旅路[2]
やばい!!
俺は一か八かで自分の首にむかってフリーズレイを放つ。
俺の首とゼノスの刃があともう少しでくっつきそうというところで固定された。
今度こそ決めてやる。
範囲攻撃の魔法を使えばさっきみたいに逃げることはできないはずだ。
「大雷鳴!!」
当たったはずだったが、今回は数m先に息を切らしたゼノスがいた。
「今回のはちぃっとびびったぜ…」
首元を見ると、首元の氷から剣がすっぽり抜けていた。
正面に移動したところを見て確信がついた。
こいつは瞬間転移の使い手だ。
瞬間転移ってのは実は結構マイナーな魔法だ。
詠唱が要らず、魔力消費も少ないため、そもそも使ったこと自体がバレにくい。
その上自身の体をそのまま転移できる。
だから、さっきみたいな範囲系の魔法にも対応できるってわけだ
だから今まで誰にもこの仕組みに気づかれずに、賞金首まで上り詰めたわけか。
しかし、仕組みがわかったからには対策させてもらう。
「禁忌 精神の鎖」
この魔法は、与える行動禁止によって消費魔力が多くなる。
さらに、もう一つ消費魔力が増える要因があることがわかった。
相手の単純な戦闘能力だ。
相手が強ければ強いほど、「抵抗」という力が強くなり、消費魔力がさらに増える。
しかし、これを打開する方法を俺は数年の間に編み出していた。
仕組みはまだわかっていないが、お互いに同じ行動禁止をかけることによって消費魔力が大幅に抑えられることがわかったのだ。
今回の行動禁止は魔法禁止。お互い魔法を使わずに剣だけの勝負だ。
ゼノスは魔法が出なくて戸惑っている。
この隙に攻撃する。
え、攻撃ってどこを攻撃すればいいんだ?
首か?殺してしまって大丈夫なのか?
俺は葛藤する。
少なくとも俺の人生の中で人を殺したことはない。
まじの殺し合いをしたのもこれが初めてだ。
俺の動きが止まった瞬間。ゼノスはそれを見逃さず攻撃を仕掛けてきた。
首筋に攻撃が来て、間一髪のところで避ける
首の薄皮に切先が走る。
そのときようやく気づいた。
この世界は、負けたら死ぬんだ。
ここは殺し合いの世界。
半端な覚悟で旅なんかに出ちゃだめだ
だからこそ、今ここでこいつを殺す。
今現在、こいつとの間合いは中位の位置にある。
俺にとって、一番有利な間合い
相手は俺に二連撃目を繰り出そうと剣を振り上げている最中
相手の腹はガラ空きだ。
俺の刀が、相手の腹に走っていく。
この瞬間。俺は初めて人を殺した。




