ふつかめ 1
二日目の朝は最悪だった。
と言うよりまだ鶏すらおねんねしているような夜中だった。
部屋の外から異臭がする。この生臭さは死んだ魚かなにかだろう。猫達が食い物を争って喧嘩しているらしい声もする。
そしてなぜか遠くの方から敬珀さんが私を大声で呼ぶ声も聞こえてくる。
とにかく急いで着替えて外に出ると、余りの煩さと鼻をつく臭気に一瞬気が遠のくのを感じた。
「香那沙くん‼これを早くどうにかしたまえ‼困るんだよ、お嬢様達の事は君に任せてあるんだからね?しっかりしてくれたまえ!じゃあ、後は頼むよ」
「はぁ」
こうして私の記念すべき朝は顔も知らぬ「誰か」からの嫌がらせの後始末から始まった。
「失礼します。どなたかお嬢様達がどちらにいらっしゃるかご存知ありませんか?」
私が厨房に入った瞬間に喧騒が一気に鎮まり、質問を始める前にはまた元の喧騒が戻ってきた。
(これはアレか。いわゆる「ハブられる」というやつか。なんか新鮮。)
呑気にそんなことを考えながら聞き込みを諦め、屋敷を散策する事にした。
この屋敷の庭は四つの区画に分けられており、それぞれ一つの季節の植物を固めて植えている。
そのうちの一つ、今はもう季節外れになっている冬の庭に来た時、人の話し声が耳に入ってきた。
「ねーぇ、歌李、茉姫。今度のはどの位やれると思う?私一月ね」
「確かに、聞いた話のままなら一月保ったら上々って感じだがな。歌李、お前はどう思う」
「さぁ、良く分からないわ。ただ噂話そのままでは無いと思うわ」
猛烈な春一番に木々が揺れる。風で出来た木々の間の向こう側の露台に、遠くでもはっきりわかる程、真っ直ぐに私を射抜く目があった。
ほんの一瞬の交錯、直ぐに木々が視界を遮ってしまった。
「盗み聞きは良くありませんわ。新しい世話役さん?こちらに来たら?」
からかう様な口振りで私を呼んだ。
何かが変わる予感がした。
二日目はもうちょっと続きます。




