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『ほら、ぴったり!』 『失ったもの』 『よくある話』
『ほら、ぴったり!』
私は背が小さいから色々不便なんだよ。
例えば電車のつり革が遠い。
網棚は更に彼方にある。あんなところにものが置けるわけないだろ。
服もちょうどいいサイズのものを探すのに一苦労。
顔も幼いから仕事でなめられる、超むかつく。
でも横になってしまえば関係ないからね。
ほら、ぴったり!
『失ったもの』
珈琲の香り
眠れない理由
引き返してたら
すべては変わった
そのはずだろ?でも
出会いは別れの始まり
そんなの当たり前のこと
早すぎる別れは心を抉った
今日で君と別れて丁度十二年
もう俺は人を愛することはない
無理に酒で酔うのは君に会うため
二度と現世で会えない君に会うため
『よくある話』
気がつくと会社に残っているのは私一人だった。
戸締まりをして廊下に出るとなにか背後に感じた。
振り返ると白い影が一瞬目の端をよぎった。
気のせいだろ。
駅に向かう道を急ぐ。再びいやな気配を感じる。
あえて無視して改札を抜けプラットホームに。
何気なく横を見ると殺して埋めたはずの……