エルフの森
すみません
翌日
王都の外の森に、皆を連れてやって来ていた。
「あの、ササキさん?此処になにかあるんですか?」
「ああ、危険地帯なのだ。意味がないのなら一度帰りたいのだが」
「おじさん?」
「どうしたの?」
四人からの質問を受けながらも黙っているオッサン。
「この辺りで良いか」
オッサンは、少しばかり遠くなった城壁を見ながらそう言った。
オッサンが手をかざすと、いきなり黒い物体が現れる。骨組みのように出た2つの橋の先には、十字型の何かが付いており、目の前に見えるガラス越しには、灰色の服を着た男が座っていた。
その固まりは鉄で出来ているようだった。
「ふむ、なかなか良いな」
オッサンはそいって中に入ると、操縦席にいた男と話している。
暫くして戻ってきて、彼女達に説明する。
「此は、私が召喚したような物で、空を飛ぶことの出来る乗り物だ」
「の、乗り物?」
固まっている四人を押し、ヘリに乗り込む。
全員がちゃんと乗っていることを確認すると、操縦席にいる男に合図を送る。
すると、エンジンかける音が聞こえる。
やがて、テンポの良いエンジン音が聞こえてくる。
「こ、これはいったい…」
「鉄の竜、いや、鉄のドラゴン?」
訳がわからずめを白黒させている四人をよそに、方向を伝える。
その数舜後に、浮遊感が体をおそう。
「な、何が…」
「これは飛行機、空を飛び、陸路を大幅に短縮させる画期的な乗り物だ。初の空旅は少しばかり窮屈だろうが、まあ我慢してくれ。これで、入学式に間に合うからな」
四人は、外を見て小さい悲鳴を出したり、浮遊感に息を飲んだり、うるさいエンジン音に耳を塞いだりと、様々な反応を見せてくれた。
まあ、二日も乗れば慣れるだろう。そう思うオッサンだった。
~~~~~~~~~~
飛行機の浮遊感にもだいぶ慣れてきた時、一度地上に降りる。
地上に降り、外に出ると伸びをする。
ほぼ半日同じ体系でいるのは、体がもたない。
しかし、この具現化能力、現実に現れている間はずっと燃料が減らなかった。
何らかの力によるものなのか、魔法と言う新たなエネルギーの為なのか。
考えても分からないことを、考えても仕方がないと、放置することにした。
「さて、ここいらで昼食にするか」
後ろの三人を見ると、いまだに地上になれないのか、ふらふらした足取りをしていた。
「まあ、もう少しすれば治るさ」
そんなエルフ達を放置し、夕食を作るのに取り掛かる、
この場で、住居を召喚しないのは、本人がキャンプ気分ンを味わいたかったからに過ぎず、ここで野宿と言うことになれば、住居は召喚しないまでも、現代のテントを召喚したに違いないのである。
「凄い、もうこんなところまで」
地上に慣れてきたシャルさんが、周りを見てそうつぶやく。
森しかないように見えるのだが。
「エルフとは、森を見るだけで、場所ががわかるのか?」
「ええ、まあ、ある程度には。我々エルフは先祖代々森戸のつながりがあります。我々はその森に守られ繁栄してきました」
なるほど、加護の様なものだろうか?
この世界には、魔法や魔術の他に加護と言う物が存在する。
これは、神々が人間に付与するもので、それぞれの加護によって、その職業がやたらと得意になったり、常人の何倍も伸びしろがある、らしい。
だが、彼女の言いぐさからするに、これは加護と言うより自然界全般との契約のように聞こえる、
「ふむ、そう言う魔法は記憶にな、い、いやあった」
記憶をまさぐり、錬金術師としての記憶にあった。
契約魔法
互いの魔力により煉られた魔法の契約。
見えないパスでつながっており、期間、範囲は自由に決めることが可能。術によっては、生贄を必要とするものがあり、表立ってやることは禁止されている。また、片方が契約を破った場合、契約時に結んだ罰、又は世界による修正を行われる。
尚、世界に干渉した魔法の為、世界をゆがめかねないような契約はできない。できたとしても、相応の対価を必要とする。
なるほど。
まあ、やることはないだろうが、一応心にとめておこう。
俺は、手を二回たたき、注目を浴びる。
「昼食は、私が用意しよう。昨日、町で勝ってきたものがある」
そう言って、椅子とテーブル、火起こし器を出す。
四人に椅子をすすめて、集めた枝木に火をつける。
鍋を置き、あらかじめ切っていた肉を入れる、
十分火が通ったのを確認し、玉ねぎに似た野菜と、ニンジンに似た野菜をいためる。
水を入れ、沸騰するまで待つ。
沸騰したら、浮いてきた悪を取り、ルーの様な粉を入れる。
はい、カレー度出来上がり。
「では食べようか」
テーブルに並べ、水を入れる。
「これは、なんと言う料理ですか?」
シャルがそう聞いてくる。
「ああ、たぶん、カレーと言う物だ」
残念ながら、お米を炊く時間がなかったため、お米なしのカレーだ。
唯のカレー。
「お、おいしいです」
「これはいいな」
「おじさんグッド」
「いいね!」
四人から料理の感想をいただき、完食する。
暫くして、再び飛行機での移動を開始する。
「里まではもう少しだと思います」
とのことなので、数時間で着くだろう。
乗り込んだ後、俺は睡眠をとることにした。
昼の満腹感も相まって、すぐ寝てしまった。
~~~~~~~~~~
「…さん・・・さん・・・キさん・・・キさんお…ださい!」
暗闇から、誰かの声がする。
「…キさん・・・サキさん・・・ササキさん!!」
「っは、ななんだ?」
体を揺さぶられ、起きると、目の前にはシャルさんの顔。
「前方に十基の飛竜です!いくら鉄の塊でも、焼けてしまいます!」
必死に訴えてくるシャルさんを落ち着かせる。
「わかった。何か対策をしよう。シャルさんはそこで座っていてくれ。ほかのみんなも」
前方の操縦席に行き、見ると、赤や青い色の、ドラゴンの様な見た目で、少し小さい飛竜を見る。
よくみると、背中に人が載っていて、地上にブレスを吐かせたり、地上に着陸したりしている。
こちらが、完全に視認できるようになった時、向こう側も気づいたのか、こちらに魔法を売ってくる。
その衝撃で、ヘリが揺れる。
「ま、マジか、これは、無理だろ」
空軍などの大量の具現化は、まだ条件を満たしていないのか、できなかった。
十基すべてがこちらを敵としたとき、それは起こった。
『空での過剰戦力を確認。『航空部隊』の呼び出しが可能です』
「よし」
俺は、すぐ呼び出す。
ヘリを中心に、現代の日本の武装したヘリが四機現れる。
同時に、目の前のヘッドホンとマイクにも、連絡が来る。
『閣下、指示を』
「目の前の敵を墜落させろ。死なせるな」
『了解』
両サイドにいたヘリが、飛竜に向かって近づき、下についている機関砲を放つ。
見る見るうちに、ケガを負う飛竜たちは、下に降りていく。
「よくやった。これで任務終了だ」
『了解』
「地上に降りて待機、並びに周辺警戒をしていてくれ」
地上が危ないと判断し、そう言う。
「下に降りてくれ」
『了解』
隣の操縦士にそう言い、降りてもらう。
そこには、半分やけた里?があった。皆、木を繰りぬいたような住居だったり、木の上に会ったりしていた。
「そんなっ」
降りてきたシャルは、小さくそう言う。
どうやら、知っているところらしい。
「ここは、シャルさんの知ってる場所かな?」
「え、ええ、ここが目的地です」
「な、なるほど。どれは、気の毒に」
其れしか言えなかった。
俺は、待機していたヘリに乗っていた者たちに、火を消すよう言う。
すると、彼らは、ヘリで上に上がる者や、建物の燃えた部分を壊すものがいた。
暫くして、ここを離れたヘリが、バケツを持って、帰ってきた。
この近くに、水源があったそうだ。
「よし、とにかく、早急にすべての火を消すんだ」
そう指示し、自分も、それに加わる。
クソ、洪水を起こせるような魔法はないのか!
ずっと、その様に思っていると、体の中にある力が少しばかり持っていかれるのと同時に、上に大きな波紋が浮かぶ。
空間魔法、いや、また別の魔法だった。
その波紋は、次第に魔方陣となり、光りだす。
その直後、何かに押されるような感覚を得る。
「な、なんだ!」
先ほどまで、燃える家を呆然と見ていたシャルたちが逃げる。
そうして、ようやく収まったのを感じ、目を開けると、体がずぶ煉れとなり、周りにあった火は、消えていた。
「み、水?そうか、あれは、俺が出した水だったのか」
そうと、分かれば納得も行く。
なんせ、この体は、過去に偉人が使っていた物なのだ。
この様な魔法も仕えて当然であろう。
「ふう、どちらにしろ火が治まってよかった」
周りから、白い煙が出ているのを見ながら、そう思う。




