その1
「紀伊原ー・・・紀伊原ー?」
気持ち良く寝ていた俺の体に、とても不快な振動が襲った。
「ん・・・なんだよ・・・?」
薄く目を開けてみると、爽やかな朝日と、もはや顔面からうるさい女の顔があった。
ゆさゆさと揺らされながら枕元の時計を見やると、現在朝の7時。
残念だが、学校もないのにこんな時間に起きる気はさらさらない。
俺を揺さぶり続ける邪魔な手を払いのけ、二度寝体勢に入る。
「あっ!そういうことするならこっちにも手があるからなぁ・・・!」
この朝からうるさい女は橋本。
際限なくバカであるのが取り柄(皮肉)で、たまに早起きしてハイテンションではしゃぎまわっては昼間はずっと寝てる幼稚園児のようなヤツだ。
まあ、今はそんなことどうでもいい、早く寝・・・
「どっせえええええええええええええええいっ!!」
「ぐはあああああああああああああああああっ!?」
このバカ思いっきり飛び乗ってきやがったッ!?
眠気と痛みが重なり合って身動きが取れん・・・
「バカ、早くどけ・・・!」
「ふはははは!!ならば早く起き上がるがよい!」
倒れた勇者を見下す魔王のようなセリフを吐きながら、俺の腹の上でふんぞり返る橋本。
「わ、わかったから早く・・・」
「ワオ!!何やってるデース!?」
俺が観念しようとしたところ、部屋のドアが勢いよく開き、マズイヤツが姿を現した。
「おおリリィ!おはよー!!」
「グッモーニン!!」
待て貴様ら、この状況で普通に日常会話を始めるんじゃない。
最悪死ぬぞ、俺。
「ところでハシモト、なにやってるデース?」
「紀伊原を起こそうとしているのだ!!」
起きてる、起きてるから降りてくれ。
「こ、これがジャポンの文化・・!?」
この日本文化を完全に勘違いしている金髪女はリリィ。
二年ほど前にアメリカから日本に引っ越してきたらしく、妙に拙い日本語をぶちまける。
趣味は忍者探しとのこと。
「そうそう、リリィもやろうよ!!」
「それでは・・・レッツダイブデース!!」
「うおおおおおおおおおおおおいッ!?」
潰れるぅ!内臓潰れちゃうぅッ!!
「朝からなんの騒ぎですか・・・?」
俺がついに発射五秒前を迎えようとしていたとき、やっと救いの女神が現れてくれた。
「氷野ちゃんおはよー!」
「グッモーニンデース!」
「おはようございます・・・ってなにやってるんですか・・・」
彼女は氷野。
通称、天才メガネ少女。
バカ二人に絡まれ続けるこの生活で、唯一癒しであるのが彼女であり、俺の心のよりどころとする場所である。
ただ・・・
「紀伊原起こしゲーム!氷野ちゃんもやろ!」
「カモカモデース!」
「・・・紀伊原さん、息してます?」
「・・・・・・・・・え?」
「・・・カニのモノマネしてるデース」
「それは窒息してるんです何してるんですか早くそこから降りてくださいそもそもこんな危険なことなんでやり始めたんですかバカなんですかああそうかバカでしたねって言ってる間に何で降りないんですかぶん殴られたいんですかほら早く降りてくださいもし遅れて紀伊原さんに何かあったらどう責任とるつもりなんですか早くほら早く降りてください」
「「・・・・・・」」
「降りろ」
「「ハイ」」
この子、時々すごく怖いです。
あ、ちなみに俺は紀伊原です。
正直、この三人と共存できる気がしません。
ちなみに、作者は感想が書かれると投稿スピードが上がる単純脳です。