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甘くとろけるような告白

【北センチネル島・洞窟】



 見張りを三時間交代ですることにした。

 ひとりでは不安があるので二組で。


 じゃんけんの結果、俺と天音、北上さんと千年世のペアとなった。



「よろしく、天音」

「一緒にいられるなんて嬉しいなぁ」

「俺もだよ。こうして実質二人きりなのも久しぶりだ」

「うん、三時間ゆっくりしようね」



 気は抜けないが、天音とこうして肩を並べて外を眺めるというのも悪くない。敵が現れても大丈夫なのように『AK-47』を常備しているし、いざとなれば応戦できる。


 それとトラップも仕掛けてある。


 万が一、敵がこの洞窟に踏み込めば一巻の終わり。その手前にピアノ線を巡らせてあり、そこに足を引っ掛けた場合……手榴弾のピンが抜けて爆発するという仕組みだ。


 それと即席の落とし穴も作っておいた。落ちれば串刺しだ。



「ところで、天音は怖くないのか?」

「テロ組織とか食人族には驚いちゃったけど、もう慣れたよ。宝島で散々な目に遭ったからね」


「そうだったな。過去が俺たちを強くした」

「うん。それにね、早坂くんがいるから安心するんだ」


 手を俺の胸に添えてくる天音。

 思わず胸が高鳴る。

 ……天音がこうして身を寄せてくれるのは本当に嬉しい。


「もちろん、天音たちは俺が必ず守る。でも、こうなるとは想定外だった」


 こんなことにならなければマレーシアの現地を視察して、いい場所があったら移住するだけの話だった。そして、みんな共に幸せな生活を……そんな理想的ビジョンが目の前だったのになぁ。


 どうして、こうトラブルに巻き込まれやすいんだ俺は。


「それなんだけどさ、飛行機ってテロ組織が関与していたんじゃないかな」

「ISILか。かつてのアメリカのテロ事件ではそんな感じだったらしいな」

「でしょ? だったら、わたし達の乗った飛行機もきっと狙われていたんだよ」


 天音の推測は正しいと思う。

 飛行機は突然爆発したんだ。

 爆薬か何かを使ったとしか思えない。


 機体は空中で真っ二つになっていたからな。


 おかげで俺たちは放り出されて、なんとかウィングスーツで滑空――パラシュートで不時着できたわけだが。



「なんの目的で?」

「それは……う~ん、早坂くんのお金を狙っているとか?」

「そんな馬鹿な」



 確かに、キャプテン・キッドの財宝を手に入れたが、裏ルートで売っぱらったし……いや、まてよ。それ(・・)なのか?


 裏ルートだからこそ、か。


 誰かが俺の情報を流したのかもしれない。

 それで資金を手に入れたいテロ組織が動いたというわけか。けど、そんな単純な話ではないはず。もっと、なにか……得体のしれない何かが動いているはずなんだ。


 それが何かは分からないけど。



「ま~、今はこの島を脱出しないとだね」

「そうだな。北センチネル島とは分かっているから、がんばればインドの島には辿り着けるかもね」

「インドとか分かんないよ……」



 だろうな。インドの地理とか俺も分からん。

 ある程度のぼんやりした知識しかないのだ。



「今は生き延びることだけを考えよう。助けも来るかもだし」

「助け? 来るかな」

「今頃きっとリコや艾、桃瀬が動いてくれているはずさ」

「あ~! そっか。二十四時間応答がない場合は察知してくれるって話だもんね」


 そう、俺たちと連絡が取れなくなったらブルーチーム(本州組)が動く手筈になっていた。つまり、この北センチネル島さえ特定してもらえれば……迎えが来るかもしれない。

 きっとニュースにはなっているはずだ。

 それを信じるしかない。


「それまでは頑張って生き延びよう」

「うん、分かった。みんなを信じればきっと助かるよね」

「そうだ。俺たちには心強い味方がいるから」


 天音はすっかり俺にベッタリだった。

 俺自身も腕を回し、天音の肩に手を置いた。



「……ねえ、早坂くん」

「なんだ、天音」

「不謹慎かもしれないけど、わたしはまた早坂くんと冒険ができて楽しいな」

「ああ、俺もだよ。天音ともっとドキドキしたい」

「良かった。わたし、ずっとず~っと早坂くんに言いたいことがあったから」


「なにを?」


「そ、そんなの決まってるじゃん……」


 頬を真っ赤にして目を潤ませる天音。

 俺の耳元で何か囁いた。



「ん?」

「…………す、好き。すっごく好きだからね」



 ……こ、これは不意打ちだった。

 甘くとろけるような告白に、俺の心臓が鳴り止むことがなかった。

 久しぶりに好きと言われ、たまらなかった。


 最高……かよっ。

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