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3/8

さん

短めです。

 陣痛が10分間隔になってから、とりあえず歩きながらがんばって思い出そうとしていた。

子宮口が開いて、子どもがおりて破水。順調なら子どもはくるっとまわりながら産まれてくる。

なんにも教えてもらってないのに自然にまわるの。人体の不思議。

エコーなんてなくても逆子でないことはさんざん蹴られてわかってるから、私がいきみを逃がしていればこの子は自分で出てきてくれる。…はず。

ラマーズで有名なヒッヒッフー。あれは実は我慢できなくなったときの最後の方の呼吸で、別にそうしなくちゃいけないわけでもない。だから、吸うのを短く、吐くのを長く。フー、うん。フー、うん。

…いきみたいけど、これをガマンするよりこの子に蹴られていた時の方がツラかった気がする。いける!


歩いている方が楽なので歩いていたら、ギルが抱き上げようとしてきた。その頭を張り倒し、義母が部屋から蹴りだしてくれた。

すみません。でも、正直助かりました。

沢山の布とお湯、産着。

あたたかい毛布、布団の予備。

自分も水分補給を忘れずに、ちょっと軽めの果物くらいはつまんで。


ぎりぎりまで歩いていたからか、初産とは思えないくらい安産でした。

二人目まで出てくるとは思ってなかったけど!

どおりで蹴りが多いわけだよね、二人で蹴ってたんだもの!

男女の双子でした。小さめだけど、その分元気。保温のためにカンガルーをしていたら、二人して毛布の下で座ってもいない首をふってお乳に吸い付いた。

二人とも可愛くて、愛しさがとまりません。


こんなにも愛しい子どもたち。

絶対に守ってあげるからね!

そこで泣いてるお父さんも本来なら頼りがいのある人だから、二人で絶対に守るからね…。





バビンスキーにモロー反射、把握反射に新生児微笑。楽しめたのは最初のうちだけだった。二人だと大変さが2倍になるんじゃなくて3倍、4倍なんだね。夫や義両親の手助けがなかったらのりきれませんでした。

本当に感謝。そして、乳母に任せなければいけない本物の貴族でなかったことにもこっそり感謝。なんちゃって貴族の騎士爵でよかった。

二人分なのに母乳が足りないこともなく、すくすく育ちました。

気がついたら首がすわって、寝返りして、お座りの前にずりばいして。なんだか盛んに二人でおしゃべりしてる。何言ってるかまったくわかんないけど。

ひとりずつ抱っこして話しかけると、真剣に聴いてくれるのがとても可愛い。

生後六ヶ月。

「そろそろ離乳食も始めようかな。魔法はいつから教えてあげたらいいかな?」


「「え!?」」


…え?


女の子、リン。男の子、タキ。どうやら二人とも、普通の子ではなさそうです。






前世の記憶からテレパシーをイメージして、念話の魔法を修得。二人と会話ができました。

娘と息子は日本で生まれ育ったやっぱり前世も姉弟だったそうです。年子でよくケンカしていたから、お互いが誰かはなんとなくわかっていたようで。

どうも事故で亡くなったらしく、中学生くらいまでしか記憶がないんだとか。前世の我が子を思い出して、あらためてこの子達をしっかり育てることを誓いました。

イメージトレーニングも大事だけど、体力も大事。だからしっかり体を動かすことを伝えて、剣を夫に教えてもらえることを約束しました。

うんうんうなづく赤ちゃんふたりはやっぱり可愛くて、愛しさがとまりません。

…こらそこ、がらがらで殴らない。




離乳食はこの世界、昔の日本のようなやり方みたいで。口で噛んで柔らかくしたものをあたえる…ムリムリムリ!

やわらかくゆでた野菜、つぶせるくらいやわらかい果物。手でつかんでのどにつまらせないくらいの大きさのものをあげました。よく噛んでね。

あ、やっぱりじゃがいも好き? うん、また出すね。

卵焼き、味付け薄い? 離乳食だからね。

肉団子、美味しい? 魔物のお肉だから、味が濃いのよ。

…こらそこ、相手の分までとらない。





母乳をもらうのは、タキは抵抗が出てきたようです。中身が中学生、当たり前だよね。リンは平気。ちょっと恥ずかしそうだけど、素直に甘えてくれます。

タキの気持ちもわかるけど、まだ離乳食で全部の栄養をとれるほど体ができていません。魔物のお乳、用意しようか?

うん、イヤなのわかったから、ハイハイダッシュしなくていいよ。

でも、牛乳とかはないのよ?

そのうち何が原料か言わないで出す必要がありそうです。




捕まり立ちからの1~2秒のたっちが出来るようになりました。

ん?もうすぐ歩ける?そうだろうけど、ハイハイも大事よ?

お庭に出てみなさいな。

10歩先まで離れた母さんのところまで歩けるかな?

…リン、虫くらいで泣かないで。魔物のなかには虫型のものもいるのよ。

泣いても助けないから、がんばって逃げてみなさい。

…タキは捕まえないで。飼いません。


なんだろう、かつてと大変さのベクトルが違う気がします。

職場に復帰した義母にみられないで良かった…と、思いましょう。

虫を嫌がって空中をハイハイしてくる娘と両手に虫を持ったままハイハイして潰して号泣している息子。

とりあえず、私はお風呂を用意しましょうか。




ヨチヨチ歩けるようになった二人に夫が靴とお揃いの服を買ってきました。リンはスカート、タキはズボン。よく似合います。騎士団の部隊長な夫は一応高給取り。

「似合うな~、うちの子は世界一可愛い!」

うんうん、よくわかってくれています。さすが私の夫!

ニコニコしていたら、二人から同時に念話がとんできました。


タキ:親バカ リン:バカッパル


離乳食は肉団子抜きにしようかと返したら、また同時に今度はごめんなさいととんできました。

わかればよろしい。




リンとタキから相談を受けました。そろそろ単語くらいは喋っても大丈夫かどうか。

個人差もあるし、問題ないよ?どうして?

あんまり発育がはやいと不気味に思われないかと心配していたそうです。すでに念話ができる時点でおかしいんだけど、気づかなかった?

あ、私は受け入れても夫や義両親が、ね。

大丈夫よ。どんなあなたたちでも私たちには世界一可愛い子達だからね。安心してお話ししてね。

念話もいいけれど、私も二人の声で呼んでほしいな。


「「かーたん」」


号泣した私をおろおろしながらさする不器用なもみじの手に、なかなか泣き止めませんでした。

絶対に、絶対に守るからね!

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