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『ダイヤモンドじゃなくても』 『地獄』 『孤独』
『ダイヤモンドじゃなくても』
モアサナイトという宝石がある。ダイヤモンドより輝きが強く、人造で合成できてしかも安い。天然ダイヤモンドの金銭的価値はD社の独占供給によって維持されたものだ。それ自体は別に悪いことでは無いけれど、私はモアサナイトで輝くネックレスが欲しい。人生はピカピカしてないとね!
『地獄』
その絵には赤黒い空と捻れた樹木のシルエットを背景にして、絶望的な疲労感を滲ませながら行進する襤褸をまとった人々が多数描かれている。行列の中、後ろを振り返っている少年には眼球が無い。虚ろな眼窩からは黒い涙が流れ落ちている。少年は私に声なき声で囁く。「助けて、助けて」
『孤独』
サン=ジェルマン伯爵と呼ばれる不死の人物がいたという。フランス革命前の社交界での有名人だ。その真偽は分からないが、不死の存在というのは、孤独なものだろうなと思う。知り合いも愛した人もみんな自分を置いて、先に逝ってしまうのだから。きっと寂しそうな目をしているに違いない。