表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/111

6.胡蝶の夢⑪ 鳥の声

◇ ◇ ◇


 ……鳥の声がする。

 目を閉じていても分かる。朝が来たのだ。

 まぶたを通して感じる光すら今は強く感じるが、ここで起きなければずっと起き上がれない気がして、俺はゆっくりと目を開けた。

 目に入ったのは、ちぎれ雲がばらまかれた薄青の空だ。

 だから屋外で寝ていたのかと思ったが、なんのことはない。ただ屋根がないだけだった。

 恐る恐る半身を起こす。動かないのではないかと思ったが、どうにか身体(からだ)は動いてくれた。

 だけど……だりい。すっげえだりい。痛みはだいぶ引いたが、身体(からだ)が重い。

 顔を動かすのも(おっ)(くう)なので目だけで見回すと、半壊した室内が視界に入った。

 昨日(きのう)、宿泊場所に選んだ――っつってもほぼほぼ野宿みてえなもんだが――焼け残った民家である。俺はそこのベッドに横たわっていた。

 はて。ここにはミスティが寝ていたはずだが……

 そこまで考え、濁っていた記憶がよみがえる。

 昨夜、割と本気で死にかけてた時。運よくミスティが俺を見つけてくれた。

 俺とキッカが寝床を抜け出していることに気づき、月下の胸きゅんデート(発言ママ)をのぞこうと捜していたらしい。地面に()いつくばっている俺を見て、聞きもしないのに混乱しながらべらべらしゃべってくれた。

 それに関しては、デートじゃねえよとかデートだったとしてのぞくのは悪趣味過ぎんだろとか、いろいろ思うところはあったが、いかんせん俺は死にかけてたのでその辺は自粛した。

 後のことはよく覚えてないが、毒や解毒剤の件は、きちんと伝えることができたと思われる。(もう)(ろう)とする中、解毒剤を飲まされたり、かつがれたり――途中から半ば引きずられているような気はしたが――したのは記憶にある。

 ……んで今、ここに至るという訳か。

 ベッドの左脇で座り込み、頭と腕をシーツに乗せて眠りこけているミスティを見下ろし、息をつく。

 反動で痛んだ腹部に手をやると、布のようなものに触れた。つまりは手当てもしてあるということか。

 ……俺、一応はこいつの護衛なんだっけか。

 さすがに情けなくなって、俺はうな垂れ頭を抱えた。

 あー、ったく。なにやってんだ俺は……

 と、ミスティがうめきながら顔を上げる。どうやら目が覚めたらしい。


「起きたか? その、昨日(きのう)は悪いな。いろいろと世話に――」


 俺が(みな)まで言う前に、ミスティはがばっと身を乗り出してきた。


「ウィルさんっ⁉」

「…………」

「ウィルさん、大丈夫ですか⁉」

「……いや、死ぬかも……」


 腹部――体重をかけたミスティの手に押し潰された負傷部位から届く痛烈な刺激に、俺は泣きそうな声を上げた。


◇ ◇ ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ