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4.鮮碧の矜持⑰ 俺にとっては

◇ ◇ ◇


 青空の下、焦土と化した一帯に焦げ臭さが充満している。

 風が吹き上げた灰をさすがに吸う気にはなれず、俺は風上側へと移動した。

 敵はもういない。骨も残さず土へと(かえ)ったから。

 ……うーん。大きい魔法を使うとやっぱ、微調整が難しいな。次はもっとピンポイントに極限の威力を込めてみるか。

 軽い振り返りを終え、俺は大きく伸びをした。

 と、こちらを見つめる二対の目に気づく。


「なんだよ。まさか『殺す必要あった?』なんて言うんじゃねえだろうな。言っとくけどさっきの矢は、お前らもしっかり狙ってたんだぜ」


 歯に物が挟まったような顔のミスティとキッカに、先回りして反論すると。


「言わないわよ。ただ」

「ただなんだよ。自然を大事にしろってか?」

「まあ、それもあるっちゃあるけど……」

「すごい魔法だな……って思って」

「そりゃどうも」


 おざなりに言い、俺はザックを担ぎ直して反転した。

 もうここに用はねえし、この焦土のありさまは遠目にもよく分かる。そうでなくともここは街道なのだから、人だってすぐに集まる。誰かがやって来る前に、とっとと行くが吉だ。

 歩きだすと、ミスティたちも慌てて付いてきた。

 キッカが横に並びながら、聞いてくる。


「あんたさ、その頭のせいで散々な目に遭ってきたんでしょ?」

「単刀直入だな」

「いいでしょ別に。で、それだけ強力な魔法が使えて、なにかしようって思わないの?」

「なにかって?」

「だから……世界を滅ぼそうとか征服しようとか。『希代なことをしてやろう!』『俺が魔王になってやらぁ!』みたいな」

「それか、神都の教会兵に自分を売り込むとか。横取り屋(スティーラー)でも、これだけ力があればいけるんじゃないですか?」

「まずお前のお気楽路線だが」


 会話に加わってきたミスティに、冷たく返す。


()(かく)(しゃ)が中央でやっていけるわけねえだろ。馬鹿抜かすな」

「でも中央ほど(しゅ)(へき)平等をうたってる所はないですよ?」

「そりゃ腐っても神都だからな、建前は立派に掲げるさ。でも()(かく)(しゃ)の実質的な扱いなんてどこも大差ねえ。どっちかつうとお前らの方が、()(かく)(しゃ)に対する態度としては異端だぜ?」

「それはもしかして、遠回しにうれしいって言ってるんですか?」

「別にどーでも。で、お前の魔王誕生路線だが」


 魔王ってなんだよと思いつつも、答える。


「メリットに対してリスクがでか過ぎるのに、そんなもの目指すわけねえだろ」

「そんなものなの?」

「そんなもんだろ」


 青い空を見上げながら、俺は無感動につぶやいた。

 それに認めたくはないが。

 たぶんなにより、こうやって普通に会話できることが、俺にとっては希代なんだ。


◇ ◇ ◇

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