災難です
火が収まった家々の大半は無事だったが、やはり火災で住居を失った者達もいた。
彼らの殆どは、親戚や、両親の家に引っ越すのだが、やはり独り身で親戚がいない所もあったようで、暗い顔をした三人のエルフがいた。
男である。
いつだって、独り身で残されるのは男のようだ。
うん、不憫だ。
「なあ君達、行く宛が無いなら、私と一緒に来るか?」
ふと、口をついて出た言葉。
戻すことは叶わない。
「お、俺等ですか?」
怯え気味に聞いてくる、一人のエルフ。
「何、人の、もとい、エルフの三人や四人、引き取るなど造作もないわ!」
おお!
っと他の二人から歓声が上がる。
うん、この子達、少し人を信用しすぎる。
シャルもマリーもそうだったが、本当に素直すぎる。
まあ、今はそれがやり易い。
「それで?行く宛がないのはこの三人だけか?」
そう言うと、先程話しかけたエルフの青年が後ろを指差す。
振り替えると、小さく手を挙げた六人の美少女エルフがいた。
俺は、てを目元に当てる。
ついさっきの発言を思い出す。
余計なことを言わなければよかった。
何時もそうだった。
前世で、これで幾度となく後悔したのを覚えている。
まあ、それでも、見捨てるつもりなど、毛頭無い。
俺は、思いきって言う。
「分かった。御嬢さん達も一緒に来ると良い」
俺は、今夜しのげる場所を探していると、ある一組がこちらに近づいてきた。
先頭にいるのは、金髪をツインテールに結んだ幼女だ。どうやら、人間もいたらしい。
「あの、その、同行出来るのは。エルフだけでしょうか?」
俺は、少女の後ろにいる、背の小さい幼女五人と髭をモジャモジャっと生やした、背の低いじいさん三人に目をやる。
あわせて9人。
まあ、大丈夫か。ヘリを呼べるようになったしな。
「いや、今回の火災で住居を失って、行く宛がない者達ならば、歓迎しよう」
そう言うと、幼女達は喜び、爺さん方は、少しばかりこちらを怪しむ目を向けていた。
「まあ、無理にとは言わん。少なくとも、数日の食糧は提供しようと思っていたのだ」
そう言うと、彼等全員が目を丸くする。
「そ、そんなことして、大丈夫なんですか?」
怯えたような顔をして、此方を上目使いしてくる幼女。
うん?
村で余所者の庇護をうけてはならないという掟でもあるのだろうか?
仕方がない。
この幼女のためだ。村長に話をつけてこよう。
「君、村長は何処に行けば会える?」
近くを通ったエルフに訪ねる。
「村長ですか?それでしたら彼方の家です」
そう言って指差した方角には、ここいらで一番大きそうなぶっとい木に、下から上へ、全てを巻き込むように大きな家があった。
「あそこか」
分かったからには、この子の為にもとい、この人達の為に話をつけねば。
村長宅の前にやって来ると、家の柵があり、その前には槍を持ったエルフが一人いた。
「村長に話がある」
体の上から下までじろじろ見る。
「少し待て」
そう言うと、彼は家の中に入っていった。
やがて戻ってくると、家の中に案内される。
中は、小さな空間にドアが数個あり、隣には階段があった。
それを登っていき、遂に最上階に着くと、ちょっと豪華そうな服を着たエルフがいた。
「ようこそ。そとの人よ。私が村長のデリケートです。どうぞ、宜しくお願いします」
「此方こそ。しかし、今回は災難でしたな」
「ええ、全くもってその通りです。殆どの者は何とかなっていますが、運悪く独り身の者は、どうにかしたいところですが、」
村長がそれから先を言う前に割ってはいる。
「それならば、私が引き取りましょう」
「当分は私がの家で、ん?良いんですか?」
村長が、案を持っていたことに驚きつつも、またやってしまったと思う。
「ええ、私は王都に屋敷を持っているので、そこで働けるまで置いておこうかと」
言ってしまった事は仕方がない。
俺は、本来の目的を話す。
「彼等には確認を取ってあります。そちらに不都合がなければ、ですが」
「ほ、本当ですかな!?」
村長が前のめりになる。
「え、ええ」
「それはよかった。それならば、私から少しばかり金銭をお譲りしましょう。我が村の不始末を引き取って下さるのですから」
思ったよりも、堅くなく、これでは引き取り意味が無かったのでは?と思うオッサンだった。
「何時村を発つおつもりで?」
「明後日の朝ですかな」
今日明日は恐らく帰れない。
「分かりました。では、それまでに纏めておきましょう」
そうした話をして、村長の家を出た。
なかなか、性格に良さそうな人だった。
見た目は目がつり上がっており、怖そうなのだが、根は優しいのかも知れない。
元に戻ると、ヘリの回りに、先程の連中とシャル達がいた。
「待たせたね。大丈夫だそうだ。今日の所は此処にテントを張って寝よう」
そう言って、テントを用意する。
無論、この時代のもではないが、暗く、見た目もこの時代のテントに似ていて、誰も気付くことはなかった。
その後、昼のカレーの余りを分ける。
そうして話をしながら皆の得意分野を聞く。
青年エルフの一人は、知識を溜め込んでおり、非常に物知りで賢いそうだ。
他の二人は弓が得意で、よく狩りに出掛けるらしい。
女性達は、二人ほどが家事を得意としており、残りの四人は魔法が使えるそうだ。
錬金術を覚えられるかと聞くと、イエスであった。
幼女の方は家事ができる。
爺さんっぽい人は、て言うかドワーフだった。
で、ドワーフは、武具作成が得意、というかそれしか出来ないらしい。
何でもドワーフの国の中では有名な加治屋だったが、勢力争いに巻き込まれたらしい。
そして、三人とも奥さんに別れを告げられ、残された子供と此処に着たようだ。
はい、という事で、この六人の幼女、ドワーフのオッサンの子供だったわ。
「ふむ」
俺は、エルフに男三人に女六人、ドワーフのオッサン三人に幼女六人の将来を考える。
うん、これじゃ無理だ。
一人立ち出来ねえ。癖がありすぎる。
「はぁ、まあ、幼女六人と女エルフ二人には家事をやってもらおう。他の者には、まあそれぞれの職場を用意するか」
ならば、店を買わねば。
そう思い、計算してると、ドワーフのオッサンが此方に来る。
「あんた、何でそんななんじゃ?」
「ん?どういう意味かね?」
「無償で助けるなんつう一門にもならないことして、何が良いんじゃ?」
「ふむ、別に無償ではないぞ?変わりに働いて貰うとも。その稼ぎで私は生きて行く。幸い、腕の良い家事職人も見つけたしな」
爺さんを見てそう言うと、彼はそうかそうか、と笑って去っていった。
ん?何が可笑しかったのか?
そして、今日の夜は耽ってった。
余談だが、シャルとレイは実家に、と言うか自分の家に行った。
残ったアリスとマリーはヘリから出ないので、そのままにしておいた。




