春は始まり
初めまして
道野子子子です。初投稿になります。
つまらないものですが読んでいただけたら幸いです。
季節は春
世界の3つの大陸の1つフルニール大陸。龍の神話が伝承として残るこの大陸にも春が来る。
龍の神話の伝承では伝承の始まりの季節が春に多い。それはフルニールの人々にとって、春に様々な始まりがあることを意味し、出世や商売、冒険に結婚その他たくさんのことをするきっかけである。そして春から数多の物語が走り出してきた。
それは龍の神話に記され始めてから二千年の季節を重ねたこの春にも変わりない。
マントをとばすような春先の強い風が吹き、マントを掴む手に力を入れる。歩いている隣を馬車が通って行く。脇を花が咲く木々が茂る王都への街道。至るところから生命の胎動が聞こえてくるような空気。そのなかをサーイスは歩いていた。
「懐かしいな。前、来たのが四年前だっけ。」
目に広がる薄いピンクの花が咲く森の光景がそんな呟きをもたらす。懐かしむその呟きは、風に溶け込み自然の胎動と晴れた空に消えていく。
森が開け堅牢な壁に囲まれた王都の門が見えてくる。門のそばには長い行列ができている。冬明けの商売のためにと商人達が大部分のようで個人で来ている者もいればキャラバンを組んでいる者もある。それ以外にも、王都の学校に入学すると思われる自分よりも少し若いくらいの少年達、厳つい傭兵の集団、その他諸々の理由の人々がいた。その列はまだ門から離れたサーイスのところから見て驚くほど続いている。
ざっと400mくらいである。
森から行列の最後尾まで歩くとサーイスは商人達の話し声を耳にする。
「今年もこの行列だなあ。あと3日来るのがずれてればこれに遭わなかったのによう。」
「ハハハ、その通りだわな。それに今年は人が多いぞ。たぶん、昼過ぎまでかかるんじゃないか?」
サーイスは一瞬考えると、列には並ばずそのまま、城門を目指した。
城門まで残り半分程になったとき、サーイスは突然話しかけられる。声のした方向を見ると商人と思われる男がいた。
「少年、ちょっといいか?」
「なんですか?」
話しかけてきた男は30才くらいの力強い雰囲気を持っていた。
「良いからちょっとこっち来いよ。早く!」
しかし、そんな雰囲気とは裏腹に小さな声で周りを気にしながらサーイスを呼んでいる。サーイスは一瞬躊躇ったが何か合点がいったようでその男に歩み寄る。
「ありがたいぜ。俺はダスティ、商人だ。」
「サーイスだ。あんたの予想どうりクージャの一族の、な。」
「おう、じゃあ、俺も一緒に城門まで行かせてくれないか?」
「構わない。」
サーイスとダスティはその後、ダスティの馬車で城門まで行った。今、この行列の原因となっているのは城門で行われている検問である。春になると王都は様々なところから来た人達でにぎわうのだが、多すぎるである。王都に入るには検問が必要なので、手が回らなくなって行列を作っているのは想像に難くない。
しかし、その検問を優先的に行ってもらえる人々がいる。主には、貴族や王城の役人だが、クージャの一族の人間も免除される。
クージャの一族とは、ガルベンタルに伝えられたある一族である。そして、彼らの役目は竜騎士になる竜騎士候補生に竜のいろはを教えることである。竜騎士の儀と呼ばれる儀式である。竜騎士は竜と共にフルニール大陸の平和を守る者達のことだ。その恩恵はおおきく、それに比例してクージャの一族も竜騎士と同じように敬われる。そのなかで、彼らの普段の生活では、色々な配慮がされる。つまり、この検問の優先もその配慮のひとつなのである。ダスティがサーイスに一緒に行くのを頼んだのは、その恩恵を受ける為だった。
「止まれ!」
城門まで来るとそこにいた兵士が声を張る。サーイスはダスティにアイコンタクトで自分が話しをすると伝えると馬車から降りる。そして、近づいてきた兵士に荷物の中から、何かの印が刻まれた薄い鱗を見せる。
「クージャのサーイスです。今年の竜騎士の儀の為に来ました。」
「・・・はっ!確認しました。どうぞ、お通りください。」
兵士はその鱗を確認してから横によけ道を空ける。しかし、サーイスは進まず兵士に言う。
「あの商人に連れて頂きました。今から並びなおすのは大変だと思いますので、彼の検問もお願いします。」
あることないことをしれっと話す。それを見ていたダスティは心の中で苦笑する。そんな2人の心中とは裏腹に、兵士はなんの疑いを持つことなくダスティの検問を済ませる。こちらの検問にはしばらく、時間がかかった。身分や出身、目的を確認し必要な手続きをするとそれが普通なのだが、クージャに行われる検問はそれらが省略と言っていいほど簡略化されており口答で言ったことを確認しクージャであることの確証がされればいいのである。これもクージャの特権のひとつである。
「助かったぜ。まだ若そうだから竜騎士の儀を気いつけな。」
「気を付けるさ。まあ、クージャは簡単には死なないけどな。」
簡単には死なないと言っても言われである。
「それもそうだな。ところで、この後はどこに行くんだ。」
「成上りの庭だ。」
「ちょうどいい、検問の恩だ。送るぜ。」
「なら、頼もう。」
サーイスが再びダスティの馬車に乗り込む。馬車は王都の街に消えていった。
書くのって難しい。納得のいく文章になりません。これから上手くなっていきたいものです…
次回はストックがないのでいつになるかは、すみません。なるべく近日中を目指します。