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『空』 『夜の図書室で』 『暗殺者の迷い』
『空』
陽が沈む頃の空の色が好きです。
茜色から藍色までのグラデーションは、ずうっと眺めていたいです。
藍色が濃くなりやがて夜になります。
私は都会に住んでいるので星空はあまり見れないのですけど、
それでも冬のオリオンや夏の天の川は見飽きません。
なんだ、結局いつの空も好きなんだね。
『夜の図書室で』
おもちゃの兵隊が行進する。
いちにさんし、いちにさんし。
全隊止まれ、いちに。
休め。
誰もいない夜の図書室の床で兵隊達は一休み。
非常灯の光が兵隊達の影を作る。
号令がかかり、行進が再開される。
いちにさんし。
やがて本棚の陰に隠され行進は見えなくなる。小さな号令だけが図書室に響く。
『暗殺者の迷い』
スペードのエース、それが答えだった。
死のカード。
三回引いて三回ともスペードのエースが出る確率は、実に十五万分の一。
たとえ対象が愛する者であっても依頼を受けた以上、実行する。
カードが俺を後押しする。
たとえそれが自分自身の仕掛けたイカサマ占いの結果だったとしても。