人気者令息の幼馴染の令嬢が呼び出された話
人気者令息の幼馴染の令嬢が、呼び出させれて牽制されるお話です。あっさりと終わります。
「マーレード嬢、ちょっと良いかしら?」
「…はい。」
貴族学園の生徒、リア・マーレード子爵令嬢は学園でも美女として名高く、成績優秀なナタリア・ゴーウェイ侯爵令嬢に呼び出された。人気ない裏庭でリアとナタリア、そしてナタリアの取り巻きである令嬢が3人居る。
「マーレード嬢、単刀直入に言うわ。レオナルド様から離れて頂戴。」
レオナルドはリアの幼馴染であるレオナルド・プリオ侯爵令息の事だ。レオナルドは眉目秀麗、才色兼備な令息で学園の人気者だ。リアはそんな彼と幼馴染であり、家柄も外見もレオナルドには及ばないのに誰よりも近い繋がりがあった。そんなリアを良く思わず、嫉妬して嫌がらせをしてくる令嬢は数多くいた。
「幼馴染だからと言って、貴女みたいな人が付き纏って良い方ではないのよ。」
そんな中でもリアを直接呼び出したのはナタリアが初めてだった。ナタリアの取り巻き達もナタリアの言葉に同意し、リアを批難した。
「全くですわ。」
「プリオ令息に相応しいのはナタリア様ですわ!」
「身の程を弁えたらどうなのかしら?」
取り巻き達の言葉にナタリアも満足そうにしながらリアを見下す。
「…何故、私がレオナルド様の傍に居るのは駄目なのですか?」
リアの質問にナタリアは一瞬固まるが、すぐにリアを睨み付けた。
「そんなの、貴女が彼に相応しくないからよ。彼に釣り合う家柄でも容姿でもないじゃない。」
「でも、傍にいるだけなら構いませんよね? 私は別に恋人ではないのですよ?」
「っ、そんなのは当たり前よ! 私は貴女が彼の傍にいる事で品位が下がる事が容認出来ないのよ! 彼にはもっと相応しい女性が傍にいるべきよ。それなのに、貴女がいたら邪魔じゃないのよ!」
「…つまり、レオナルド様の為に言っているのですね? レオナルド様の品位の為に。」
「そうよ、ようやく理解出来たのね?」
ナタリアは機嫌良さそうに頷き、取り巻き達も嫌な笑みを浮かべながらリアを見た。
「では、その事をゴーウェイ侯爵令嬢から直接レオナルド様に伝えて下さい。」
「…はぁ?!」
しかしリアの言葉にナタリアも取り巻きも笑顔を消して真顔になった。
「そういう事は私ではなく、レオナルド様本人に伝えるべきです。レオナルド様の為ならば、私もレオナルド様から離れる事を考えます。」
「あ、貴女馬鹿なの!? そんな事出来る訳ないじゃないっ!!」
ナタリアはリアを怒鳴る。リアはきょとん、とした顔をした。
「何故ですか? レオナルド様は自分の為を思って考えて下さる言葉を無下にする方ではありません。ゴーウェイ令嬢達もご存知ですよね?」
「そんな事は知ってるわよ! そうではなくて…それは。」
「レオナルド様には言えない、疚しい提案をしている自覚があるのですよね?」
口籠るナタリアに、リアは真顔で冷たく言い放った。リアの雰囲気が変わり、ナタリア達は固まった。
「ゴーウェイ令嬢はレオナルド様の為ではなく、自分の為に言ったのですよね? 私がレオナルド様の傍にいるのが気に入らないから…他の令嬢達と同じです。」
「…あ、貴女っ。」
「レオナルド様はとーっても素敵なお方です! 私はレオナルド様の幸せを何よりも一番に考えております! 私はレオナルド様のパートナーにはレオナルド様の事を何よりも考え行動出来る、彼に相応しい容姿と能力を兼ね備えた令嬢であって欲しいと願っております! ゴーウェイ令嬢はとても美しいですし、成績も優秀でおられます。そして、私を呼び出すという行動力に期待しました!」
目をキラキラと光らせ満面の笑みで語るリアに、ナタリア達は呆然とした。
「…でも、結局貴女様は他の令嬢達と変わらない。自分がレオナルド様の傍に居たいから私が邪魔。それだけしか考えられなかった。本当にレオナルド様の為を思うなら彼に直接話せる筈なのに…がっかりです。」
「っ、な、何ですって…!」
リアの言葉にナタリアは怒る。自分より何もかも劣る令嬢からの侮辱に耐えられないのだろう。
「あぁ、もしかしてレオナルド様が美しすぎて直接お話しするのが恥ずかしいのですか? それならば私からお話ししますわ! 良いですよね?」
「っ!?」
リアの思わぬ提案にナタリアは戸惑ってしまう。
「…そ、そんなのナタリア様が言ったという証拠はありませんわ!!」
「証拠? いや、ゴーウェイ令嬢も皆様も言ったと言えば良いですよね?」
「はぁっ! 言うわけないでしょう!?」
何を馬鹿なことを言うのだと、取り巻き達が慌てたようにリアに反論した。そんな取り巻き達の様子にリアは再び真顔になった。
「やっぱり、レオナルド様に知られたくないのですね。知られなくないような疚しい事を言ったと言う事ですよね?」
リアの言葉に誰も反論出来なかった。
「…残念ですが証拠ならあります。私のブレスレットには録音機能があるのですよ。」
リアが左手の制服の袖をめくると、ピンクの宝石が付いた可愛らしくも上品なブレスレットが現れた。
「…はぁ?! ろ、録音機能?」
「う、嘘吐かないでよ!!」
録音機器は存在するが知られているのはもっと大きな機械だ。今の技術でそんなブレスレットなんかに仕込める筈はない。
「信じるも信じないもご自由に。では、私はこれからレオナルド様とお話ししてきます。失礼しますわ。」
リアはそう言うとお辞儀をして背を向ける。
「っ、待ちなさいっ!!」
ナタリアはリアの左手を掴み、ブレスレットを奪おうとする。
「っ!、な、にをするのですか!?」
リアは抵抗するがナタリアは離れない。そして取り巻き達もナタリアに加勢し、ナタリアはブレスレットを掴むと無理やり取り上げた。
「っ、きゃあああああ、誰かぁ〜!!!」
「!? な、なによっ!!」
するとリアがナタリア達の耳を劈くような叫び声を上げた。ナタリア達は思わず耳を塞ぎ驚いていると、
「…お、おいどうした…っ!?」
リアの叫び声を聞いたらしく、校舎の中にいた教師や生徒達が数人やって来た。
「リアッ! どうしたんだい?!」
その中にはレオナルドも居た。ナタリア達は冷や汗をかき、どうしようか考え始める。
「ゴ、ゴーウェイ令嬢達が…。」
「そ、その、マーレード嬢がナタリア様のブレスレットを無理やり奪おうとしたのですっ!!」
リアの言葉を遮り、取り巻きの1人が声を上げた。ナタリアはその言葉にはっとし、冷静さを取り戻した。
「…はい。私のブレスレットを奪おうとされたので、その、少し暴力を振るってしまいました。ですが、悪気があった訳では…。」
何故リアとこの場にいるのか、ブレスレットを奪おうとしたのは何故かなんて理由はどうにでもなる。ナタリアの方がリアよりも権力はあるし、取り巻き達と口裏を合わせればリアを悪者にするなんて難しくないと、ナタリアは内心笑みを浮かべた。
「待ってくれ。そのブレスレット…俺がリアにプレゼントした物だ。」
しかし、レオナルドの言葉にナタリアの笑みは消え失せた。
「え、その…み、見間違いではないですか…?」
「そのブレスレットはオーダーメイドで作って貰ったんだ。一週間前のリアの誕生日に俺が渡した。だから、間違いない。」
ナタリアと取り巻き達の顔が蒼白になる。ナタリアの手に握られているブレスレットは、無理やり奪ったせいで変に曲がっている。
「…ごめんなさい、レオナルド様。」
リアのか細い謝罪の声が響く。レオナルドはナタリアを睨み付けた。
「…どういう事かな、ゴーウェイ侯爵令嬢。」
「えっ…あ、その…。」
想い人であるレオナルドからの冷たい視線と、周りからの疑惑の目線。今後どうなるのかという不安からナタリアは崩れ落ちた。取り巻き達も同様に蒼白になりながら何も言えずに突っ立ったままだった。
◇◆◇
その後、ナタリアと取り巻き達はレオナルドの為を想ってやった事だと言ったそうだ。けれどレオナルドにとってリアは大切な幼馴染だ。そんな幼馴染を傷付けた事を許せる筈がない。そして、レオナルドの為と言って勝手な事を2度とするなとナタリアに強く言ったらしい。ナタリアはレオナルドから拒絶されてショックを受けてしまい無気力になったそうだ。今回の件はリアを気に入らないと思っている令嬢達ですら、ナタリアの行動を批難した。そしてリアに危害を加えればレオナルドの怒りを買うと認識させる出来事となった。ナタリアや取り巻き達は学園で距離を置かれて腫れ物扱いになっており、肩身の狭い思いをしている。
「リア、平気かい?」
「はい、私は大丈夫ですよ。でも、本当にごめんなさい。ブレスレットが…。」
「そんな物、またプレゼントするさ。」
レオナルドの言葉にリアは嬉しそうに微笑んだ。
リアにとってレオナルドはただの幼馴染ではなく崇拝対象だ。リアはレオナルドの恋人に、伴侶になりたいだなんて欠片も思っていない。高貴で美しく格好良いレオナルドに相応しい女性が現れることを心から願っている。勿論レオナルドの意志が一番大事だし、プリオ侯爵が認めた相手でなければならないのは理解しているので、あくまでもリアの趣味の範囲で相手を見極めているに過ぎない。
ナタリアはレオナルドに相応しくない。そう思ったリアはブレスレットに録音機能があると嘘を吐いた。あんな場面でなければ信用しなかったと思うが、自分の疚しい行いが暴露されるという不安感から咄嗟に信じると予想出来た。レオナルドがくれた大切なブレスレットが駄目になったのは本当に心苦しいが、レオナルドに相応しくないのに近づこうとする害虫…いや、令嬢を退ける為には仕方なかった。
「いつか必ず、レオナルド様に相応しい方が現れますからね!」
「ん? リア、何の話だ。」
「いえ、何でもありません。」
リアは大切な幼馴染に微笑んだ。
録音機器なんてこの時代にあるの? という意見もあると思いますがお見逃しください! 今回の主人公は幼馴染を崇拝するタイプでした。自分が隣に立ちたいのではなく、隣に立つに相応しい人を査定するという人物です。主人公を全く相手にしないか、よくいるヒロインのような人の悪口も言わず悪いこともしない善良な性格なら認められるかもしれません 笑
何時も私の小説を読んで下さる皆様の中で誤字脱字報告をして下さる方々がおります。本当にありがとうございます!
ここまで読んで下さりありがとうございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです(*^^*)




