なな
引っ越し、機種変更などでかなりあいだが空いてしまいました。
でもせっかくなので、完結までは書きたいです。
読んでくださる方に感謝を。
父様は騎士団で部隊長をしている。
いくつかある部隊は、持ち回りで街の外にある森や草原のなかでも魔物の危険度の高いところへ定期的に出ていき、魔物の討伐を行うのだという。
近場なら良いが、大抵は泊まりがけで(野営らしい)行くので、家にいないことも多い。
この日は3日ぶりに帰ってきた。
嬉しくて、タキと一緒に学校の帰りに迎えに行った。
過半数の部隊は街で訓練や門番だから、毎日時間の差はあるけれど帰ってくれば私たちと過ごしてくれる。
月に1度か2度ある討伐の時はだから寂しい。討伐に行かなければ氾濫にも気づけないからしかたはないけど、寂しいものは寂しいのだ。
特に今日のような話をきいた日は、父様の顔をみて安心したかった。わたしたちの知らないような母様のかわいい話を聞きたかった。
私もタキも。泣きながら父様にしがみついていた。知らなかった。今も傷を癒せてはいない《英雄という名の被害者の家族》が母様だったなんて。
さっき聞いたばかりの人が私たちのもう一人のおばあ様だったなんて。
抱きついて、とまらない涙に悔しい思いをしながら、母様を守れるくらい、絶対絶対強くなると誓った。
明らかに腫れている私たちの目元をみて、母様は優しく…でも困ったように笑いながら両手に私たちの頭を抱えて目元に手をあてた。
冷たい手が気持ちよくて、感触を味わっていたらスーっと目のまわりの腫れぼったい感じが消えていった。
それでも手を離して欲しくなくて母様の服を握りしめていたら、今度はそのまま額を親指で撫でてくれた。
うん、気持ちいい。ほっぺを母様にこすりつけて味わう。このままでいたいな、もう少しだけ。
そんな幸せな気分もタキの盛大なお腹の音にぶち壊された。
みんなで笑って、あらためて父様におかえりなさいを言って。
そして、美味しい夕食をお腹いっぱい食べてから、私は母様とお風呂に一緒にはいった。
背中を洗ってもらったり、洗ったり。
髪の毛も洗ってもらった。やっぱり自分で洗うより断然気持ちいい! マッサージされてるみたい。
そして、髪をくるくる巻いて、湯船に二人でつかった。
母様の大きな胸がフワッとお湯に浮いて、ちょっとおもちみたいだと思ったのはナイショ。
そんなに大きな湯船じゃないから、肩とか腕が触れて、身体も心もあったまる。
肩に頭をこてんとあずけて、小さい声で先生から聞いた話をした。
「そっか。母様ね、この世界での母のことが大好きだったの。だから、かなしかった。二人のことをみせてあげたかったなって、今でも思う。
でもね。二人をしっかり、母がしてくれたように愛情深く育てることが一番の恩返しかな…そう思うことにしてるんだ」
遠くをみるような、母様の目が、優しくて優しくて。母様の母様もこんな目でみてくれたのかな、とおもったら、やっぱりおばあ様にも会いたかったな、ってかなしくなって目を閉じた。