(3)
「ただいまー。」
「シン、おかえりー。」
「……って、またゲームしてるのか。」
「え。い、今始めたばかりだよ……?」
「ほほぅ。じゃあこのプレイ時間は何だ?」
指差した先には、
『プレイ時間 30h 30m』の文字が、
画面上に映っている。
「30時間30分って、
徹夜しないと出ないよな、これ。」
「つ、付けっぱなしにしちゃった、とか?」
「じゃあ何で、俺が出掛ける時に
始めたゲームが、もうラストシーンなんだ?」
「えっと……。」
「えい。」
ゲーム本体のスイッチオフに。
「……あーっ!!」
「やりすぎ。」
「だからって、消さなくてもいいじゃん!」
「じゃ、仕事してきた俺は何なのだろうな。」
「うっ。ごめんなさい……。」
「まぁ、それは置いといて。」
荷物を置いて、ガクの隣に座る。
「久しぶりに、これから出掛けないか?」
「どこへ?」
「……あの場所に。」
「大丈夫なの?」
「マネージャーに連れて行って貰うから、
大丈夫だろ。」
「あー、あの人か。僕たちの事知ってるしね。」
「そういう事。」
「宿とかはどうするの?」
「それも手配済み。」
「ん~、じゃあ行く。」
お互いに準備が終わってから、
マネージャーの車に乗り込む。
「ガク、久しぶりだな。」
「はい、お世話になりっぱなしですいません。」
「いいって。いつも通り、シンの我が侭だしな。」
「それは言いすぎじゃない?」
「まぁまぁ。俺もシンも、世話になってるって事で。」
「じゃあ出発するぞ。」
「うーい。」
「だけどさ、シン。何で急に行く事にしたの?」
「まぁ、行けば分かるよ。」
「……ふーん。」
そして、俺たちはあの時の場所に向かった。
「……着いたぞ。」
夕焼け色に染まる空と、
草原の静かな音色が聞こえる場所に、
俺たちは到着した。
「あの時と、何にも変わってないね。」
「そうだな。」
車から降りて、二人で思い出の場所へ歩く。
「ここ、だよね。」
「あぁ、ここだ。」
立ち位置もあの時のままにする。
「シン、来たら分かるって、何が?」
「それは……。」
少しだけ風が強くなり、
無意識にガクを抱き寄せる。
「……シン?」
「今日は、ちょうどあの時から一年目なんだよ。」
「そっか。あれからもう一年かぁ……。」
「だから、どうしても来たかったんだ。
同じ時間に、同じように。」
少しだけ抱き寄せてる腕に力が入る。
「ガク。俺たちさ、ここの草の匂いみたいに、
いつまでも変わらずに、一緒に居ような。」
「……うん。草の匂いと比べられるのは、少し癪だけどね。」
風が静かになったので、ガクを俺の方へ向ける。
「俺は君が好きだ。だから、
これからも俺のそばに居てくれないか?」
「……うん、いいよ。」
ガクが笑って答える。
「あの時に歌った歌、覚えてるか?」
「うん。シンのイチバン、だしね。」
二人で歌を口ずさむ。
『まどろみの中、君を見つめる
君は無防備で、幸せそうに眠ったまま
君の夢に、俺は居るのかな
楽しい夢を見れているのかな
頭を撫でて俺は行く
明日のために
君と居るために
夕焼け空を君と見つめる
君は俺に抱かれたまま
俺は君に必要とされてるのかな
君の一部になれてるのかな
たとえ、
これから先が
闇に覆われようと
これから先に
茨の道があろうと
君を守る為に
俺は走り続ける』
「……全く、あんなに大声だしてたら、
ここも何れバレるぞ?
まぁ、好きなようにやらせてやるか。」
二人の様子を見ながら、
マネージャーがタバコに火をつける。
「……あいつらは、あいつらだしな。」
白い息が、夕焼け空に吸い込まれていく。
= 完 =




