魔王召喚
そこは世界の中心に位置する大陸の中心部
黒く禍々しい何かに覆われた黒い城。
その広場で、多種多様な生物が整列し、先頭に立つ唯一人の支配者の言葉に耳を傾ける。
「人間は今、世界の抑止力樽我らを差し置いて、強大な力を手に入れている」
女性の澄んだ声がその場に響く。
「このままでは、原初の種族たる我々は、滅びるだろう。故に、百年の積み重ねにより完成した『召喚魔術』により、救世主を呼ぶことにした。我ら魔族を照らし、我らを正しく示すものをここに呼ぶ」
おお!と興奮気味に、その場にいる者たちが、答える。
「では、皆の者、魔力を捧げよ」
そして、彼女、銀髪の後発を持つ、魔族を束ねる魔王は、そう言い、自身は詠唱を始めた。
『我はここに願う。我らを救済し、我らに光を与えたたる者を、ここに呼び起こしたまえ』
魔方陣が光、次第に赤く変色していく。
描いた幾重もの魔方陣が、一つの形になり、その時はまじかに迫っていた。
『いでよ、救世主!』
魔方陣の一つが、赤い輪っかを形どり、魔方陣の中心に現れる。
しかし、その輪っかが突如、粉々に壊れる。
「なっ!」
驚いた彼女は、魔法を中止させようと魔力供給を断ち切るが、すでに大半の魔力を注ぎこんでいたため、もはや手遅れあった。
「衛兵!武器構え!」
その者を縛れないのなら、数の暴力で。
そう思い、魔方陣の周りに兵を展開する。
しばらくして、魔方陣が光を放つ。
そこには確かな生物の気配が二つ、存在していた。
「なんだ?いきなり光ったと思ったら」
「蒼汰殿、無事か?」
そんな、のんきなおじさんの声と、少女の声が聞こえるのだった。
~~~~~~~~~~
時は少しばかりさかのぼる。
朝の体操的なものを終わらせたおっさんは、アパートをしまい、李根と二人で町を目指していた。
その途中、この世界についての情報を少しづつ、入手していた。
「つまり、この世界には、魔物と悪魔、魔王がいると。で、今人間と魔王で戦争中」
「ああ、そうだ。そのおかげで最近の依頼は、高難易度の物が多くて困っている」
「ほー、魔王も大変だな」
他人事のように話していた刹那、突然二人の足が、浮く。
「な、なんだ!?」
「これは、魔法!?」
足元に刻まれた赤黒い魔方陣が二人を飲み込む。
そして気が付けば。
頭から角の生えた男たちにやりを向けられていた。
「なんだ?いきなり光ったと思ったら」
「蒼汰殿、無事か?」
~~~~~~~~~~
いや、参ったわ。ホント。
だって、気づいたら変なところでやり向けられてたんだぞ。
と、とりあえず、話ができるか聞いてみよう。
俺は、目の前にいる、銀の長髪をした女性に話しかける。なんか、一番偉そうだったから。
「え~、状況を説明してもらっても?」
そう言うと、女性は手を振り上げた。
『跪け!』
「はっ?」
俺は呆けたが、隣でどさりと、崩れ落ちるような音がしたので、そちらを見ると、リーネが跪いていた。
「おいおいおい、どうした」
俺は彼女に近寄り、全身を見る。
双やら魔術による縛りを受けているようだ。
なぜか見るだけでわかり、解除方法も分かってしまった。
『我が原初の理に告げる。闇の縛りに光を与え、そのつながりを我が名のもとに破棄する』
するか、リーネを押し付けていた何かが去ったように、彼女が地面に腰を落とす。
「大丈夫か?」
「あ、ああ、ありがとう」
そんなやり取りの中で、うろたえる影が一つ。
「なんだ、と?従属魔法が効かない?そんな馬鹿な!百年を費やして完成した、世界の理の穴をかいくぐった術なのだぞ!」
何やらおっしゃっているが、速く返してほしい。
「ようがないなら、速く元の場所に戻らせてほしいのだが?」
俺がそう言うと、銀髪が魔法を放つ。
「おいおい、いきなり攻撃とか、ひどくね?」
そんなことを言っている間にも、他方から次々と魔法が飛んでくる。
「仕方がない。『宝物庫開放』」
そう言うと、いたるところから剣や槍、矢が飛んでくる。
そのすべてが広場にいる物を一人残らず命中させていく。
その様は、まるで、虐殺のようであった。