流転[5]
〜一年後〜
エリスに魔法を教わり、魔法の方は王級までたどり着くことができた。
エリスにはもう何も教えることはないと言われた。
剣術の方も各流派で上級まで辿り着けた。
しかしカインには勝てない。
はっきりいうと、カインはかなり強い方だ。
前も言ったが、平均が中級。
元冒険者のカインやエリスから聞いてたのだが、
すごい人で上級くらいのレベルらしい。
王級の位に入ってるカインがかなり強いとわかる。
まあそんなカインに現在7歳の俺が勝つなんてことが無謀なんだと思うが
俺はあのカインに一撃入れてドヤりたい。
メイドさん2人はちゃんと元気だ。
相変わらずお風呂にも一緒に入ってくれている
最近はリリナともすごく仲が良く、
本物の兄弟のように接してくれている。
そして2人はエリスから魔法を習い始めたらしい。
エリスも俺に教えることがなくなって暇なのだろう。
そして俺は最近物足りなさを感じる。
まあ、今まで物足りなさを感じてなかったわけではないが…
心の穴はぽっかりと空いたままだ。
今の俺に足りないものはなんなのだろう。
俺が求めているものはなんなのだろう。
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それから2年間後。
俺の中で答えが出た。
俺は家族会議を開いた。
そして、カイン、エリス、セリーナ、リリナ、俺の5人が集まった。
「急ですが、僕はこれから世界を旅したいです。」
俺ははっきりと言った。
セリーナとリリナは驚いていたが、カインとエリスは違った。
全てお見通しだぞと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
「お前がそろそろ旅に出たいっていうことなんて俺らはわかってたさ。
最近のお前、なんだか退屈そうだったもんな。
いろんな世界を知りたいと思ったんだろ?」
「私も薄々気づいてたけど…旅は危険よ?
それに、まだカイルは9歳よね?
もう少し、家にいてもいいんじゃない?」
カインは納得してくれそうで、
エリスは引き留めたそうな表情をしている。
セリーナとリリナはというと…
今にも泣きそうな顔をしている。
この2人は、本当に俺とずっと仲良くしてくれていたもんな。
「僕も急にこんなことを言って申し訳ありません。
ですが、先ほどお父様が言ったように、もっと世界を知りたいと思ったんです。
もちろん、定期的に手紙も送りますし、数年ごとには帰って来る予定です。
金銭面は自分でなんとかしますので、迷惑はかけません。
どうか、旅の許可をお願いします。」
俺は頭を下げた。
少し沈黙が広がった後、カインが声を上げた。
「明日の朝、お互い本気の勝負をする。そこで俺に勝てたら許可を出そう。」
カインの目は本気だ。
「分かりました。では、こちらも容赦なくいかせてもらいます。」
俺はそう言って寝室へ向かう。
セリーナとリリナがカインと何かを話していた。
2人には急に言って申し訳なかったな。
旅に行く前にしっかりと別れを告げよう。
そう思って俺は眠りについた。




