表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/284

癒してあげますねっ

 トムは、アベリアと同じくクイーンズ出身のようだ。

 話していく内に彼が大学生であることが判明。アベリアも同じ大学に通っているようで、そこで友達になったんだとか。


 なるほどね。


 俺のことも少しだけ話した。

 自分は、つい最近まで高校生であったことを。ある事件に巻き込まれ、今もこうして敵と戦っていることを話した。



「ソウダッタノカ」

「一刻も早くこの島を脱出して、家に帰りたいんだ」

「ウム……ソウダナ」


 少しだけトムのことが分かった気がする。

 コイツも俺のように事件に巻き込まれた一人なのだと。



 ――三時間後。



 ようやく最上階の部屋に戻れた。



「待たせてごめんね、早坂くん」

「いや、いいんだよ、天音。それより、さっぱりしたか?」

「うん。久しぶりのお風呂最高だった」


 さっぱりした顔の北上さんや千年世が髪を乾かしていた。おぉ、なんだか色っぽいな。しかも、薄着で……これは中々刺激的。


 アベリアも部屋の奥にあるソファに腰掛け、リラックスしていた。



「みんな、聞いてくれ。捕虜のアドハムは中間地点にある寝室に閉じ込めた。近づかないように」


「分かりました。ところで、これからどうします?」


 北上さんが俺に判断を委ねてきた。


「もちろん、リコたちの到着を待つ。その間に敵が攻めてくるなら対処する。幸い、この最上階には武器がたくさんある。みんな、好きな装備を明日までに整えてくれ」


「了解。今日は疲れたから休みますね」

「おう」



 今日のところは、ゆっくりすることにした。

 飯は、備蓄庫にある保存食をいただいた。

 コンバット・レーションが山ほどあったから、食糧には困らないな。


 飯を食べ終え、俺は監視塔の窓側で外を眺めていた。


 夜空だけがそこにはある。

 ぼうっとしていると、隣に北上さんがやってきた。



「万が一の襲撃に備え、出入口にはトラップを設置しておきました。踏み込んで来る者がいれば、爆発です」

「助かるよ、北上さん」


「いえいえ。とにかく、ラウルという男に気を付けた方が良さそうですね」

「ああ、なにかとんでもない企みがあると思う」


 こんな島を乗っ取ろうとするヤツだからな。

 きっと何かある。



 それから時間は経ち、時刻は零時。

 就寝時間となった。



 ソファには天音が。

 他は、床だったりそれぞれ好きな場所で寝ている。



 俺は寝れなくてさっきと同じ窓辺に立っていた。

 すると、今度は千年世が声を掛けてきた。



「寝れないんですか、早坂くん」

「まあね。千年世も?」

「そんなところです。それに……」



 顔を赤くして俺をみつめる千年世。

 ……なんか、可愛いな。

 いや、もともと千年世は可愛い。常に明るくて……前向きで。隣にいてくれるだけで元気くれる、そんな女の子だ。



「それに、どうした?」

「……えいっ」



 いきなり抱きついてくる千年世。……俺は頭が真っ白になった。



「…………ち、千年世さん!?」

「静かに。みんな起きちゃいますよ」

「す、すまん。……その、えっと」


「早坂くんを癒してあげますねっ」



 両手を伸ばす千年世は、俺の頭を抱きかかえ――そのまま胸元へ手繰り寄せた。俺は、千年世の大きな胸の中に……って、えぇッ!?


 や、柔らかいのだが……。


 激しい心音が聞こえるし、なんだこれ……なんだこれ――!?



 めちゃくちゃ幸せなんだが……!



「…………千年世」

「私、ずっとこうしたかったんです。いつも守ってくれてありがとうって気持ちを伝えたかった……だから」


「俺の方こそ、いつも元気をもらってばかりだ」


「良かった。私、役に立っているんですよね」

「当たり前だ。千年世がいないと俺は困る」

「……好き」



 ぎゅっとされ、俺はもう幸せしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ