表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草の匂い  作者: 凡骨竜
1/3

(1)

優しい草の匂い。

君と草原で待ち合わせをした。


「君と居たいから。

俺は君が好きだ。」


青空を見上げて、俺は約束する。


「……うん。」


君の髪がなびく。

答えは、風にかき消されてしまったけれど、

もう分かってる。


「俺のそばに居てくれないか?」


そっと抱き寄せると、

君は俺の背中に腕を回して、

胸元に顔を埋めた。


『まどろみの中、君を見つめる

君は無防備で、幸せそうに眠ったまま


君の夢に、俺は居るのかな

楽しい夢を見れているのかな


頭を撫でて俺は行く

明日のために

君と居るために』


歌い終わると、歓声が巻き起こる。

俺はそれを機に楽屋へ向かう。


「お疲れさん、シン。」

「おぅ。」


マネージャーからタオルを受け取って汗を拭く。


「次は北海洞(ほっかいどう)だぞ。」

「今の時期、寒すぎじゃん。」

「ファンが居るんだから行くのは当然だろう?」

「……ま、行くけどね。

あ、とりあえずアイツに電話していい?」

「ちょっと待て。今は関係者も外に居るし、

車の中で頼む。」

「はいはい。」


少し俺は不機嫌に車へ向かう。


「あっ!シンさん、サインくださいっ!」

「いいですよ。でも、ここは関係者以外

立ち入り禁止ですからね?」


俺は色紙にサインをして、

ファンの子を通用口から外へ誘導し、

車に乗り込む。


「……マネージャー。今日の警備って、どこ?」

ARSO(エールソ)だな。北海洞でも警備予定だぞ。」

「じゃあ、もっとちゃんと警備するように言っといて。

さっきファンの子が混じってたから。」

「分かった、すまんな。」

「ん。じゃ、ちょっと電話する。」

呼び出し音の後、寝ぼけた声でアイツが答える。


「ぅう?シン、おはよ~。」

「ガク。また、寝てたのか。」

「うぇっ!?な、何のことかな……。」

「後でシメる。」

「ご、ごめんなさい……。」

「って、この話じゃなかった。

ガク、俺これから北海洞行くから。留守番よろしく。」

「あ~、うん。……ん?北海洞?」

「うん。北海洞。」

「北海洞って何処だっけ?」

「北の海に浮かぶアレだ。」

「あぁ。って、今日帰って来ないじゃん!」

「そうなるな。」

「……なら、連れてってくれるとかは?」

「却下。今起きたような人はダメです。」

「うぅ……寂しくて自殺してもいいのっ!?」

「そう言える人は自殺しないよね。」

「そうだね。」


しばし沈黙。


「……やだぁぁぁっ!!」

「ヤダとか言うなっ!!」

「シンの意地悪……。」


ガクの声がちょっと涙声になってきた。


「まぁ、何か買ってきてやるから。」

「……ほんとに?」

「あぁ。」

「じゃあ、冬野恋愛ドリンク。」

「まぁた甘いのを。」

「いいじゃん、好きなんだし。」

「はいよ。じゃあな。」


電話が終わる頃には鳴多(なりた)空港へ着き、

マネージャーは搭乗手続きに向かう。

俺はそれまで買い物。

空港の土産物屋で、ガクが好きそうな甘い物を

宅急便で送る手配をしておく。


「シン、終わったぞ。」

「あ、分かった。」


俺はマネージャーに促されるまま、

搭乗ゲートへ向かう。ファンへのサービスも忘れずに。


「シンさん、こっち向いてください!」

「あぁ、はい。」


フラッシュを背に浴び飛行機に搭乗すると、

中ではフライトアテンダントさんの説明が始まる。


AAA(トリプルエー)航空をご利用いただき、

ありがとうございます。本機は鳴田-佐津幌(さつほろ)便です。

佐津幌には、10:30頃到着予定です。

どなた様も、ごゆるりとフライトをお楽しみくださいませ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ