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草の匂い  作者: 凡骨竜
3/3

(3)

「ただいまー。」

「シン、おかえりー。」

「……って、またゲームしてるのか。」

「え。い、今始めたばかりだよ……?」

「ほほぅ。じゃあこのプレイ時間は何だ?」


指差した先には、

『プレイ時間 30h 30m』の文字が、

画面上に映っている。


「30時間30分って、

徹夜しないと出ないよな、これ。」

「つ、付けっぱなしにしちゃった、とか?」

「じゃあ何で、俺が出掛ける時に

始めたゲームが、もうラストシーンなんだ?」

「えっと……。」

「えい。」


ゲーム本体のスイッチオフに。


「……あーっ!!」

「やりすぎ。」

「だからって、消さなくてもいいじゃん!」

「じゃ、仕事してきた俺は何なのだろうな。」

「うっ。ごめんなさい……。」

「まぁ、それは置いといて。」


荷物を置いて、ガクの隣に座る。


「久しぶりに、これから出掛けないか?」

「どこへ?」

「……あの場所に。」

「大丈夫なの?」

「マネージャーに連れて行って貰うから、

大丈夫だろ。」

「あー、あの人か。僕たちの事知ってるしね。」

「そういう事。」

「宿とかはどうするの?」

「それも手配済み。」

「ん~、じゃあ行く。」


お互いに準備が終わってから、

マネージャーの車に乗り込む。


「ガク、久しぶりだな。」

「はい、お世話になりっぱなしですいません。」

「いいって。いつも通り、シンの我が侭だしな。」

「それは言いすぎじゃない?」

「まぁまぁ。俺もシンも、世話になってるって事で。」

「じゃあ出発するぞ。」

「うーい。」

「だけどさ、シン。何で急に行く事にしたの?」

「まぁ、行けば分かるよ。」

「……ふーん。」


そして、俺たちはあの時の場所に向かった。


「……着いたぞ。」


夕焼け色に染まる空と、

草原の静かな音色が聞こえる場所に、

俺たちは到着した。


「あの時と、何にも変わってないね。」

「そうだな。」


車から降りて、二人で思い出の場所へ歩く。


「ここ、だよね。」

「あぁ、ここだ。」


立ち位置もあの時のままにする。


「シン、来たら分かるって、何が?」

「それは……。」


少しだけ風が強くなり、

無意識にガクを抱き寄せる。


「……シン?」

「今日は、ちょうどあの時から一年目なんだよ。」

「そっか。あれからもう一年かぁ……。」

「だから、どうしても来たかったんだ。

同じ時間に、同じように。」


少しだけ抱き寄せてる腕に力が入る。


「ガク。俺たちさ、ここの草の匂いみたいに、

いつまでも変わらずに、一緒に居ような。」

「……うん。草の匂いと比べられるのは、少し癪だけどね。」


風が静かになったので、ガクを俺の方へ向ける。


「俺は君が好きだ。だから、

これからも俺のそばに居てくれないか?」

「……うん、いいよ。」


ガクが笑って答える。


「あの時に歌った歌、覚えてるか?」

「うん。シンのイチバン、だしね。」


二人で歌を口ずさむ。


『まどろみの中、君を見つめる

君は無防備で、幸せそうに眠ったまま


君の夢に、俺は居るのかな

楽しい夢を見れているのかな


頭を撫でて俺は行く

明日のために

君と居るために


夕焼け空を君と見つめる

君は俺に抱かれたまま


俺は君に必要とされてるのかな

君の一部になれてるのかな


たとえ、

これから先が

闇に覆われようと

これから先に

茨の道があろうと


君を守る為に

俺は走り続ける』


「……全く、あんなに大声だしてたら、

ここも何れバレるぞ?

まぁ、好きなようにやらせてやるか。」


二人の様子を見ながら、

マネージャーがタバコに火をつける。


「……あいつらは、あいつらだしな。」


白い息が、夕焼け空に吸い込まれていく。


= 完 =

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