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危険な夜の日に

 迫りくる乙女の白い肌。

 俺は完全に囲まれてしまい、脱出不可能に陥った。……遅かった。


 に、逃げられない……。


「逃がしませんよ、啓くん」

「うわ、北上さん! 近いって!」

「今更なにを緊張する必要があるのです。さあ、身を委ねて」


 べったりくっついて来るが、リコが止めていた。


「ちょっと! 今日は暴走しないって約束でしょ!」

「……そうでした」


 北上さんは、しょんぼりしながらも俺から離れていく。

 どうやら、ここへ来る前に何かしらの協定を結んだようだな。

 とはいえ囲まれていることに違いはない。


 油断していると、誰かが手を握ってきた。

 んぉ……誰だ?


 視線を動かすと、天音が微笑んでいた。

 そうか、この手は……天音か。


 天音は次第に、俺の手をふとももとかに触れさせてきた。……うわ、スベスベ。これだけで心臓がバクバクしてきた。


 更に天音は小声で話しかけてきた。


「ねえ、早坂くん。あとでいいから二人きりで外へ行こう」

「あ、ああ……分かった」


 つい返事をしてしまったが、二人きりで……?

 まさか、まさかな。

 天音の方から誘ってくるとは驚きだ。


「ちょっと、そこ、コソコソと話さないでください」

「そうです。私たちも混ぜてください」


 月と星が割って入ってくる。

 それがキッカケでリコや千年世も乱入。結局、カオスな状態になってしまった。


 ちょ、お前ら!?



 * * *



 風呂を出て約束通り、俺は天音と二人きりで外へ向かった。

 こんな深夜なら誰にも見つかるまい。


 近くの浜辺へ向かい、安全な場所で腰を下ろした。


「で、話ってなんだ?」

「そ、それは……ひとつしかないじゃん」


 天音は“気づいてよ”と言わんばかりに顔を赤くした。……って、やっぱり!


「えっと……天音、大胆だな」

「だ、だって最近二人きりになれないんだもん」

「そう言われるとそうだな」


 ご無沙汰だし、少しくらい良いよな。

 この時間なら誰も来ないだろうし、今なら天音と……。

 俺は天音の手に触れ、顔を近づけていく。


 キスをしようとすると――。



「おっと、そこまでだ……」



 弾丸が頬を掠めて、俺はびっくりした。



「うわっ!」



 ひっくり返って、俺は視線を浜の方に向けた。すると、そこには暗視ゴーグルをつけた怪しい人物が立っていた。こ、こいつ……いつの間に!


「ね、ねえ……早坂くん、今の銃声!?」

「ああ、俺たちを狙っている」


 クソッ、ここは安全じゃなかったのかよ。

 いったい、誰が!



「命が惜しくば財宝を渡してもらおうか」

「その前にお前の正体を教えろ」

「教えるワケねぇだろ」



 なるほど、これほど日本語が流暢で、日本語が通じるということは少なくとも日本人ではありそうだ。

 俺は砂を握りしめ、それを敵に浴びせた。


「くらえッ!!」

「――ぐあッ!!」


 今のうちに銃を奪い取り、その男らしき人物の顔を確認した。

 こ、こいつは……誰だ?



「名を名乗れ。さもなければ殺すぞ」

「…………くそっ。俺は久保だ。久保(くぼ) 能道(たけみち)……」

「久保? どこかで……まさか、あの久保さんの!」


 宝島で俺たちを裏切った久保さん。

 橘川の娘でもあった。

 まさか、この男は!


「そうだ、その久保の弟だ。早坂、よくも姉さんを!!」

「弟だったのか……でも、なんでここが」

「怪しいロシア人がお前達を追いかけていたからな。俺もこっそり尾行していたのさ。そしたら、この場所に辿り着いた」


 そうだったのか。

 俺たちの後をつけ、タイミングを見計らって俺を襲いに来たようだ。


「そんな、久保さんの弟さんだなんて……」


 天音も信じられないと呆然となっていた。


「久保、お前は関係ない。帰るんだ」

「帰れだと!? ふざけるな、早坂。お前を殺すまでは諦めない」

「やめておけ。俺たちはもうただの高校生じゃない」

「ああ、そうかもな。未だに学校は閉鎖されている……。あの沈没事故の……二年のせいでな!」


「あれは橘川のせいだって、お前も知ってるだろ。ニュースになっていたし……それに、父親だろ」

「あんな男は父親ではない!! 姉さんを利用し、見殺しにした悪魔だ! 早坂、今度はお前が大切な人を失え!!」


 久保は、俺の隙を見て天音を人質に取った。

 その手には鋭利な刃物が。


「早坂くん!!」

「天音……!」



 久保はやってはならないことをしてしまった。……絶対に許さん。

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