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信号機がここにいた証

作者: 捺樹

初めまして!捺樹です。

この小説に触れていただきありがとうございます。

最後まで楽しんでもらえればなーって思います。

朝、家を出るときに見たニュースの占いはたしか1位だったはずだ。

今月の雑誌の星座占いも1位でここ最近ついていた。

だから今日は絶対いい日になるって思ってた。

成宮葵なるみやあおいことあおはこの日は絶好調に家を飛び出す。


なのに、朝は遅刻しかけるし、今日〆切の課題を家に忘れてくるし、日直で観察池の鯉のえさをあげてたら、男子のとびげりをうけて観察池に落ちてびちょびちょになるし、、、ついてなさすぎる。

あげくのはてに幼馴染の九条紀伊くじょうきいこときいから「先生に呼ばれたからあかとグラウンド行ってて」

笹塚紅汰ささづかこうたことあかからメールで「ごめん、今日は姉貴の買い物に付き合わされて、行けない」


(皆みんな、なんなのよ、、、)


やけになって、自転車をこいで坂下公園に行く。

誰もいない、公園で一人さびしくブランコをこぐ。

こうしていると昔を思い出す、、、。

(昔、、、???)


なんにも思い出せない。

「あれ、、、。」

思い出すのは小3にきいとかっけこしていて転んだこととかくだらないこと。

違う、、、。

思い出したいことはもっともっと辛いことだった気がする、、、。

まっーいっか!暗くなってきたし帰ろ。


勢いよく自転車をこぎだす。


扉を開けると知らない靴。

「ただいま」

こっそりと入る。

「あおい!来ちゃダメ!!」

「えっお母さん??」

リビングからでてきたのは知らない男の人。

その後ろにところどころから血がでていたり肌の色が変わっているお母さんが私にその男を近づけまいと必死にしがみついている。

「あおい!おあい!!逃げて!!!」

私は怖くて動けない。

「おかあ、、、さん」

それでも男はどんどん近づいてくる。


動け私!動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け


「あおい!!逃げて!!!!!!!!」

私はお母さんの大声に驚いて、体が動く。

「すすすぐ、誰か呼んでくるから!だから、だから」

私は走って、必死で走って近くの交番に駆け込む。


「おおかああさんが、おかあさんが!!早く!」

急いで警官を家に連れて行く。

すると玄関で変わり果てた母の姿があった。


「お、、、おかあ、、、さ、、、ん??お母さん!しっかりしてよっ!!お母さん!!」

男はいなくなってた。

母はすぐに病院へ運ばれて行ったが、鈍器のようなもので強く殴れていたらしく、脳内出血で死亡が確認された。


逃げた男は家付近をあるいてたところに不審人物として職務質問をかけられ、警察に逮捕された。

駆けつけた親戚によってその男は私が幼いころ母と離婚した私の父と判明した。

めまぐるしく回る現状に追いつけなくて、気が付けば、一人ぼっちだった。

もともと、一人っ子の私は母1人、子1人で生活していた。

だから、隣町の祖父母の家に引き取られることになった。


久しぶりに行った学校はいつもと変わらなくて、クラスメイトは気を利かせてか話しかけても、触れてこようともしない。

教室の角でひそひそ声が聞こえるだけだ。

(なんでもいい、、、)


「あーお!おはよう!」

話しかけてきたのはあか。

「久しぶりだね」

「ほれっ。休んでたぶんのノート」

ノートを渡してきたのはきい。

「ありがと」

あかは私の頭をくしゃっとなぜて、

「全部聞いた

無理しなくていいから」

「うん」


2人はそこからなんにもしゃべらなかった。

きっと私が話し出すのを待っててくれたんだと思う。

でも、今の私は何を話していいかわからないし、今までどうやってやって接してきたのかもわからない。


数日して、なんとか日常に慣れてきたころ、

「あお、今日母さんが夕食食べにおいでって

気がのらないなら、無理しなくていいんだけど、どうする??」

「俺行く!」

「おまえは聞いてねーよ」

「えっー」

「ふふっ

行くよ、おばさんの料理ほんとおいしいもん。

そんなに心配して、ダイジョウブだよ?」

ぎこちない笑顔で2人が笑う。


放課後、3人できいの家に向かって歩いてるとあかの携帯がなる。

「もしもし?えっ、、、、」

電話が終わって、

「ごめん!母さんが倒れたらしい、、、病院行くわ!!」

胸が急に締め付けられる。

「おばさん、大丈夫か??気を付けて行けよ」

「、、、早く行って」

「悪いな!」

あかはそういって自転車で走って行ってしまった。

私はこらえてた胸を押さえる。

それに気づいたきいは「あおっ??大丈夫っ??」

私は過呼吸みたいに「はぁ、はぁ」といっているのできいは私の肩を抱いて近くの公園のベンチに座らせる。ある程度時間がたって落ち着くまできいはそばにいてくれた。

落ち着いてから、私を家まで送ってくれた。

「、、、ごめん、あかもいけないのに私までいけないとおばさんの料理、、もったいなくなっちゃう」

「大丈夫だよ、うちんち、亜希も達希もいるんだから余裕で食べれる。

いつでも来いよ。

母さんの料理は逃げないし、いつでもうまい、、、なっ!」

「ごめん」

「じゃーな」

私を送ってからきいも自転車に乗って消える。


家に入った私はしーんとする玄関を眺める。

祖母は施設で、祖父は畑仕事でなかなか帰ってこない。

自分の部屋に入って、宿題をした後、夕食を作る。

作ってる最中携帯がなる。

あかからメールで、

「心配かけて悪い、母さん、大丈夫だった。

最近、仕事ばっかりで寝不足だって。

きいんちの夕食たべたかったな、、、。

今度絶対行くから」

(あっだめだ、、、、)


涙があふれる。

「なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

けっして、あかのお母さんが助かってほしくないわけじゃない。

ただ、なんで私は一人ぼっちで、苦しくて。

きっと、今頃きいは家族でワイワイおばさんの作った夕食食べてて、あかもお母さんに文句言いながら笑い合ってるんだろう。

(私はなにかした?なにか悪いことした、、、?なにがいけなかった??

もう、生きたくないよ、、、

なんでもいいから消して)

「消してっ、、、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!」

「おいっ!」

見上げると、1人の男の子がいる。

涙でぐしゃぐしゃでその男の子をはっきりととらえることができない。

「、、、幻想?」

私の前にしゃがみこんで私と目線を合わせる。

「僕のこと忘れた?」

くすっと笑うと私の中に入っていってそこから私はぱたりと倒れてしまった。


「ここは、、、」

見渡す限り霧で、何も見えない。


ふと、誰かの泣き声が聞こえる。

その泣き声に近づいていくと見知ぬ公園につく。

1人小さな女の子がブランコに座って泣いている。

近づいていくと「お母さんが、、、お母さんが、、、、早くしないと、、、お母さんが」と唱えている。

肩からかけているのは黄色の保育園児がかける鞄。

鞄についている名前は「成宮葵」


「私、、、!??」


「だいじょ、、、」声をかけようとしたとき子供の言っている言葉が変わる。

「あんなやつ消えろ、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ」


「助けて、、、、助けてよ、、、、、誰か助けて」


その子に触れようとした瞬間場面が変わる。


マンションの一室の前につく。

大声でけんかしている声が聞こえる。

中に入ってみると、若いころの母が母を殺したあの男になぐられている。

母は必死に「やめて!!」と言っている。

私は止めようと「お母さんに触るなっ」と母の前に立ちはだかるが私の身体はすり抜ける。


「私、、、死んだの??」


「いや、君は死んでないよ

ただ、君の過去にいるだけ」


現れたのはあの男の子。


「誰、、、なの」


「僕は、レイ。君が作り上げた架空の友達」


「れ、、、い?」


「君の父親は最初は真面目に仕事して、優しい人だったんだ。

だけど、あるとき不況で会社でクビにされちゃって、昼からお酒を飲むようになって、君のお母さんにも暴力とか大声で怒鳴ったりして。

そんな状況でいつ君に父親が手をあげてもおかしくなかったんだ。

だから、君のお母さんは君の身を案じて外によく追い出してた。

だから君はよく一人であの公園にいた。

君は賢い子だったから父親が母親に手を挙げていることを十分知っていた。

君は十分怖いはずだったのに母親を心配させまいと知らないふりしてやり過ごしてたんだ。

そんな君の思いを全部聞いてたのがぼく。」


「、、、。」


「君はすごく過去の記憶を重荷にしていたから、僕が記憶の管理をしていたんだけど、今、君は知るべきだと思う。

、、、知らなくちゃいけないんだ。」


起きると朝でベッドにいる。そばにはじーちゃんが寝ていて、私は現状が呑み込めなかった。

私が起きたのを察知したのかじーちゃんは目を覚ます。

「こたつで寝とったから運んだんじゃが、、、」

「ありがと、おじーちゃん」

時計を見ると、ちょうど起きる時間だった。


「ご飯作るから待っててね」

私は起きて、朝の支度をする。

「いってきます」

学校に行く際、夢での出来事が何度も繰り返される。

(レイ、、、?)

確かに失っていたはずの記憶がどんどんもどってきている。


「おはよっ!」

後ろからかけられた突然の声に驚いて、私はしりもちをついた。

「あっ悪い!」

と声をかけた主である、あかが手を差し伸べる。

「ありがと、、、」

「突然声かけるなって言ったのに」

と隣できいが言っている。

「おはよう、あお」

不満そうな顔であかが言う。

「だって、あんまりぼっーとしてるし、暗い顔してたってはじまんないだろ!」

変な間があいて、

「なに、それ?私は好きで暗い顔してるんじゃない!

ねぇ、どうしたら暗い顔しなくて済むようになる?

どうしたってあのこと思い出しちゃうんだよ。」

「あお?じゃああおはずっと暗い顔して生きてくの?」

「思い出すななんて言わないよ」

「家族があたりまえにいる2人にはわかんないよ。

だって、、、もういい!」

あおは一人で学校に向かった。

残された2人は黙って自転車をこいだ。


いろんなことが急にわかって、受け止めきれなかったあおは2人にやつあたりをした。


そのお昼は珍しく、あおは2人とは一緒に食べなかった。

その日の放課後も一緒に帰らなかった。

話さない日が続いてあの日から3日たったころ。

あかときいは強行作戦にでた。

いつものグラウンドに、あおの友人の純にあおを連れてきてもらってタイミングを見て、あおを1人にした。

「純ちゃん?あれっどこいった??」

「あーお」

木の陰からきいがでてきた。

逃げようとして反対側からあかがでてきた。

「あおっ」

「帰る!

3人の中に純ちゃん巻き込まないで」

スタスタと帰るあおにサッカーボールをあかがぶつける。

「いったぁ」

「せっかく、来たんだからやってけ」

「今、そんな気分じゃない」

「いつになったらサッカーやる気分になるわけ??」

「ほっといて」

「1対1、あおが勝ったら俺らはもうなんにも言わないし、ご希望通りほっておく

負けたら、そのときに考える」

「悪い話じゃないでしょ?

勝てばいいんだから」

「ハンデは?」

「いらない」

「おぉ~」

「じゃあ、先にあかとあおね?」

荷物を肩からおろして軽くストレッチをする。


「いくよっ!」

きいが投げたボールに2人が突撃していく。

ちょっとの隙をついてあおが1点先取する。

「ばーか」

「ちょっ、ちょっと失敗した」

間をおかずにきいとあおが戦う。

「いくぞっ!」

すかさず、きいが1点決めた。

「同点だな!」

「、、、ずるいし、2人ともたちが悪い!

いくら私だからってなんで続けて1対1なのよっ!!

えっ、あ、、、

帰る!」

「じゃあ、あおの勝ちでいいよ、それでいい?あか??」

「、、、」

「俺らはもうあおのことほっとくから、それでいいんでしょ?あお」

あおは無言で去る

「おいっ、なんだよこれっ!

あお、いっちゃったじゃん」

「だってあかが負けたんだろー」

「そ、そうだけど、、、」

「んまー大丈夫」


その夜、あおは坂下公園のブランコにいた。

ひとりでブランコをしていると1匹の猫が近づいてきた。

「にゃん、にゃん」

猫をなぜているとふと無意識に言葉が出た。

「、、、きいとあーちゃんに悪いことしちゃった」

誰もいないはずの木々が揺れて、それに驚いた猫は一目散に逃げた。

「だれっ??」

「こーゆときはきゃっーとか言うのが女子だろ??」

でてきたのはあかときいだった。

「悪い、聞いた」

「なんで??」

「あおがなかなか素直にならないからー」

「こいつ腹黒い」

「へっ?

あかなんてどーしようっておろおろしてたくせに」

「、、、2人ともごめん」

あおは頭を2人に下げる。

「2人ともいつだってあたしのことちゃんと考えててくれて、あのときだってわかってないって言ってごめん。

わかってないのあたしの方だった。

私、自分のことで一杯いっぱいで2人のこと考える余裕なかった」

「いや、俺もあおのことわかってた気でいたけど全然わかってなかった。

俺もごめん」

「今、わかったならそれでいいんじゃない?

あかはちょっと考えが浅かったし、あおも意固地になりすぎた」

「きいに言われると腹立つ

でも、そう、、、」

「私たち戻れる?」

「もちろん!」

「んー、前みたいじゃあ困る

きちんと理解してくれたならよし!」

「あたりまえ!

きいは理屈が多い」

「だって『きい』じゃあ間に入る宿命だからね」

「これで信号復活!!」

「信号って、、、」

こんなに大きなケンカは初めてで、でもそばにいる人の大切さと温かさを知ったんだ。

2人と笑い合ってても、辛いことを思い出してしまうことは仕方のないことでも、それにとらわれない自分の強さがほしい。


「君にはもう時間がないよ」

レイが笑っているあおにつぶやく。


 

やっと生活にもなれてきて、フラバの恐ろしい縛りにも解き離れかけている頃に一度きりで現れなかった人が現れた。それは、修学旅行のグループ決めの時、私たち3人を含めた6人班ができた。黒板に代表して純ちゃんが書きに行く。5人の名前を書き終えて、最後に私を書くはずなのに、書かずに席に戻ってきた。書いてない私の名前、誰も突っ込もうとしない。

「純ちゃん、、、私書かれてないよー」

冗談っぽく言ってみる。

そうするとほんとに忘れていたように、

「あっごめん!ほんとごめん!!今から書くね

なんで忘れたんだか、、、」

「あっいーよーいーよ

6人って意外と忘れることあるよね」

最初はイジメ、、、かとも思ったが純ちゃんはそういう子でもない。

その証拠にそのあとも普通に話しかけてくれたし、他の子にも変わった様子はない。


最近、持つものをよく落とす。

それに、話の間で「『あお』ってでてこなかったー」という言葉を他の子からきく。

あと、私につまずいて転びかける子もいた。

(、、、おかしい)

「その疑問を教えてあげようか?」

1度現れたきりの男の子の声が聞こえる。

「レイ、、、?」

「そう」

声しか聞こえない。

「知ってるの?

私は病気なの?」

「いや、違うね

おっと」

急に後ろから肩をたたかれる。

「大丈夫か?」

あかだ。

「えっ?」

「おまえ今、1人でブツブツ言ってたからとうとうやばいのかと、、、」

(レイの声は私しか聞こえないのか)

「そうだよ」

「えっ、、、」

「なにが、『えっ』だよ

聞いてんのはこっち!」

「っあごめん、、、」

(私の心の声が聞こえるの?)

「筒抜け」

(、、、)

「あーちゃん、今日私、用事あるから先に行っててくれない?」

「あっ、、、おぅ!」

先にグラウンドに行ったあかを見送りながら人通りを避け、公園のベンチに腰掛ける。

「さっきの続き」

「あぁ、僕は伝えるべきだと思うから言う。

結論から言うと君は流れ星に君の存在と君の願いを交換したんだ。

改めて、僕は流れ星で、この体は前に言っていた通り、君が作り上げた架空の友達のレイだ。

君たちが信じている迷信と違って流れ星なんて実際はほいほい願いを叶えられない。

君の存在は交換された今、君が感じている現象が起き始めている」

「ねぇ、私はなんてお願いしてたの、、、?」

「君は『お母さんを助けて』とずっと願っていた。

そこへ、ひとつの流れ星が降ってきて君と契約したんだ。

君は存在を失う代わりにお母さんを助けてもらった。

ほんとは君のお母さんは君が保育園児の頃に一度死んでるんだ」

「、、、なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでだったらなんで、今回お母さんは死んだの?

私の存在と交換したなら今回も助けてくれるんじゃないの?」

「君も感じてるんじゃないか?

今回も、、、

そんなに都合よくこの世はできていない」

「不公平、、、」

「そう」

携帯がぶーぶーとなる。

でも私はとれなかった。

そのまま、テンション上げてとか笑ってとか元気よくとか明るくあかたちに会える気がしなかった。

だから、そのまま家に帰った。

夜、きいからメールが来て、

「あかが怒ってたぞ。

あとで、なんかいっておいてやれよ。

怒ってても、凄く心配してるんだから」

誰にも話しかける気がもてなかった。

でも、きいにもあーちゃんにも申し訳なかったから、

「ごめん」と一言だけかえしておいた。

あとのことはわからない。

ベッドで考え事をしていたらいつの間にか寝てしまった。


久しぶりに母の夢を見た。

楽しかった2人暮らし。

凄く明るくていつでも笑っている母。

でも、とりもどした記憶のなかには苦しい母の声、顔が鮮明に残っている。

流れ星との契約とかごちゃごちゃした記憶は夢にでてこない。

あるのは楽しかった思い出。

(なんでこんなことになったんだろ、、、)


起きた時、頬がぬれていた。

「泣いてたのかな、、、私」

(レイ、、、)

「なに?」

「ずるいよね、、、

私のこと私より知ってて、私の気持ちも丸見えで」

「君よりも君の記憶とのつきあいが長いからね」


「今日も始まる」

外はすでに明るくなっている。

「朝ご飯、作らなきゃ」


「いってきます」

今日は急いでるわけではないが走ってみる。

後ろからあかときいの声が聞こえる。

「おはよう!

お二人さん!」

「おぉう、、、おはよー」

「おはよう、あお」

「あおっ!昨日っ!」

「ごめん!今日は代わりに全力でやる!」

「絶対!」

「まっかせて!」


「今日のあお、変じゃね?」

そういったのは購買に昼ごはんを買いに行ったあおを見送った、あかの一言。

「変。」

「昔に話戻るけど、あおの母さんが亡くなってからあおだいぶ変わったよな。

ケンカしてから最近は、戻ってきた感じだったけど、、、

また、おかしい」

「あおは、もともとは引っ込みじあんだったんだよ」

「あおが??」

「でも、あおの母さんは凄く明るい人だったから、その影響であおも凄く明るくなった。

でも、1人ですべて抱え込む癖はぬけないんだ。

あおは嘘つけないから、抱え込みきれないくらい大きな問題はああしてテンションを変にあげて皆に心配かけないようにする」

「それじゃ、あおはつぶれちゃう」

「俺らはそうならないようにサポートしてやればいいよ」

「、、、俺っ、あおんとこ行ってくる」

「えっ、、、待ってればって行っちゃった」

きいは消えていた。

「あかは熱いな、、、

俺がいなくても、大丈夫かな」


あかが走ってあおに追いつく。

「あおっ!!」

「えっあかっ?どした??」

「あお!無理すんな!

辛いこときちんといえ!」

「大丈夫だよ。

私は大丈夫」

あおは笑っている。

「早く、きいのとこもどろっ!

昼休み終わる~」

「あっ、、、うん」


教室に戻る。

「あっ~もうきい食べ始めてる!!」

「あおも、あかも遅い」

「私もたべよっー」

「おおれもっ!」


あるとき、ドッヂボールを体育の時にやっていると、

ようやくボールをゲットしていざ、投げようとしたらボールを落としてしまった。

まるで指が透けたように

そのボールを何も言わずにあかが拾う。

そして敵チームの子を当てて、周りとハイタッチする。

隣にいる私はスルーする。

(無視、、、?)

「、、、あ、あか」

声をかけても返事がない。

あかの服の端をつまむ。

「あかっっ!!!」

ようやく気づいたように、

「っあ、あおっ!いつの間にこんなとこいたんだよー」

「う、、、うん」

(ずっと、、、いたよ?)

「勝とうな!」

「、、、うん」

結局私は当てられなかった。

でも、私のチームは全員当てられて負けた。

(私は、、、私は?)

何も言えなかった。

帰りは一人で帰る。

忘れられてたわけではなく、私が2人に言ったのだ。

最近は、忘れられ方がひどくなっている。

しかも、今日のあの手がすけてボールが落ちた感覚、、、

(私は、私はいったいどうなる)

はっと車が近いてくる音がして横を見ると横断歩道を渡っている私に車が近づいてくる。

「あおっ!!」

きいの声が聞こえた気がしたが怖くて、その場ですくんでしまった。

そして、意識が途切れた。


あおの身体は意識が途切れた瞬間、違う者があおの身体を占領して横断歩道から退いた。

危機一髪ひかれなかったが、周りにそれなりに人はいたが誰も引かれそうなことに気づかない。

引きかけた車でさえ、、、

(ここまできてるのか)

「あおっーーー」

(走ってくるのはたしか、、、きいと呼んでたやつか?

おいっ起きろ!!

ちっ、意識完全に失ってる)

「あおっ!大丈夫か??」

「あぁ、、、」

「んっ?あお?」

「なに?」

不思議そうにのぞきこんでくる。

「誰だ?あおじゃないだろ」

「ななに言ってるんだ、の?あおいだよ」

「悪魔にでも取りつかれたか?

おいっあおいだせ」

あおの胸倉をつかむ。

「離せっ!あおいだっていってんだろ!」

「なんかわかんないけど、絶対違う」

レイが入ったあおはきいを突き飛ばして、きいから離れるように走る。

「おいっまて!!」

家に飛び込む。

「はぁ、はぁ、、、なんなんだあいつ

こいつも意識戻ってないし」

ごろっとレイは横たわる。

(、、、疲れたな、でもなんでわかったんだ)

起きると夜中で、

「んんっ????

えっ私、怪我してない?

ここどこ、、、病院??

死んだ?」

「死んでもないし、怪我もしてない」

「なんで??」

「僕が乗り換えた」

「なんで??」

「なんでって乗り換えられたから」

「なんで?」

「だから!」

「なんで助けちゃったの?」

「、、、。」

「もう生きてたくない。

ねぇ、、、私は最後、どうなるの?」

「誰にも認識されなくなって、誰もの記憶から消えて、体も透明になって完全な消滅をする」

「、、、あの運転手も、通行人も私のことみえてなかった。

消えるんだ、、、私」

すっーとあおの頬に涙がつたう。


あれからずっと起きていたが無言で気が付けば朝になってる。

「あさごはんつくらなきゃ」


「いってきます」

フラフラの足取りで学校に向かう。

教室に入ると誰にも声をかけられずに席に着く。

いつも自分にかけられる「おはよう」も突発的なあかの声もなにもない。

(私、、、)

「おはよう」

うしろからきいの声がする。

振り返るときいが立っている。

まるで、この世界にきいと私しかいない気がした。

「なに泣いてるの?あおいちゃん」

「泣いてないよ、何、あおいちゃんって

保育園児じゃないよ」

きいの手が私に触れて涙をぬぐってくれる。

「はぁ、、、よかったあおだ」

きいの頭が私の肩にのる。

「どうしたの?いつだって私はあおだよ?」

「うん」

扉ががっーとあいてあかが入ってくる。

「はぁはぁ」

ゼイゼイいってこっちに近づいてくる。

「うぁー遅刻するかと思っ、、、っ??

きいなにしてんの?」

驚くあかにきいがデコピンをする。

「なんだよっ!」

「遅刻すればおもしろかったのにーハハハ」

「なんだそれっ

なんだよ、こいつ

なっ!あお!!おはよう!」

「お、おはよう!」

「なんだよ!あおもおかしい」

「えっーふつうにおはよういったんじゃん」

「しーらねっ」


こんな朝の当たり前な光景が今の私にとって遠くにしか感じられなかった。


「ねぇー今日プリクラ取りに行かない??」

「なんで?」

「なんとなく」

「あおが女だっー」

「いいじゃんってかあたしもとから女だし!!」


放課後

「いっくよー!あたし真ん中!!」

「割り込みだー」

この2人が私が今、ここにいるってことを証明してくれる。

今、私はここにいる。


「いくよー!

はい、チーズ!!」


「何?この顔」

「俺のキメ顔ー」

「ちがう、きいのあくび」

「あ、眠かった」

「なにー、それっ!」

「まじかっ!きいすげー」

「こんなとこで眠くなるやついねーよっ」

あかは大笑いで、きいは別にーって顔している。

「きい、眠くなんないでよ!」

私は怒ったふりしてぶーぶーいう。


失ってばっかりの私にとって2人と過ごす時間は今の私にとって何よりも尊くて、失いたくなかった。


「すげー!」

1人の男性が私たちの前でクレーンゲームで大きなぬいぐるみを取っている。

「あか、得意だっけ?」

「んー、、、おれっ!やりたい!!」

そういって今、目の前で男性が獲得したクレーンゲームと同じクレーンゲームで挑戦しだす。

いいところまでいくがクレーンが上がった衝撃で落ちてしまう。

「あっーーーーーーーっもう!」

「あか、何回目?」

「さぁ、、、金使いすぎだろ。

あんだけ、金欠っていってたくせに」

店員さんも何度か角度を変えて取りやすいようにしてくれている。

「あっーもう!これが最後の1回っ!」

「あーか帰るよー

さっきからずっと言ってるよー」

「あとちょっとなんだよー!」

きいがため息をつく。

「あかちょっと変われ」

「きいまでー?」

きいは変わったとたん、手慣れた様子であかが狙っていたものを取る。

『えっーーーーーーーーー』

「ほらっ!

あおにあげるわー」

あかにゲットしたぬいぐるみをバフンと顔にあてて、あおに渡す。

「なに、なに??これってありですかーーーーー?」

「ありがと

きい、得意だったんだ?」

「いや、あかのみてたらできそうだったから」

「腹立つー」

あかはぶーぶーいって、そのあと自分が使った金額に愕然として、嘆いていた。

その光景をみて、私は笑って、きいはばーかと笑っている。


分かれ道で2人と別れる。

送られていくほどの距離でもないし、すぐ家がある。

でも、2人と別れて一人ぼっちの帰り道はいつにもまして寂しくて、寂しくて、長かった。

楽しくて、笑った分だけ辛い。


ベッドにつく途端、倒れこむようにして寝てしまった。

最近は過去の記憶の夢ばかりで、今日は幸せな夢を見れそうな気がする。


朝、身体が重く感じた。

最近、ちょっとしたことで体が疲れる。

「いってきまーす」


最近、ちょっと早めに学校についてしまう。

それは教室に入ったときの空気が怖いせいかもしれない。

自分を認識していないという空気。

早く来る教室は、人が少なくて、静かだ。

席に座ってちょっとするときいがやってきて、あかはきいと一緒に来たり、ギリギリに来る。

今日はきいだけのようだ。

「おはよー」

「おはよー」

「っ九条!!」

飛び込んできたのは、長谷川だ。

「なあ、なあ今日、放課後サッカーやらね?」

「急になんだよ?」

「紅汰もさそってさ~」

きいは私の顔を見る。

「あおもくるか?」

「そう、そうあおもってあお、、、?」

長谷川は私を見て、

「あれっ、、、誰だっけ??」

「っ?何言ってんだ??長谷川!?」

きいはあきれた顔をして長谷川をこつく

「こいつ、成宮葵だぞ?寝不足??」

「悪い、、、全然でてこねー

んっまいいや、成宮もやるかサッカー??」

「、、、あたしいいよ。

今日は純ちゃんと帰る約束してあるんだー」

「そう、、、悪いな!

九条こいよっ!」

長谷川はそういって自分の席に戻っていった。

「なんなんだ、あいつは?」

「さ、さぁ、、、ははは」

いぶかしげに私を見るきい。

純ちゃんが来たので私は純ちゃんの席に駆け寄った。

「おはよー、純ちゃん!」

純ちゃんは私の声が聞こえてないみたいに反応がない。

(っあ、、、)

「純ちゃん、純ちゃん、純ちゃん!!!」

全く反応がない。

(声が、、、私の声が届かない!!)

泣きそうになって純ちゃんの服を引っ張ると、

「えっあっ!葵、おはよーって何泣きそうなのよっ??」

「じゅじゅ、んちゃん」

「ん?なに、どーした??」

「えへへ、なーんにもないよ、目にゴミが入って、ドッキリできそうだなーって」

「なんだそれ」

「今日一緒に帰ろうよ!きいたちサッカーやってくんだって」

「あれ?3人じゃなくて??」

「長谷川に奪われたー」

「あらら、なら、久しぶりに帰るかー」

「うん!」


その日の体育のとき

男女別の持久走だった。

走るのが得意な私は最初は先頭集団にいたが、どんどん遅くなっていった。

(あっやばい)

気づいた時には足がもつれてそのまま転んで、意識を失った。

そのあと、きいはあわてて駆け寄ってきた。

今日はあかは風邪で学校を休んでいた。

きいはそのまま私をお姫様抱っこして保健室まで運んでくれた。


きいは目覚めたあおに問いかける。

「あおっ大丈夫か??」

「あぁ、、、」

「あお?

っまた、違うやつか!!」

「、、、また、おまえか」

「俺の質問にいい加減答えろ、悪魔っ!!

おまえはいったいなんなんだ」

きいはかっかしている。

いつものきいらしくない。

「おまえ、ほんとにしつこいな

あと、僕は悪魔じゃない」

「じゃあなんなんだよっ」

「、、、流れ星」

「、、、なんだよ、それっ」

「成宮葵と契約した流れ星」

「あおがおかしくなったのはおまえのせいか?」

「僕じゃない、契約のせいであり、成宮葵個人の問題であり、最近彼女の周りで起こった問題のせい」

「なんだよ契約って」

「彼女が小さいころ、成宮葵の母親を助けることと成宮葵の存在を交換したんだ」

「、、、あおの存在を交換?」

「成宮葵は誰の記憶にも存在せずに消える」

「なんだよそれ。

そもそもおまえが流れ星ってところから信じらんねーよっ!!」

「おまえもおかしいと気づいてんじゃないの?

成宮葵の周りの友人らが彼女を忘れていくのを。

今日でも長谷川が成宮葵を忘れていた。

純という子も彼女の声が聞こえなかった」

「それは、、、単なる偶然で」

「長谷川は結局成宮葵を思い出すことはなかった」

「、、、まるで、全て見ていたように話すんだな」

「まぁ、彼女の中にいるものなんで」

「どうやったらとめられる?、どうやったらあおを助けられる??」

「救える方法なんてないよ」

「っ!!!!!」

きいが葵の胸倉をつかむ。

「忘れんな、今、中身は僕でも身体は成宮葵だ」

「っ!!」

「おまえがなんとかしたくても、これは成宮葵自身が決めたことだ。

おまえにはなんにもできない。

幸い、おまえの記憶にも成宮葵という存在は消える」

「っなめたこといってんじゃねー!!!

おまえ、あおの気持ち考えたことあんのかよ!

そんだけ四六時中一緒にいて、知ろうとしたりしたことねーのかよ!!」

「僕は彼女の契約者。

僕と彼女のつながりはそんだけのものだ」

(僕になにをしろっていうんだこいつは、、、)

「でてけ!あおからでてけっ!!

いますぐに!!!」

そういってきいはでていった。

再び戻ってきたときには、意識はいつものあおだった。

きいは私と一緒に帰った。

純ちゃんは待っていなかったし、あかは学校を珍しく休んだし、きいは私を1人で帰らせるなんてできなかった。

「きい、きい、きいっ!!」

「えっあっどうした??」

「よかった、、、さっきからぼーっとしすぎ」

私は心底安心した。

「ごめん、なんの話だった?」

「、、、ナイショっ!」

「なんだよ!それっー」

「きいが聞いてないのが悪い!」

「悪いって!」

「きい、謝ればいいとか思ってるでしょ??」

「思ってないって」

「いまから、あかん家行こう!あかが風邪なんて珍しいし」

「今日倒れた人に見舞われたくないでしょ」

「きい、それ内緒にしておいて、お願い!!」

「だったら帰ればいいのに」

「いこいこ!!後ろのせて!」

「二人乗り、捕まりたくないんだけど、、、」

行く途中にあかの好きな肉まんとピザまんをコンビニで買っていった。


あかの家について元気そうなあかに会ってちょっとおじゃまして帰った。

「あかっ明日はズル休みするなよ、課題はその日休んでも次の日提出になるだけなんだからな」

「だから、ズル休みじゃねっーて!」

「そんなに元気な風邪はいないって」

「あおまで、、、」

「とにかく、明日来るんだよ!」

「おう!」

「んじゃ、明日~」

「2人もサンキューな」

帰りも私はきいの後ろに乗せてもらう。

「よかったね、あかが元気で」

「あかが風邪ひくってとこがおかしい」

「あかが風邪って珍しすぎる

だから、余計心配になるんだよねー」

「ちょっとは自分のことにもおきかえてもらえるといいんだけど、、、」

「なんだって?」

「なんにもー」

「あっ私こっちだから

乗せてくれてありがと!

また明日」

「あ、、お、あおっ」

きいは急に私の腕をつかんだ。

「いえまで送るよ」

「すぐそこじゃん!

大丈夫だよ。

それより、早く帰って寝なよ?

寝不足じゃないの??」

「う、、、ん」

「今日はありがとっ!

ばいばい」

「うん、、、また、また明日な」

「うん、また明日」

きいは私に背を向けて自転車をこぎだす。

きいがふと振り向くとあおの背中が見える。

いつもよりも小さく見えた。


家に帰ってあのあおのなかにいる星の子の言葉が頭から離れない。

自分の机にあるのはボストンのパンフレットやボストンの学校の資料。

英語の勉強に関する教材。

あおの母親が亡くなってから出発の日にちを伸ばし続けている。

昔からの夢だった留学。

ようやく親を説得できた。

でも、今じゃなきゃだめってわけじゃ、、、

「、、、なんで今なんだよっ」

(できるだけあおのそばにいたい

いてやりたいんじゃなくて、俺がいたい。

あお、そんなにお母さんのこと大事だったのか?

自分と引き換えするくらい、

あお、おまえはどれだけ辛い思いしたんだ?

なんで俺は)

「なんもしてやれねーんだよっ!!!!」


「きっぃ!」

バシンッ

きいの父親がきいの頬をたたく音が響く。

朝、あかがきいの家を訪れた時だった。

「いい加減にしろっ!

我儘ばっかりいいおって」

父親は凄く切れているのか声がどんどんでかくなる。

「留学したいといってたいたくせに急に留学をやめるって?

おまえはなにがしたいんだ。

自分が決めたことくらい守れ」

急に扉があいてきいがでてくる。

「っあ」

「た、立ち聞きするわけじゃなかったんだけど、、、」

「悪いな、朝から変な話聞かせて」

2人で自転車こぎながら学校に向かう。

「偶然でも聞いちゃったから、この際つっこんでいい?」

「あ、ああ」

「留学ってほんとに??」

「いや、もう辞めたから留学しない」

「それって、」

「気が変わった、そんなけ」

きいは気まぐれで動くタイプじゃない。

(きっと、、、あおの為)

変な空気のまま、教室につく。

「あお、おはよー」

「きい、おはよー

あかもおはよー」

「っおおう!おはよー」

「今日はぎりぎりじゃないんだね」

「まーな」

(なんかあったかな?)


お昼、きいは委員会の仕事でいなかった。

あかとあおの2人で珍しく食べていると、あおが急に聞く。

「なんかあった?」

「えっ、だだれと?」

「きいとだよ」

「、、、」

「あかは嘘下手だけど、きいも嘘上手そうで、下手だからわかる。

ってかこんなに近くにいて気づかないほど私鈍くないと思うんだけど?」

「何、俺は完全に嘘下手認定されてんの?」

「えっ?下手でしょー?

んで、何があった?

言いたくないんだったらいいけど、2人がそんなんじゃ狂う」

「おまえには言われたくないんだけど、、、、」

「なんだって??」

「なんにも、別にあいつに口止めされたわけじゃないけど、、、」

あおはあかが話し出すのを待っている。

でも、その空間に強制力はなく、ただ待っているという穏やかな時が流れる。

「、、今朝、玄関であいつの父親とあいつがけんかしてる声が聞こえた。

あいつが急に留学やめるっていうけんか」

「留学、、、」

「あいつがいうには、もう留学やめたから関係ないって。

あいつが自分の言うこと守んないってらしくないよな」

「留学、きいの夢だったんだよ。

小さいころからの」

「聞いたことなかった」

「きい、将来は海外で働きたいって通訳者になりたいっていってたんだ。

だめだ、あきらめちゃ、、、

たとえ、今、留学行かないって決めたとしても、絶対あとで後悔する」

「うん。

あいつが決めたこと守んないって絶対後悔するよ」

「、、、私のせいだ。

諦めるっていいだしたの。

ほんとにきいは馬鹿で馬鹿で優しいな、、、」

「きいはあおのことほんとに大事に思ってるよ?」

「私だけじゃなくてあかのこともだよ!

話してくれて、ありがと」

「うん、どうする?

あいつんとこいく?」

「もちろん!行こっ!」

2人で走り出そうとした瞬間、

「えっ」

あおは激しく転んだ。

「あ、、、お?」

「だ、大丈夫、、、」

「あお?あお、あおどこ??

えっ今ここにいたはずなのに、、、」

「あー、あか、私はここにいるよ

ここに、、、!!!!!」

あかにはあおが見えていない。

あかの袖を掴もうとしたら、手がすり抜けて触れない。

進んでいく、あかを追いかけようと立とうとしてもたてない。

「なんで、なんでなんで

立って!たってよっ!!立て立て立て立て立て立て立て立て立て立て立て立て立て、立って!!!」

「あーお?あおー??」

「い、いや」

涙がこぼれる。

(あかの中からも消えるの嫌だよ)

「はっ」

(レイがいる)

「れ、、、れいっ!助けて」

(、、、君自身で動かせない身体を僕が動かせない)

「なんで?乗換とかして、、、」

(君の体力の限界だ)

「レイはいつだって無理だって諦めるけど、あたしは諦めたくないの

だから、だから、、、試しでもいいから変わって、、、

お願い」

レイにこの思いが届かなくてもいいから、ただ、この身体が動けばいい

鉄の格子でしばられてしまったようなこの身体が、、、


一瞬気を失いかけて、意識がレイへと切り替わる。

レイは身体を動かそうとする。

だが、なかなか動かない。

(れ、、、い)

動けというあおの思いがレイに痛いほど伝わる。

(こんなの僕らしくない、、、、

僕らしい??

僕は流れ星で、もともとなんにも一瞬で消える命だったのに

君の願いで生かされている

成宮葵、、、凄いな

動いて、、、あの子のために動きたい、、、な)

脚が動く。

「あっ」

(立てたっ!)

フラフラの脚であかを追いかけて、あかの袖の端を掴む。

「えっ?あ、、、あ、、お」

あかの顔を見上げる。

追いついたと思った矢先に倒れた。

「おいっ!おいっあお」

薄れゆく意識の中であかがあおを呼ぶ声が聞こえる。

ここであかは不思議な体験をする。

抱き上げたはずのあおの体重は異常に軽くて、まるで空気を抱き上げているようだった。

「えっ、、、」

でも、重さに驚いている場合ではなく急いで運ばなくちゃと気持ちが焦った。

保健室に入っていったが先生はいなくて、あおをベッドにおくと先生を探しに行く。

途中できいに会ってあおが倒れたこと、重さが異常だったこと、保健室にいることを伝えると、きいは何にも言わず、あかの腕をもってそのまま保健室に駆けた。

「あおっ!」

そこには少し透明感のあるあおが横たわっていた。

その場の状況が理解できていないあかにあおは流れ星から聞いた話を伝える。

最初は『流れ星』という単語を理解していなかったが、あおの状況、きいが話すということを踏まえ事実だと理解したが、受け入れられなかった。

「その流れ星がいるならでてこいよっ!!」

「あかっ、、、」

「だって、、、なんであおばっかりこんな目に合うんだ?」

ふと、3人で撮ったプリクラを取り出してみる。

すると、あおだけが薄れている。

「きいっ、、、」

きいにプリクラを渡す。

きいもはっとしている。

あかはあおの手を取って、なんでなんでと自分の頭をこすり付ける。


夕方になって、あおが目を覚ました。

「ここ、、、」

あおは横を見ると、あかときいがいた。

「2人ともいてくれたんだ、、、」

あおは上みて、私また倒れちゃったんだなーとつぶやく。

「あお、大丈夫そう?」

きいはいたって変わらないように接する。

あかはそっぽを向いたままあおを見ない。

そんなあかにあおはおもいっきり頭をぶつける。

「いったー」

自分の頭をあかが抱える。

「前にどこのどいつが暗い顔すんじゃねーとか言ったんだっけ?」

「それは、、、」

あかは口をとがらせる。

「あっ!!」

急に思い出したようにきいを指さす。

「きいっ!!」

「ん?」

「なに、留学やめようとしてるのよっ!!!!!!!」

「ん、、、なんであおが知ってん、、、あかっ!」

「ご、ごめん!

でも、どうせばれるだろ」

「私に隠すなっ!」

「別に関係ないだろ?」

「関係なくない!」

あおはきいにデコピンする

「あおのデコピン痛いんだって!」

「私に隠した罰!

きい、留学いって!」

「もう、いいんだって」

「私がよくない」

「俺が行くか、行かないか決める。

あおに決められることじゃない」

「、、、知ってるもん。

きいがずっと必死に英語勉強してて、ようやくきいのお父さんから許可もらえたんでしょ」

きいはうつむく。

「あたしの為とかやめてよ。

それはただきいが言い訳したいだけ」

(あおのそばにいたいことが言い訳?)

「おいっ、あお」

「あかとめないで、

きい、きいは自分の夢を見失っちゃだめ。

まだ、挑戦してる途中じゃん。

きいなら大丈夫!」

顔をあげると、笑った顔のあお。

「きい、俺のこと忘れてない?

あおは一人ぼっちじゃない。

俺がそばにいる」

「、、、っうるさいな

あかだから心配!」

「なんだよっ!それ」

「別に、やめようって考えたのはあおの為じゃない。

あかがヘボすぎて心配だったんだよ。

テストとか!」

「心配してくれなくても大丈夫だしー」

「んあーどいつもこいつも行け、行けって、、、」

(かなわないな、、、)

「俺、行ってくる。

いまさら、寂しいとか辞めてとかいっても辞めないからな」

「言わないよー」

あおが笑いながら言う。

「あおじゃなくてあーかっ」

「はー??俺??」

「冗談!あお立てるか?」

「うん!もう、大丈夫!」

さっきよりはフラフラがなくなっている。

でも、着実に薄くなっている。

それに気づかぬふりしてあかときいは歩き出す。

3人で帰る道はいつもよりもとってもとっても短かかった。


2日後

「決まった、1週間後に発つ」

「はえーな」

「さすが、きいだね。

準備、早い」

「もともとは直前まで準備できてたしな」

「お見送りは盛大がいい?

弾幕とか??」

「いらんわっ」

その日のHRできいは1週間後留学に発つことが皆に報告された。

その日のうちの授業中に「九条紀伊君お別れ会」の出席表が回ってきた。

あおはクラスの子に見えていないかのようにとばされてしまった。

あとで出席表を確認すると、自分の名前がなくなっていた。

(ここまできたんだね、レイ

あと1週間もつかな、、、)

「わからない」

(お別れ会行きたいなー)

「、、、いってやれば、喜ぶと思う」

(えっ、、、どうした??レイ)

「別に、、、」

僕らしいとは何かを考えた日からレイは少しづつ変わっていた。

(私がいっても結局変わんないか、

行こっかなー)

「なんていうか、かわってるな」

(流れ星に言われるとは)

「ふつう、行っても変わらないなら怖くていけないとかじゃないのか?」

(私は気軽に行けると思うけど)

「辛い思いするとか?」

(もう、辛い思いならしてきた。

辛い思いはもう十分。

他の人は辛い思いが少ないから繊細なだけで、私にとって、いてもいないのが変わらないなんて辛いことじゃない)

「ひねくれたな」

(まぁーねっ

もう、私、欲張らない、きいとあかが覚えててくれればそれだけでいいよ)

「十分我儘じゃね?」

(それくらい願いたい)


名簿にあおの名前がないことに2人は気づいて、先生にあおのいないところで抗議したが先生の中に完全に成宮葵はいなかった。

他の生徒も同様だった。


出発の前日

「あおー海いこっ?」

「うん!」

「俺の後ろ乗れば?」

「きいっ!」

あおに見えないところできいはあかにべーとした。

「くそーっ!」

あかはきいのあとを勢いよく追いついて、追い抜かす。

「あおっしっかり捕まってろよ!」

「う、うん」

ほんとは捕まられている感覚も、あおを載せている感覚なんてないけど、きいは努めていつも通りにふるまう。

「あかっ!スピード出すとあぶねーぞ」

そういってきいはあかを抜かす。

きいの後ろに乗っているはずのあおの姿が時々見えなくなることがあるけど、予測を兼ねて話しかける。

周りにへんなやつだと思われてもいいんだ。

「きーい!あおが落ちるぞ~」

「うそっ」

「少しは騙されろー」

「あっーもうすぐ着く!」


砂浜をかけて、水を掛け合って、季節は冬だというのに馬鹿みたいに遊びまくった。

堤防に3人で腰掛けて、2人分しかない影。

「さむっー」

「明日、風邪ひきたくないなー」

「見送り、風邪でいけないとか最悪」

「あかは寝坊だろ?」

「そんな日に寝坊なんて」

「あったよね?修学旅行」

「春の遠足」

「ときどきやらかすよねー」

「俺いなくてほんと大丈夫??」

「だ大丈夫!あおいるしー」

「私にばっかり頼らないでよー」

「振られた」

「何それっー」

「だっさっ」

「ねぇ、きいってあっち?」

あおは海の向こうを指さす。

その向きは夕日が沈もうとしている太陽の位置。

そしてきいがこれから住む町。

「うん」

あおはあかに笑う。

「だったら近いじゃん!」

「、、、?そこは遠いいじゃなくて?」

「だって指でさせるんだよ?近いじゃん!

それに同じ地球で、連絡取ろうと思ったら取れるんだし、近いよ!」

「ははは」

きいは笑いだす。

「確かになー、連絡待ってるわ」

「まぁ、、、近いか!」

「うん!」

「俺さー、この信号機になれてよかったー」

「なに急に??」

「転校してきたばっかりの俺のこと一番に受け入れてくれたじゃん」

「そうだっけ?」

「そうなんだって!

しかも、はじめの一言が『ようやく赤がそろった』だろ?

笑った、初めてだった、『あか』なんて呼ばれたの。

俺、ちょっとこの紅って漢字好きじゃなかったからさ」

「紅、いいじゃん」

「女子はいいかもしれないけど、男だよ。

化粧品売り場とか、もう大っ嫌いだったよ。

でも、『あか』ってあだ名はこの漢字のおかげだから今は気に入ってるし、感謝してる」

「そんなにかー?」

「おぅ!

『こう』でも沢山漢字あるのにあえてこれにした親すげーわ」

「確かに、あかが紅だったから『あか』ってあだ名になったけど、あかは『紅』じゃなくても私たちと友達になってたよ?」

「あお、それじゃあ紅に感謝してるあかがかわいそうなんだけど、、、」

「だって紅だけに感謝じゃあなんかいやじゃない?

そんな簡単なつながりじゃないよ!私たち!!

だって私、あかのいない今なんて考えられないもん。

出会うのは、運命、必然!!」

「運命って同じじゃねー?

でも、紅だけに感謝とかはされたくないなー」

「きい、あおっ!!!!大好き!!」

あかはすっごく嬉しそうに笑った。

もしかしたらどこかであおときいの幼馴染に劣等感をいだいていたのかもしれない。

きいは照れたように笑った。

3人はまたくだらない話をして、いつの間にか真っ暗になっていた。

帰るときは、2人ともあおを家まで送ってくれた。

「きい、あかまたね」

「あお、また!」

「またなーあお」

この「また」がなぜかいつもよりもずっとずっと寂しくて、特別なもののように3人は感じた。

手を振るあおを2人とも何度も振り返りたかったが一度でも振り返ってしまったら引き留められそうで、後ろ向きに手を振るのがやっとだった。


家について、完全に認識されなくなった祖父の目を盗んで部屋にはいった。

もともと自分の部屋は母親の部屋で、特にあおのために買い揃えたものはなかった。

あったとしても透けてしまっている。

あおと同時にそれらも消える。

だから、触れられる。

ベッドに横たわって目をつむる。

寝るのは怖い、このままもう起きることがなく、消えてしまうかもしれないから。

でも、今日はいい。

あかときいの笑った顔を思い出す。

それと同時にいままでの思い出が蘇る。

あかときいとの思い出。

ケンカをしたこともいっぱいあった、分裂する危機になるくらい大きなケンカはあれが最初で最後だったけど、まあいい思い出だ。

信号機がそろえば、何かが始まる。

私の過去に2人のいない場所はない。

2人がいるから私がいたんだ。

私の大事な大事な人。

今、消えたって大丈夫だよ、あの笑顔を見たから。

理不尽な人生に怒ったりもした。

でも、全て受け入れて、分かってくれる人が私にはいた。

ありがとう

何回言ってもたりない。

だいすきだよ

言葉じゃ表せられないくらい大切で尊い存在。

きい、あか

「ありがとう」

「またね」

あおの頬に一筋の涙が流れる。

それと同時にあおは消えた。


あおが消えたとき何かを感じたように2人は急に起きた。

それと同時に急いで窓から外を見る。

きれいな空に星がきらりと光って落ちた。

そしてなにかを感じたように崩れ落ちて、大声で泣いた。

みっともないくらい泣いた。


出発の朝

見送りに来たあか

見送られるきい

「きい、いってらっしゃい」

「あか、いってくる」

『またな』


幼いあおがつぶやく。

「レイ、一人ぼっちはもうやだよ」

「大丈夫だよ、君はもう一人ぼっちじゃない」


最後まで読んでいただきありがとうございます。

初めての作品で読みにくかったかもしれませんが、楽しんでもらえたら幸いです。

また、どこかで出会いましたらお願いします。

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