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第2話 オッサン、あんた尊敬するよ……

 

 オッサンって高床健って言うんだ。

 配信者って、仮の名前を使うけど明らかに本名だよな、これ……。


 たぶん自分が配信してることすら忘れてしまっている可能性すらある。普通に立ちションしたり、なにか爆発したのかと勘違いしそうな馬鹿デカい音の屁をぶっ放したりしている。


 オッサンの配信を見はじめて2日目。同接の視聴者数はあいかわらず3人しかいない。


 まあそうだろうな。

 こんなオッサンのチャンネル見るくらいなら可愛い子がダンジョン内でダンスしている配信見るのが健全だろうよ。


 だが、俺は違う!


 コメント欄に誰も書き込みもいいねもしない。しかし、オッサンの配信チャンネルのホームに行くとフォロワーが3人いる。たぶん俺を含めて今視聴している3人だと思う。他のふたりも感じているはずだ。オッサンはきっとなにか凄いことをやってくれる……そう信じて今日も視聴を続ける。


 こんなに変態チックなオッサンはこれまで見たことがない。視聴者に受けようと狙ってやっているわけでもなく素でやっているのが、また凄いところだ。


 ダンジョンは通常、スポンサーがついていることが多い。その場合、配信中にCMが入ったりするが、このチャンネルにはスポンサーのロゴもなければCMも挟んでこない。オッサンがどこか大手ギルドに加盟しているならギルド名が表示されるがそれもない。つまりオッサンが単独で所有しているということになる。


 それにしてもオッサン、さっきからなにやってんだろ?

 巨大な穴を覗き込んでいる。

 真っ暗でなにも見えないのに見ても無意味なはずだが、顔はなにやら真剣だ。


 あっ、足を踏み外した。

 配信用の空飛ぶドローンカメラもオッサンを追いかけて穴の中に飛び込むが、ライトを点けていても、暗くて状況がまったくわからない。


 画面が真っ暗になって数十秒。

 ようやく明るくなったかと思えば、ド派手に水柱が上がり、ドローンカメラはかろうじて水面ギリギリでホバリングして水中に落ちずに済んだ。


 いや、死んだんじゃね?

 数十秒も落ちたら、水中に落ちたとしてもコンクリートに叩きつけられるほど威力ってありそうなんだけど?


 と思ったら生きてる。

 マジか?


 オッサンが無事だったのは、飼い慣らしたスライム……スイトーを使ったのだと思うが、どうやったのかは、ドローンカメラが追いつかなかったのでよくわからない。どちらにせよ、かなり役に立つ(スライム)だということはわかった。


 平泳ぎで顔を出したまま、岸に向かって泳ぐ姿はガマガエルそのもの。


 湖岸にたどり着いたオッサンは、犬のように頭を振って髪の毛の水分を飛ばし、乾かしている。


「ブモッ?」


 ──あっ。

 今度こそ終わった。


 ダンジョンの湖岸の先に広がるのはオークの集落。オッサンに気づいて、何匹かやってきた。


 手には石槍。ちなみにオッサンは先ほどのダイブでモアイ像の置物を落しちゃったらしく手になにも持っていない。


 オークの身長は平均でだいたい180センチくらいかな? お腹は出ているが、筋肉質な体。一方、オッサンの方はぶよぶよで微笑ましいボディをしている。


「ブモ……ブモブモッ!」

「よろしく頼む」


 なん、だと?

 オークがオッサンを近くでチェックした結果、まさかの仲間と思われたようだ。オッサンと熱く抱擁を交わし、オークたちと一緒に集落へと入っていった。


 それにしてもオッサン、何層くらい下に落ちたんだろうな?

 もう、地上に戻れないんじゃないか。


 配信者の身が危険だと感じたら視聴者が通報ボタンを押せる仕組みになっている。イタズラの通報防止に視聴者の半分以上が通報すると、オッサンが所有しているダンジョンに有償でレスキュー部隊が派遣されるが、これがまたバカ高い。低階層でも数十万は取られるので、かなり深い層に落ちたであろうオッサンのレスキューは下手(へた)したら数百万はかかるかもしれない。


 でもオッサン、個人でダンジョン所有するくらいだから金持ってんだよね?

 通報しといた。


 せっかく視聴しているのに惨劇を見るのは忍びない。まあ、俺以外の視聴者ふたりの内、どちらかが同じように通報してくれたら済む話なので簡単、のはずだった……。


 え、レスキューモードにならないけど?


 他のふたりの内、ひとりでいいから通報すればいいのに……見殺しにする気か?


 そう思っていたら、誰かが、わざわざ課金してオッサンにアイテムを送った。届いた箱をオッサンが開くと、まさかの日本酒が入っていた。


 オッサンとオーク達はその日本酒で酒宴をはじめた。なるほど、手土産を持参するのはモンスターの世界でも常識なのか。


 当然、日本酒一升では全然足りなかったものの、オーク達からも酒らしきものが振る舞われ、宴は大いに盛り上がった後、全員、そこいらの地面に転がっている。


「酒はいいものだな……イヤなことを全部忘れさせてくれる」


 オッサン。

 アンタまた死亡フラグを踏んじまったな……。


 ひとりで酒と自分のセリフに酔いしれるなんて、死亡フラグ以外の何物でもないんだが?


 でも、ひとつ言っておく。

 オッサン、あんたパンツ姿のままだからな?


 どんなにカッコいいセリフを吐こうが見た目とギャップがありすぎて、胸に響かない。


「キシシッ!」


 それでもフラグが立った?

 寝静まっているオークの集落の外れから真っ赤な瞳が、闇夜に一つ、二つと増えていく。


『ゴトッ!』


 amanokawaの段ボール箱がオッサンの元に届く。

 他の視聴者がオッサンに武器を与えたのか?


 ──ってそれ、ピコピコハンマーやないかいッ⁉


 大きめのピコピコハンマー。

 叩くとピコピコなるヤツ。

 殴られても全然痛くないオモチャなんだが?


 今、送ったヤツ絶対、オッサンをおもちゃにしてるよな。


 オッサンはピコピコハンマーを取り出し、両手に握る。──いや、それで戦うんかーい⁉


「クシャァァァァッ!」


 かがり火の光が届くところまで侵入してきたので姿を捉えた。


 無数のゴブリン。

 手には石や棍棒と、あまり殺傷能力は高くない武器を所持している。

 だがそれでも何度も殴打されたら人は死んでしまう。


「ピコッ、ピコピコピコピコピコッ!」


 オッサン意外と身のこなしが素早いんだよね。

 ゴブリン3匹相手に後ろに逃げながらピコピコ叩いている。

 ほら、無理だし。

 相手はちょっと痛いくらいで、ぜんぜん倒せる威力ではない。


「ブゴブゴォォォォオオ!」


 オッサンの叩くピコピコ音で他のオーク達が目を覚ました。

 そうかオッサンこれを狙ってピコピコしていたのか⁉


 ──いや違うな。

 まじめにそのハンマーで倒そうと思ってたんだ。

 ピコピコハンマーが使えないとわかると、ゴブリンの棍棒を奪おうとしている。


 だがオッサンのお陰で、起きたオーク達の手によって、多くのゴブリンが倒された。

 仮にオッサンがピコピコしていなかったら、オーク達は寝首を掻かれてやばいことになっていたかもしれない。


「プモプモ」

「むむっ!」


 オーク達は感謝し、集落の中からオークの娘を差し出した。

 雄の方は豚面だが、雌の方は人間の姿に豚耳と尻尾が生えているだけで、残りは人間と見た目が変わらない。


 オッサンは寝屋の一つを提供された。

 そしてずいぶんと長い時間、そのオークの娘と行為をおっぱじめた。


「ぴっピギィィィ!」


 絶頂の声が響く。

 まあ画面上はモザイクがいっぱいかかってて、あんまわからないんだけどね……。











【ご連絡】

 本作を読んでくださり、ありがとうございます。

 2話までのお試し版いかがだったでしょうか?

 同時にお試し版を3作品投稿しており、もっとも好評を得た作品を正式に長編として書いていきたいと思いますので、本作の続きが気になる。オッサンの活躍をもっと見たい! など思ってくださいましたら作品フォローや☆評価をお願いします。


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