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メイドさん[1]


〜7歳の頃〜


俺はセリーアとリリナと一緒に街を歩いていた。

俺は街に出るのは初めてだから、2人が付き添ってくれたのだ。


俺に色々教えてくれるのだろう。

と思っていたが…


「カイル様!カイル様!あっちでなんか劇のようなものをやってますよ!」


「カイル様!リリナはあっちが見たいです!」


「・・・」


俺は2人のメイドに引っ張られながら1日を過ごした。

いろんなものを食べたり、買ったり、

なんだか兄になった気分だ。


俺はちょっと気になってた本があったけど…

また次の機会でいいか。

2人がこんなに楽しんでるんだし、気にせずに行こう。


そして数時間後。

そろそろ日が暮れてきたので帰ることにした。


リリナは疲れて寝ており、セリーナがおんぶしている。

まあ、リリナは普段の仕事の疲労もあるのだろう。

今日の1日で発散できたのならうれしい限りだ。


「もう、リリナったらはしゃぎすぎなのよね。」


「セリーナも人のこと言えないくらいはしゃいでましたけどね。」


セリーナはというと…

正直、リリナの数倍はっちゃけてた。

久しぶりに年相応のセリーナの笑顔を見た気がする。


「ちょ、ちょっと!私の方が一応年上なんですから!子供扱いしないでください!」


そんな他愛のない会話をしながら、少し暗い路地に入る。

路地に入ると、泣きながら俯いている少年を見かけた。


放っておくわけにもいかないと思い、俺は声をかけた。

すると、少年は泣きながら答える。


「……っ、さ、さっき、俺の、俺の妹を!!

 お、男たちが奪っていったんだっ…」


「その男たちはどこに?」


俺がそういうと、男の子は南の方角に指をさした。


「セリーナ、行きましょう。早くしないと手遅れになるかもしれません!」


「一応、お父様たちに確認をとった方がいいと思うのだけれど…」


「一回家に帰ってたら遅くなります!とにかく急ぎましょう!!

 リリナも起こしてください!!」


そうして、俺とセリーナとリリナで少年が指を刺した方向に向かった。

俺は魔力探知の魔法を展開しながら移動する。

相手は人を1人を抱えて移動してるんだからそう遠くに入ってないはずだ


「カイル様〜リリナ、起きてすぐに走らされて、状況が読み込めないのですが〜」


「ある少年の妹が数人の男に攫われたらしいです。

 もしかしたら奴隷商人の類かもしれません。

 魔力探知で大まかな位置は把握できているので、急いで向かっています。」


走っていると、数名の集団の魔力反応がある暗い建物についた。

小さい少女の魔力反応もある。ここで間違いないだろう。


「セリーナ、リリナ、剣を構えといてください。

 敵がいつ出て来るか分かりません。」


2人はこくりとうなづくと素直に剣を構えてくれた。

俺たちは恐る恐る建物の窓を覗こうとする。

その瞬間——


「ワンッ!ワンッ!!ワンッ!!!」


犬が吠えた。

犬の鳴き声に気づいた男たちが俺らの存在に気づく。


「おい!誰だ!!!」


しまった。

人間の方に魔力探知を込めすぎて他の動物に対する魔力探知を怠っていた。


「2人とも、戦闘体制に入ります。

 2人は基本的に自分の身を守ることを第一に考えてください。」


建物から男たちが出てきた。

1、2、3……8人だ。


「ガキども、何しにここに来た。

 まあ、目的がどうであれ、

 ここに来たからには、そのままお家に帰らせるわけにはいかない。」


そういって6人の男たちは剣を持って俺たちに向かってくる。

残りの2人は魔法の詠唱を始める。

剣の持ち方を見たところ…中級レベルといったところだな。

魔法使いの方も、魔力の集まり方からして中級レベルだ。

大丈夫、問題ない。


俺は6人を潜り抜けて魔法使いの方へ一直線に向かった。

移動を制限するような魔法を使われたら厄介なため、最初に潰すことにした。


[大雷鳴ギガブロンディ]!!」


2人を電気ショックで気絶させる。

残りの6人を…と思っていた瞬間、

男たちがセリーナとリリナにナイフを突きつけた。


「おい!動くな!こいつらがどうなってもいいのか?!」


「カイル様〜リリナ捕まっちゃいました〜」


「カイル様!私に構わずこいつらをやっちゃってください!!」


2人を人質に取られてしまった。

なんか、リリナとセリーナで反応が大きく違う…

まあそれは置いといて、


ここから男たちがいるとこまでは結構距離がある。

男たちが反応する前に気絶させるというのは難しいだろう。

ならば…


「お言葉ですが、2人は僕のメイドですので、手出しは禁止とさせて貰います。

 [禁忌 精神アシリダカルディアス]」


この魔法は、行動禁止の状態異常を付与することができる。

俺が今回与えた行動禁止は「2人に手を出してはいけない」

というものだ。


しかし、能力が強力であると同時に、この魔法は反動が大きい。

しかも今回の対象は6人。単純に消費魔力は6倍となる。


今の俺に魔力は少ししか残されていない。

一歩踏み間違えれば足がふらつきそうだ。


しかし、俺は素早く男たちに距離を詰める。

行動禁止の効果が切れたら元も子もないからな。


男たちは俺が近づいてきたことに気づき、リリナたちを攻撃しようとする。

しかし手が動かないから驚いた顔をしている。

相手が混乱している隙に、迷わず魔法を打ち込む。


[大雷鳴ギガブロンディ]!!!」


男達8人を気絶させことに成功した。

しかし、魔法の反動で俺の足がふらつく、今にも倒れそうだ。

すると、2人が泣きながら俺に抱きついてきた。

俺達は地面に倒れ込んだ。


「リリナ、怖かったです〜〜」


「捕まっちゃって申し訳ありませんでした〜〜〜」


「いえいえ、そもそも巻き込んだのは自分の方なので。

 こちらこそすみませんでした。」


そうして、俺は2人の胸の感触を味わった後、家に帰るのであった。





〜セリーナ視点〜





戦闘体制にはいり、男たちに捕まった。


こんなに大勢を相手にするのは初めてだった。

そのせいか、恐怖で足がうまく動かなかった。

こんな私と違って、リリナはちゃんと戦えてた。


だけど、私が限界なのを見て助けようとしたせいで捕まってしまった。

そしてその光景に動揺した私も結局捕まってしまったのだ。


こういう事があった時、

本来は私達がカイル様を守らないといけない場面だ。


メイドというのはのはそういうものなのだ。

メイドは、家事全般をこなすと同時に、雇い主の護衛も仕事の一つに含まれる。

だから、メイドにはある程度の戦闘力が求められるのだ。


私は、上級風舞流剣士としての実力を持っている。

本来であれば、この男達は、勝てて当然の相手なのだ。

しかし、実戦経験が足りなかった。


一歩間違えれば死んでしまう。切られてしまう。

そんな恐怖に、私は打ち勝つことができなかった。


ちょどその時、カイル様が奥の方の魔法使いを一撃で倒した。

こちらに向かおうとした瞬間、

カイル様は私たちが捕まっているのを見て驚いていた。


主人を守るはずのメイドが、なぜか足を引っ張っている。

普通だったら、私たちに構わず攻撃を仕掛けるところだ。


そんなメイドは捨てられるに決まっている。

私はそう思っていた。


しかし、カイル様は私たちのことを自分のメイドだと言ってくれた。

私たちに手を出すなといい、守る姿勢まで見せてくれた。

その後、カイル様は男達に魔法を発動した。


おそらく、行動禁止系の状態異常を付与する魔法だ。

状態異常を付与する魔法は王級からしかないはず、

状態異常の中でも、行動禁止というのは最上位種だ。


カイル様が使っている 大雷鳴ギガブロンディも普通に消費魔力は多い。

それを、王級レベルの魔法を実質6回分使った後に迷いもなく使用。


魔力不足で死に至ってもおかしくないくらいの消費魔力だ。

それなのに、こんな私たちのために命の危険を犯して戦ってくれた。


カイル様と話しているといつも感じる。

心が私たちよりずいぶん大人なのだ。


普通の子供というのはこんな場面に出くわした時点で泣き叫ぶだろう。

当然のことだ。子供なのだから。

そういう時のためにカイル様を助けるのが私たちだ。


しかし、カイル様は違った。

冷静に判断し、冷静に動いていた。

そして、結局私たちが助けられている状態になっていた。


よくよく考えれば少し異常な子だった。


7歳という歳で王級魔法を使いこなしているし、

剣術だって全流派で上級まで上り詰めている。


私も嫉妬してしまうほどの才能だ。

私はカイル様より二倍くらい生きているのに私の方が劣っている。

それなのに、私たちに分け隔てなく接してくれる謙虚さも持ち合わせている。


そして最近、カイル様と距離が近くなると、胸の高まりが止まらない。

主従関係にこのような感情を持ち込んでいけないのはわかっている。


多分、リリナも同じ感情をカイル様に抱いてる。

顔を見たらわかる。あれは恋する乙女の顔だ.

私も年相応の女児、いつ我慢の限界を迎えるかわからない。


カイル様の役に立ちたいとは思うが、私はカイル様より弱い。

だから他の面でカイル様をサポートできたら嬉しいと思っている。


そして、もしも許されるなら………………






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