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3.深紅の街⑬ 思想の革命隊

 部屋は広くはあったが、およそ最適とは言えない大人数を収容しているせいで、体感的には狭苦しく感じた。

 中央にどでんと構える大机を、二十人前後の男女が囲っている。ほとんどが大人だが、中には俺やシフォンくらいの少年少女もいた。

 彼らは(みな)一様に入室者――つまりは俺らだが――へと視線を(そそ)いでいた。


 俺はそれらの視線に挑むように室内の一団を見回し、

「これがお前ご自慢の革命隊か?」

「はい。ほんの一部ですけどね」

「こんななりじゃ、蜂起するには心もとねえだろ」

「別に武力行使を根底とする組織ではないからな」


 口を開いて進み出たのは、若い男だった。実直そうな顔立ちで、まとう雰囲気が使命感に満ちている。


「我々は思想の革命隊。あくまで流族(アクオット)の基本的権利を守るための、(しゅ)(へき)平等を掲げる組織にすぎない」

「シフォンは違うようだぜ?」

「彼は熱心な活動家だからね――いや気にするなシフォン。その情熱もまた高潔で大事なものだ。それに、いざというときのための力が要るということに関しては、私も異論はない」


 男は言葉を切ると、シフォンに話しかけていた顔をこちらに向け、右手を差し出してきた。


「よろしく。私はマーリー・テマテックだ」

「ウィル・オキドだ」

「キッカ・アンダーソンです。あの、マーリー・テマテックって……町長候補の?」


 順番に握手を交わした後、キッカが問う。

 マーリーはいつ聞かれるか待っていたとばかりに、笑みを浮かべた。


「そうだ。私は()(たび)の選挙に出馬している」


 ああそうか! どっかで見た顔だなと思ってたら、街に張られた選挙戦のポスターか。

 肖像画なんて大抵は実物より美化されるもんだが、この男の端正な顔はポスターに負けていない。むしろ実物にあるカリスマ的な魅力を、ポスターは描ききれていなかった。

 しかし……


「町長候補が、革命隊なんて物騒なもんに参加してていいのか?」

「少し違うな。正しくは革命隊員の私が、町長に立候補したのだ。無論、革命隊の存在は秘匿されているがね」

「ふぅん。まあどうでもいいけど。シフォンいわく、あんたらに協力すれば公邸のマジック・ジャンクが手に入るって話だが?」

「ああ。私が無事町長になればくれてやろう」


 あっさり請け負うマーリーに、俺は半信半疑だ。

 キッカも同様らしく、腰に手を当て息をついた。


「簡単に言うのね。代々受け継がれてきたっていう、大事なジャンクなんでしょ?」

「代々焰族(フレアル)の町長で受け継がれてきた、流族(アクオット)にとってはなんの感慨も湧かないジャンクだ。過去との決別という意味も兼ねて、喜んでお渡ししよう。幸い実物を見た者はほとんどいないのだから、適当なジャンクにすり替えてもごまかしは利くだろう」

「でもそれは、あんたが町長になれたらの話なんだろ?」

「まあそうなるな」

「じゃあもしあんたが町長になり損ねたら、俺らにはメリットがないんじゃねえか?」

「聞かれるとは思っていたよ」

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