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『狂気の剣』 『召喚』 『世界は美しい』
『狂気の剣』
古い神社で御神体である宝剣を見せてもらった。ペルシャ風とでもいうのだろうか、錆一つ無い刀身は日本刀とは全く異なる曲線を描いていた。千年以上前のものだというのにその剣は生きていた。今、私はその剣を持ち街を駆ける。社会のゴミ掃除、私は正義の使者。暗闇に私の笑い声が響く。
『召喚』
暗闇の奥から這い寄り、悪臭を放つ粘液を纏った旧世界の支配者を召喚する呪文が書かれているという魔導書を手に入れた。古アラム語で書かれたそれを解読し、五芒星の中に立って私は悪夢の中の住人を呼び出そうとした。肺腑を刺すような腐臭と鳴動の後に現れたのは私自身の醜い姿だった。
『世界は美しい』
彼は死のうと思っていた。でも雨なので止めた。死ぬとここが事故物件になってしまい大家に申し訳ないのと、外出したくないという二つの理由からだった。一週間、雨が降り続いた。朝日で目を覚ました彼は死にたいと思ったこと自体馬鹿馬鹿しくなった。だってこんな世界は美しいじゃないか。