武闘大会 1
これからは、続々新しい仲間や登場人物が増えて行きます。
その頃、キィールとサジールは、宿舎に帰って来ていた。
宮殿に呼ばれて、武闘大会にサジールを参加するように言われて、仕方なく了解したのちに、決勝に残った面々と、各王が推薦する騎士を紹介された。
しかし、このところ7連覇をしているザルーサと言う武闘王は居なかった。
何でも異常に闘争心が強く、大会前は人前に姿を見せないって話しらしたい。
何をしてるのか解らないが、屋敷から出て来なくなり、食事も召し使いに運ばせず、部屋に籠っていると言う。そのチャンピオン以外が一同に集まって、明日からの決勝大会の健闘を称え合うのだが、今年は雰囲気が違って、余り話し掛けたりする者も居ず、各貴族や王族達が和気あいあいしているだけだったので、イオンとサジールは、適当に王族達に挨拶したら、退席をして早めに宿に帰って来たのだ。
「いつの間にか、大会に出るようになったゃったね」
キィールは、ちょっと心配しながら言った。
「そうですなー余り目立ちたく無かったのですが…仕方ないですね。
負けるような、輩は居ないですが…1人気になる人物が…」
と言って、サジールはちょっと考えこんだ。
直ぐにキィールが
「ゾイルって言う、カール王の騎士だろー」
言ったので、サジールはちょっとびっくりした表情をした。
サジールは、マスターだから、ゾイルがマスターなのは解ってはいたが、普通の人には大勢居た出場者の方が、強そうに思えるからだ。
ゾイルは、最後にカール王から
「もう1人出たい者が居るので、紹介しておこう」
てゾイルを軽く紹介しただけだった。
サジールは、大会に出ると言うので、宮殿に残ることになった。
「若、帰りは大丈夫ですか?もしかすると、私を宮殿に足止めする為に大会に出させるのかもしれませんから、帰りが危ないと思われますが」
「大丈夫だろ?カール王の馬車で送って貰えるそうだし」
「しかし、5倍以上の賞金を私に賭ける輩ですので、十分に気を付けてください」
サジールは、心配そうに言ったが、直ぐにキィールが
「まー襲われたら、面白いだけどね」
と笑いながら言って、続けて
「今じゃ3回に1回は、サジに勝てるだぜ!どうせ、多くて20人位だろから、返り討ちだよ」
と、自信満々に言った。
そう、キィールは、瞬く間に腕を上げて居て、サジールも嬉しい限りだった。
「余り無茶はしないでくださいね」
サジールは、苦笑しながら言った。
サジールと別れて、キィールは馬車で帰ることになった。
馬車の客席は木で出来ていて、中々丈夫な作りだった。
だか、やはり帰りに怪しい人影が多数現れた。
デモノの古くからの側近の1人のラケスが、若い奴が台頭してきたので焦ったのか、普通なら絶対に襲わないカール王の馬車を襲おうとして、待ち構えていたのだ。
キィールは
「ちっと止めてくれないか!」
馬車の従者に言って、止めさせた。従者は、何も言わず止めると
「丁度食後の運動したかったところでね。」
と、言って出ようとするが、従者は赤の盗賊なのか、キィールの実力を知っている様で、動きはしなかったが
「お気をつけ下さい」
と一言言った
まだ普通では、見えない距離だったが、最近のキィールは人の気配が、かなり遠くても分かる様になっていたので、カール王の馬車を傷付けない様に、分かった時点で馬車を止めて置くことにしたのだ。
翌日、決勝に残った者8人と、推薦の者の16人で決勝トーナメントの試合が始まった。
ここで、優勝すると賞金が貰え、武闘王へ挑戦する。
ここでも勝つと、賞金が倍になる。
その7連覇中の武闘王がモデノが主人のザルーサだった。
サジールとゾイルは順調に2試合を勝ち進み、準決勝で遂に対決することになった。
その頃になると、ゾイルもサジールの実力を認めざるえなくなっていた。
(強い…俺に勝てるか…わざとギリギリに勝ってるが…何者だろう、あの者を従えてる主人は余程の人物に違いない)
マスターは主人を選ぶので、普通は一国の王かそれに匹敵する人物かなのだ。
ゾイルは、考え込んで、じっと豪華な控え室に大会側が用意した美女をマッサージを受けながら、ソファーの様な長椅子に座っていた。
その隣の部屋の控え室では、サジールが座って腕の鎧の切れた紐を新しいのと換えながら、考え事をしていた。
(皆殺気が凄いな、余程の大金が私に掛かって居るようだが、今のところマスターはゾイルしか居ない様だが、面白い技を使う者が居るな。あの次は、いよいよゾイルか…中々のマスターの様だが…まだ真のマスターにはなって居ないようだな)
ちょっとサジールは微笑えんでいたが、今度は急に難しい顔をして
(それより、あの妖艶な技を使う男の方が気がかりだ。あの技は暗殺を生業にする輩の技。それも大国だけが雇とえる真理教団で使われていると言われている技…何故こんな所にそんな使い手が居て、しかもこんな武闘大会に出ているのだ…まさか若の素性が…嫌、それない、素性がバレてるなら、多数で夜中にでも、襲撃して来るのが早いと思うが…大体他に奴らの気配もない。単身でこんな目立つことをするとは…)
サジールは、そっちの方が次のゾイルより気になって仕方無かった。
真理教団と言うのは、良くは解らないが、マスターの様な能力は使わないと思われるが、その技はマスターも凌ぐ者も居ると言われている。
色々な武器は勿論、体術も優れており、一度引き受けた依頼は、どんな暗殺も確実にこなすと言われている。
報酬額が莫大の上、中々依頼が難しいので、大国でしか雇えなかった。
(ゾイルといい、あの者といい、あの娘といい、ここは不思議な人物はかりだな)
サジールは、紐を換えると、立ち上がり少し腕を振って、違和感がないのを確かめた。
サジールは、大会で優勝しようと考えていた。
ここまで有名になってしまえば、優勝して逆に手を出せなくした上に、奥地に行く傭兵を少しは楽に集められると思ったからだ。
噂は、サジールも聞いて居て、ゾイルがカール王に遣える前に、元の主人と500人の兵士と奥地に行く途中、謎の怪物達に襲われて、ゾイル以外は皆殺されて、生き残ったゾイルも普通なら死んでもおかしくない重傷だったと言われていた。
しかし、ゾイルは詳しく何も言わなかった。
マスターなら当然とは思うが、新しい主人のカール王にも話してない。
カール王は、その目的を気にはしているが、昔から奥地には化け物が出るので行ってはならないと決められているので、余程の秘密があるとは思ったが、そのことをゾイルが言うはずもないと思ったので、聞こうともしなかった。
それは、例え命より大事なことだったからだ。マスターの間では、主人の秘密を話すと、力が無くなると言われているからだ。
カール王や人々は、勘違いしているのだ。確かに、マスターの信義に反するが、それだけではないのだ。
シールの力は、神から与えられていて、倫理に反すると失うと言われている。だが、それが本当なのか分かっていない。と言って自分が試そうかと思う奴は居ないし、闇のマスター。巫女以外で解放されたマスターさえやらないのだ。ゆえに、真理教団にはマスターが居ないと言われている。
そのゾイル達一行の悲惨な結果から、多分中々雇えないと思われる。
いよいよ、ゾイルとサジールの試合が始まった。
闘技場は、沢山の人々が歓声を上げていて、主催者側の声も聞こえないが、進行は大きなドラムの音で、行われてている。
ダーンダーン
2つドラムの音で、2人は闘技場に地下からの階段を上がって現れた。
闘技場は、5千人は入れる、大きなコロシアムになっていて、10階建の円形で、決勝トーナメント用の物だ。
王公貴族達に、挨拶したのち、コロシアムの客に剣を高らかに上げて挨拶するのが礼儀だったので、2人はその様にして、後は開始のドラムを待つだけになった。
ゾイドは、闘志みなぎる顔をして居たが、サジールは無表情だった。
ダーンダーンダーンダーンダーン
ドラムが鳴って、遂に試合が始まった。
ゾイルは、剣を上から下ろしながら、サジールに襲い掛かった。
カキーンカキーンカキーン
サジールも直ぐに剣を構えて応戦する。
続けざまに、10合ほど打ちあって、とっさにゾイルは後ろに離れた。
見た目は互角の戦いに思えたが、ゾイルの方が息遣いが荒かったが、観客には分からない。
普通なら、10合ほど程度では、息遣いが荒くなることはないゾイルであったが、剣の力が違って居て、ちょっとでも力を抜くと剣が飛ばされそうだった。
分かってはいたが、打ち合う程度の距離では、シールも効かない。
その上、何やら違和感があった。
(さすがだ。こんなマスターに会ったのは初めてだ。久しぶりに本気で戦えるぜ)
そう、ゾイルは今まで結構マスターと戦っている。世界には自称、闇など合わせるとマスターが10000人以上居ると言われている。その中で少なくとも上位100以内には居ると思っている。正マスターなら10人以内なのだが、闇マスターは能力が高い。何やら薬を使って居る為だが、その代わりその薬の副作用で何時死ぬか分からないとのことだった。だが見返りは大きく、10倍の能力アップはするらしいから、シールなのか、ただ能力がアップしたのかは分からなかった。
今まで、負けたこともない。ゾイルのシールは、大したことないが、身体能力が特筆していたので、彼の剣が見えない輩が殆どで、簡単に勝てる。シール自体は、身体を一瞬動けなくするだけだが、それはかなり強力で、自分より強い奴でも、避けられなかったので、余程のことがないとフェアやないのでつなつぬ
ゾイルは、戦える嬉しさに夢中になって居て、尽かさずまたサジールに向かって行った。
観客は、公式、非合法な賭けをしているので、人気のあるゾイルが激しく向かって行ったので、凄い歓声になった。
剣は、段々早くなっても、サジールは全く動じないばかりか、余裕で受けている。見た目は、ゾイルが責め立ててる様だし、離れて居るので、普通の人には見えなくなっているのを気付くのは少なく、賭け率5対1でゾイル方が人気になっている。
ゾイドは、正マスターじゃないかと噂になっていたし、サジールがわざとギリギリに勝って来たからだった。一般の人は、闇マスターのことは知らない人が多かった。見た目強ければ、マスターは分からないし、シールの様な力を持っているのがマスターとは知らないからだ。
その時頭の中に
(ゾイルやら聞こえるか)
と男の声が響いた。
ゾイルはドキっとして、冷たい汗が背筋を走る感じがした。
(だっ誰だ!)
(目の前に居るぞ)
はっとサジールを見ると、少しニタっと笑った。
(こっ、これはマスター同士の会話って奴か?)
ゾイルは、ちょっとびっくりしたが、直ぐに事態を理解した。
(お主は、まだ真のマスターになって居ないな。自分から話しが出来ないのが、その証拠だ。どうだ、ここらで負けてくれないか?これ以上やると、真のマスターの力を使わなければならぬ。
私は使いたくないのだが)
サジールの声がゾイルの頭の中で響いた。
しかし、戦いに完全に夢中になって居るゾイドは
「その力とやらを見せて貰おうか?私の力も見せてやるぜ!」
と口に出して叫んだ。
(仕方無いな)
サジールは、今までとは違う、怖い顔をしてゾイルの突進を受け止め様とした。
カギガキガキ
ゾイルの剣をサジールが受け止め、剣が力強くつばぜり合いになっていたが…ゾイルの顔は青ざめていた。
(シールが何故効かぬ、何故だ!この距離で全く効かぬとは…)
ゾイルは、渾身のエネルギーを使って、マスターの力を使ったのだが、全く効かなかった。
サジールも使ったのなら解るが、サジールが使った形跡もなかった。
(解るか?マスターの力とはこんな物だ。相手の闘気が強いと効かぬのだ。お前はまだ自分より強い者に会ったこともない、井の中の蛙だったのだよ)
サジールの声が頭に響いた。
確かに、まだマスターとして若いゾイルには、そんな相手には出会っていなかった。
(どうだ?もう一度使って見るか?今度は真のマスターの力を見せてやろうか?)
ゾイルにそう言うと、サジールは、初めて突進して来た。
ゾイルも透かさず立ち向かいながら、渾身のエネルギーをサジールにぶつけた。
サジールとゾイドが剣を合わせた瞬間。
ガギーン
と鈍い音がして、ゾイルの剣が高く飛んで、
グサッ
と音がして地面に刺さったかに見えたが…良く見るとゾイドの剣が根元から折れて飛んでいたのだ。
嫌、折れたのでらない。
切られたのだ。
ゾイルは、その切られた剣の切り口を見ながら、ピタリとも動かない。
一瞬、観客も静かになり、何が起こったのか理解しようとしていたが、速すぎて全く分からなかった。
しかし、ゾイルは見た。青く光る力をまとったサジールが、その光で覆われた剣で、ゾイルの剣を真っ二つに切ったのを。
(こんな力見たこともない…勝てるはずない)
ゾイルが膝を付いて、敗者のポーズを取ると、観客はぞよめいて居たが、決着が着いたと理解して、凄い歓声に変わった。
観客は、
「まー仕方無いな、剣が折れちまってはなーしかしいい試合やったなーしびれたよ」
と皆口々に同じ様なことを言って、2人に歓声を送っていた。
だが、ゾイルのショックは相当の物で、いつもの様に、無口で平然と引き揚げていたが、顔色は優れなかった。
ゾイルは、普段こんな顔をしたことが無かったので、観客席から見ていたカール王は、少し心配になって、ゾイルの控え室に飛んで行った。
「大丈夫か?」
長椅子に座っているゾイルに声を掛けると
ゾイルは、直ぐに膝を付いて、臣下の礼を取った。
「大丈夫なのだな? 心配したぞ」
少し安心した顔をすると
「やはり、世間は広いと言うことですな」
と平静を装ってゾイルは言った。
しかし、それを感じ取ったカール王は、
「まー少し休め、あの者達が本物と言うのは、十分に分かったし、一度あの若様やらに、会って見ようと思うしな」
そして、帰ろうとした瞬時にゾイルを見て
「もしかしたら、奴は帝国正騎士のマスターかも知れん!となると、あの若様は…ワシもそろそろ動かねばならないな!若様と面会し害をなすようなら、ワシが仕留める!その時はお前の命で、奴の足止めを頼む!」
そう言うと、さっさと出て行った。
ゾイルは、じっと動かなかったが、カール王の出て行く音を聞いて立ち上がって
「ふっ、命を賭けてかー、それでも無理かもな」
と呟いて立ち上がった。
カール王は、人を使うのが上手いので彼に命令を与えて、正気にさせたのだ。
まだ、フラフラしながら、伴の者の助けを受けならが馬車に乗り、帰途についた。
(あれは、何だ!あの圧倒的な力は…真の力とは…俺は、シールを理解して無かったと言うのか…)
ゾイルは、ずっとそんなことを考えて、屋敷に着いても何を言われても聞こえていなかった。
屋敷に着くと、ミシアが出て来て
「旦那様、どうなされたしたの?」
声を掛けたが、返事は無かった。
従者が何人か、ゾイルを支えていた。
ミシアは、従者達の目を見て、大体のことは分かったので、それ以上聞かなく、ゾイル達を中に入れて、手で、外にと従者達に言った。
従者達は、手招きされたまま、ゾイルをソファーの様な長椅子に座らせると、後はミシアに任せますと言う感じで、ミシアに礼をして黙ったまま帰っていった。
二人になると、ミシアを横から抱き寄せ、ゾイルの首に手を掛けて
「ゾイル様…」
そう言うと、そのままゾイルを抱き締めて、ゾイルの顔を自分の胸に押し付けた。
そのまま、どれ位過ぎたか、ゾイルはメシアのいい匂いを感じて我に返った。
(メシア…)
ゾイルは、メシアを抱きたい衝動にかかれ、メシアがいとおしくて堪らなくなったが… 頭に巫女の声が
(女性を本当に愛してしまうと力は消えます)
その言葉が聞こえた。
(メシアを抱いてしまったら… 完全に愛してしまう。俺はそれでもいいのか?あの苦しい修行をして手に入れた力…)
メシアの肩を押さえた手に力が入いり、メシアは痛かったが彼の胸に顔を埋めて隠したが、手の震えでゾイルは気付いて手を離した。
「今日は、旦那様の隣で寝たいと思います。」
メシアは、小さな声で言いながら、顔を赤らめていた。
(ああー俺は、この人が好きだ!愛している!)
そう、頭で叫んだ後、メシアを抱き締めて
(どうせ大した力じゃない!彼女の為なら命も捨てられるのだから、力なとどうでもいいじゃないか!)
そう決めると彼女をベットに抱えて連れて行った。