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サイコロ交差点

作者: 蜜蜂

「なろうラジオ大賞3」応募作品のため、1000文字以内の作品になっています。

「さぁ、サイコロをどうぞ」


その言葉に私はサイコロを振る。

コロコロと転がったサイコロは真っ赤な1の目を出して止まった。


「1かぁ……まぁ、数が多けりゃいいってもんじゃないしね」

気を取り直して私は交差点に話しかける。


「では、ここに眠る物語を一つお聞かせください」


私は旅の作家。相棒は紙とペンと風変わりなサイコロ1つ。

道すがら出会った交差点でサイコロを振り、出た目の数だけ交差点から物語を聞かせてもらう。


交差点は多くのものが出会いすれ違う場所。そこには多くの物語が眠っている。


サイコロを確認した交差点は徐に話し始めた。


「この交差点は真っすぐ行くと小学校、左にお寺、右に住宅街。ここには奇妙な現象がありました」

「おぉ! いい感じ」


「蜜柑が置かれるのです。規則性はありません。ある日突然置かれその日の夜には消えている」

「えっ? 蜜柑? 地味……」


「一つだけ共通点がありました。蜜柑が置かれると必ずお葬式があるのです」

「まさかのホラー? でも蜜柑の呪いって微妙……」


「……お気に召さないならやめますか?」

「ごめんなさい! すっごく気になります! 続きお願いします!」


「……では続きを。一人の少年が同じように蜜柑を呪いだと考え怯えました」

「まぁ、怖いよね。交差点に蜜柑ってシュール過ぎでしょ」


「少年は成長しこの町を去りましたが年を取り帰ってきました」

「うんうん、それで?」


「かつての少年は先日蜜柑を見かけました。ですがお葬式はなかった」

「えっ? 何故?」


「彼も同じ疑問を持ち、そして、あれは自分の番を告げる蜜柑ではないかと考えました……数日後、彼は死にました」

「げっ、蜜柑の呪いって本当だったのか」


「いえ、この話には続きがあります」

「えっ?」


「この町ではお葬式の多くはこの先のお寺で行います。檀家の一人に実家が蜜柑農家の方がいてお葬式のお供えにも頻繁に使われていました。そして住宅街が近いここは鴉が多い」

「えぇ、まさかの鴉のせい?」


「更に少年は転校生でした。地元の人間なら誰もが知っていることも恐らく知らなかったでしょう」

「うわ~、思い込みが彼の寿命を縮めたのかぁ」


「ある意味、彼にとっては本当に呪いだったのでしょうね」

「一番の呪いは自分の思い込みの中にある……って、怖っ!」


「話はこれでおしまいです」

交差点の言葉に私はお礼を言い、紙とペンを仕舞い立ち上がった。


「どうぞ良い旅を」

その言葉を背に私は次の交差点を目指して歩きだした。

人が集まるところには物語も集まるのかなぁと思って書いてみました。

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