#01 予期せぬ贈り物
龍哉と光輝と別れてから5分くらいで、僕は家に着いた。
「ただいま~…ん?革靴?誰のだろう?」
玄関の扉を開けたら革靴が一足、きちんと揃えられて置いてあった。
うちで革靴を履くのは父さんだけだが、その父さんもこの時間は仕事中のはず…何かを取りに帰ってきたのかな?
「おぉ、おかえり、熾音。ん?そんなところでどうしたんじゃ?」
玄関で靴も脱がずに立っていた僕に、じいちゃんが声をかけてきた。
「あ、ただいま、じいちゃん。ねぇ、この革靴って父さんの?」
僕は靴を脱ぎながら、玄関に置いてある革靴が父さんの物なのか、じいちゃんに聞いてみた。
「ん?あぁ、それは儂に会いに来た客の靴じゃよ」
「あ、そうなんだ」
どうやらこの革靴は、じいちゃんに会いに来た人の物らしい。
「うむ。あぁ、そうじゃ、熾音はこの後、何か予定はあるかの?」
「ん?予定?何もないけど…どうかしたの?」
「いや、実は、今来てる客が、熾音に渡したい物があるらしく、帰ってくるのを待っておったんじゃよ」
「渡したい物?僕に?何で?」
「あー、詳しい話はリビングで待ってる客に聞いてくれるかの」
「あ、うん、わかったよ、じいちゃん」
靴を脱ぎ終えた僕は、じいちゃんと一緒にリビングへと向かった。
けど、じいちゃんに会いに来た人が僕に渡したい物って何だろう?
リビングに入ったら、ローテーブルを挟むように置いてあるソファーに男性が座っていた。
その男性はこちらに背を向けていたが、姿勢や纏う雰囲気が龍哉のおじいさんとどこか似ているため、何らかの武道を修めた人だと思う。
じいちゃんがその男性の向かいに、僕はじいちゃんの隣に座った。
僕が鞄をソファーの横に置いたら、男性が僕に名刺を差し出してきた。
「初めまして。私、小鳥遊鷲也と申します。以後、お見知りおきを」
「あ、はい、棟方熾音です。よろしくお願いします」
名刺をもらうなんて初めてのことだから、少し緊張してしまう。
受け取った名刺を見て、まず目に入ったのはこの男性の名前だ。
漢字でこう書くのか…というか、小鳥遊だけど、鷲はいるのか…って、ん?
「ネオ・ゲームス・カンパニー?ここって確か、ヘッドギアやVRゲームの開発・販売・運営を行ってる会社だったような……」
僕の持ってるヘッドギアや、帰りに光輝たちと話してた、クリエイト・テイル・オンラインを開発・販売し、運営する会社が確かここだったはずだ。
けど、そんなゲーム会社の人が、何の用で鍛冶職人のじいちゃんに会いに来て、何を僕に渡したいんだろ?もしかして、クリエイト・テイル・オンライン?いや、そんなわけはないか……
「おや、我が社の事をご存じでしたか」
「あ、はい、ゲーム好きの友人がいまして、その友人から色々と。ところで、僕に渡したい物があると祖父から聞きましたが、それは一体…」
「あぁ、そうでした。熾音くんにお渡ししたい物はこちらの二つです」
と、そう言って小鳥遊さんは、自分の横に置いてあった大小二つの紙袋を、僕に渡してきた。
「えっと、これは?」
「最新型のヘッドギアと、明日の午前10時にサービスが開始する、我が社の新作VRMMORPG、クリエイト・テイル・オンラインです」
「えっ!?」
それぞれの紙袋の中身を確認したら、確かにヘッドギアとクリエイト・テイル・オンラインが入っていた。
けど、どうして僕に?
「実は、君の祖父の燐之介さんに、そのゲームの開発に協力してもらったんです。そして、ゲームが無事完成しましたので、そのお礼として、今日はそれらを渡しに来たのですよ」
「祖父に協力を?ゲーム開発で?」
「えぇ、そうです。CTO…で通じるかな?」
「はい」
「CTOでは、プレイヤーはスキルと職業を選択する必要があるのですが、鍛冶を経験したことがある人は我が社にはいなくて…。それで、3年くらい前かな?私が燐之介さんに鍛冶を教えてもらったんです」
「はぁ~、なるほど、協力ってそういうことですか」
言われてみれば確かに、2、3年くらい前にじいちゃん以外にも鍛冶をしていた人がいた気がする。
「それで、完成したからお礼として持ってきたのですが、やらないからいらん、と言われてしまい…。だからといって、今から抽選に落ちた方の中から一人を選び、送るわけにもいかず…。そこで、お孫さんの君に渡すことにしたんです」
「えっと、何で僕なんですか?僕には双子の妹がいるんですが…」
「あぁ、君の妹の緋芽華さんはベータテストプレイヤーでしたので、初回生産盤は無料配布されることになっています」
「えっ!?そうなんですか!?」
緋芽華に相談もせずに、僕が貰うわけにはいかないと思っていたけど、まさかベータテストプレイヤーだったとは……
「はい。それで、どうでしょう?それともすでに、二つとも購入されましたか?」
「えっと、CTOは購入してませんけど、ヘッドギアは4年前に購入したのが…」
「その、一昨年の4月以降に発売されたヘッドギアでないと、CTOをプレイすることは出来ないんですよ」
「あ、そうなんですか」
そういえば光輝が、CTOをプレイするために、新しいヘッドギアを夏休み前に購入したって言ってたっけ?
「えぇ。念のためヘッドギアも持ってきて正解でした。それで、受け取ってもらえますでしょうか?」
「はい、そういうことなら。それに、友人二人がプレイすると聞いて、僕も次回の抽選販売には応募しようと思っていたので、ありがたいです」
「そうでしたか、それは良かったです」
その後は、新しいヘッドギアの設定や、データの移行方法などを教えてもらい、小鳥遊さんが会社に戻ると言ったので、僕とじいちゃんは玄関まで見送った。
「では、燐之介さん、この度はご協力いただき、誠にありがとうございました」
「いや、あれぐらい構わんよ」
「ありがとうございます。最後に、熾音くん、クリエイト・テイル・オンラインの世界を、熾音くんの好きなように、思うがままにプレイして楽しんでください」
「はい、わかりました。クリエイト・テイル・オンラインだけでなく、ヘッドギアまでくださり、ありがとうございました」
僕のその言葉を聞いて、小鳥遊さんは笑顔で頷き会社に戻って行った。
よし、明日、サービスが開始したらすぐにゲームを始められるように、今日中に設定とかを終わらせておこう。
次回、妹に相談します
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