7.巡る因果⑤ 『ジャンクの掃きだめ』
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六番通り入り口の、立地に恵まれた場所にその店は立っていた。
看板には蛇のレリーフが施され、金属の縁取りが陽光をぎらぎらと反射している。
「このお店ですか?」
まぶしそうに目を細めるミスティに、うなずく。
「ああ。このジャンク屋が都で一番の規模だ」
ま、俺が知ってた頃のままならだけど。
「他のジャンク屋に対して流通の主導権も握ってるから、それ関連の取っかかりにはもってこいだ」
「主導権? ジャンク屋って組合制度とかありましたっけ?」
「いや。ただ暗黙の了解ってやつで、取りまとめ役は自然と出てくる。表面上はどんなマジック・ジャンクを売ろうが自由だ。国指定の特認店となると話は別だけどな」
特認店は優遇措置が受けられる代わりに、有益なジャンクを安値で国に提供する義務が生じるなど、制約が課される。
が、当然というか、そんな制約律義に守る店の方が珍しく、大抵は国に提供すべきレアジャンクの存在を秘匿したりする。もちろん客や他店に高値で売るためだ。
「うし、行くか」
前置きはこのくらいにして、俺は店の扉を開けた。
ジャンク屋ってもんは、なぜか薄暗くて陰気くさい雰囲気の店が多い。
しかしここ『ジャンクの掃きだめ』は、店名の割に内装は小綺麗だ。天窓から光を取り入れているのも、明るい雰囲気に貢献している。
店内の両サイドには大きなカウンターがあり、それぞれの向こう側に商品が陳列されていた。気になる商品はカウンターの店員にお声がけ、という訳だ。
左のカウンターには、暇そうな顔をした若い男。
右のカウンターには、気難しげに帳簿を付けている初老の男。
いまいち記憶に自信がないが、たしかこの初老の男が、店主だったはずだ。
ミスティを連れて右カウンターの前まで行くと、俺は単刀直入に切り出した。
「人を捜してるんだが」
「特徴は?」
記帳の邪魔だと一蹴されるかと思ったのだが、店主は手を止め、無愛想ながらも続きを促してきた。
「若い女。年は十七、八くらい。肩下まであるピンクの髪に、朱色の双角」
店主は記憶を探るように視線をさまよわせると、
「知らないな」
素っ気なく答えをはじき出し、記帳作業へと戻った。
ふーん。となると……
俺はカウンターに肘を預け、あくまで気楽に問いかけた。
「なあ。ここは夜間も営業してるのか?」
「壁に書いてあるだろう。営業は夕刻までだ」
「そうじゃなくて。別口の営業だよ」
店主の手が再び止まる。
「俺って結構、いいジャンク持ってんだぜ?」
それが決め手となったのかは知らないが、店主は目だけを向けて返してきた。
「週に一度。第三使徒の日に深夜。裏口から」
「ちょうど今日か」
満足してうなずいていると、今度は店主が聞いてくる。
「ところであんたの連れは、ちゃんと代金を払ってくれるのかね?」
「んあ?」
店主が顎で、俺の背後を指し示す。それを追うようにして振り向いた先には。
「ぅおいっ⁉」
もうひとつのカウンターで、無駄にたくさんのマジック・ジャンクを手に取り、きゃっきゃとはしゃぐミスティの姿があった。
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