4.鮮碧の矜持⑪ 私は約束は守る。
「なんにしろ、あんたが無事町長になってよかったよ。これで俺も報酬が手に入る」
「俺たちも、でしょ」
「あーはいはい、そうだなそうだった。俺たちの、だ」
口を挟むキッカに、俺は投げやりに返す。
ちっ、いちいちうっせえな。
「そういうことだからマーリーさん。まさか約束、忘れてないわよね?」
「当然だ。私は約束は守る」
早速町長らしい貫禄を見せようとばかりに、マーリーはゆったりとした動作で、執務机の引き出しに手を掛けた。
「代々ここに保管されているとのことだ。鍵も預かっている」
言いながら、懐から鍵を取り出す。
「いよいよね。本当にマップだったらどうする?」
「そういうのは、実際にマップだったときに考えりゃいいだろ」
「ウィルさんは夢がないですねぇ」
「お花畑なお前と違って、しっかり地に足付いてるだけだ」
「あ、ひどーい」
などとやっているうちに、がちゃりと鍵が開き、マーリーがそれを引き出しから取り出した。
「えっと……本ですね?」
机上に置かれたブツを見て、ミスティがつぶやく。
確かに本だった。学術書の類いよりは小さめで、装丁はかなり傷んでいて字もろくに読め……
「いや待て!」
俺はがばと身を乗り出し、それだけでは足りずに机へと駆け寄った。
ぼろぼろの表紙には、こう書かれていた。
『ホ リー ールド 完 マップ』
「マップだ! おいマップだぞっ!」
歓喜の声を上げてミスティらを振り向く。
「本当なの⁉」
「すごいじゃないですか!」
ばたばたとこちらに寄ってくる、キッカとミスティ。
俺は慌ててページを繰った。もちろん破かないよう慎重に、だけど可能な限り素早くだ。
「地図……確かに地図だ! やったぞ!」
まごうことなき『地図』だった。本にはたくさんの、見知らぬ大陸が描かれている。
それだけではない。洞窟だったり城だったり、とにかくいろんな場所の情報が、やけに細かく載っている。さらにはお宝の在りかや、武器屋の品ぞろえと価格まで。
「すげえっ……」
これさえあれば、誰も俺を知らない世界に――
「ウィル待って。たぶんこれは違――」
「っせえな! だったらてめえは見んなよ。俺は今忙しいんだ!」
キッカの手をぱしりとはたき、俺は食いつくように、顔を本へと近づけた。
焦る手つきでページをどんどん繰っていき――
繰っていき……
………………………………
「……んだよこれっ!」
罵声を上げて顔を離す。
「どうしたんです?」
「ここだよ!」
俺はばしりと本をたたきつけた。ページが破れようが爆発しようが、もうどうでもいい。




