのロシア人たちは一体……。
いやそんな場合じゃないな。
このままではオーハ島は戦場になる。
「北上さん、久保をすぐに追い出したい」
「分かりました。すぐに手配します」
知り合いの刑事さんに連絡してくれるようだ。
再び久保は小屋に閉じ込め、俺たちは家の中に戻って作戦会議をすることに。
全員を集合させ、俺は状況を知らせた。
「え……マジ? あのホワイトウォーターにあたしらの場所バレたの!?」
驚くリコは、信じられないと頭を抱えていた。
そりゃ俺も信じたくはない。
けど証拠があるんだ。
「久保にGPSが仕込まれていた」
「……これはホンモノね」
発信機を見てリコは察したようだ。この辺りの知識も北上さんから教えら貰っている。だから、みんなこれがGPSだと理解できた。
「どうしよう……また銃撃戦になるの?」
不安気に俺を見つめる天音。
みんなも動揺や焦りを見せていた。
このままではまずい。
俺がしっかりしないと。
「今のオーハ島は無防備すぎる。そこで防衛の為に罠を張る」
「罠です? 具体的には?」
「良い質問だ、千年世」
この島は、広いからこの拠点を中心にして周囲を固めるしかない。
落とし穴や丸太トラップ、有刺鉄線を張り巡らせたり……対人地雷も埋め込む。それと最新のドローン。
三機しかないが、手榴弾を積むことが可能だ。
そう説明すると北上さんが「それしかなさそうですね」と納得してくれた。続くようにみんなも「それしかないか~」と溜息を吐く。
「みんな、やれることはやろう。猟銃の用意も頼むよ」
「了解しました。金庫から出しておきますね」
銃の取り扱いは北上さんに任せている。
あとは道具類だ。
「天音、俺は穴を掘る。そっちは有刺鉄線を張ってくれ」
「分かった。こっちは千年世ちゃんとリコちゃん、あとは月ちゃんと星ちゃんも借りてみんなでやるよ」
桃枝は引き続き財宝の現金化を任せねばならない。
さて、あとは艾だが。
まだ傷は癒えていない。
無理はさせられないな。
「ごめんね、早坂くん」
「いや、いいんだ。今は治療に徹してくれ」
「ありがとう」
分担はこれで決まり。
俺はさっそく落とし穴を掘るべく、軍用スコップを手にして外へ。
ひとりの作業になるかと思ったが、北上さんがついてきた。
「お待ち下さい、啓くん」
「あれ、北上さん。銃担当だろ?」
「それは直ぐ終わるので。それより、二人きりになるチャンスだったので」
「なるほどね」
妙に納得していると北上さんは、俺の手を握ってきた。そのまま茂みへ。
「さあ、ここなら誰もいません」
「って、いきなり!? まてまて。脅威が迫っているんだぞ。自重しろって」
「残念ながら……あたしは今、とてもムラムラしているんです」
「女の子がムラムラとか言うな!!」
しかも恥じらってはいるし……。
北上さんの大胆なところは嫌いではない。むしろ好意的に思っている。こんな金髪美少女から攻められるとか夢のようだからな。
「啓くん……好きです」
「ちょ! どこ触ってるのさ!」
「凄いところを」
あわわわ……そこはダメだろう。
いやいいけど、今はダメだ。
「ストップ! このままじゃ作業が進まないだろう。夜にしてくれ」
「むぅ……仕方ありませんね。では、せめてキスしてください」
「それくらいなら」
もはや挨拶代わりになっているキス。
もちろん毎度ながら緊張はする。
心臓の鼓動を速めながらも、俺は北上さんの肩に手を置く。ホント、壊れちゃいそうなほど華奢なのに――でも、強いんだよな。
そんな強くてカッコ良くて、可愛い北上さんが俺も好きだ。
ゆっくりと丁寧に味わう甘い一時。
しばらく夢中になって北上さんを求め続けた。




