旅路[13]
俺たちが次の国へ向かっていると、道端で出店を構えている老婆が目に留まった。
どうやら、占い屋っぽい。
胡散臭いから、そのまま通り過ぎよう。と思っていると、老婆に声をかけられてしまった。
「待ちな。お前さんからとてつもない運命の力を感じるよ。」
「今、手持ちが少ないので、また別の機会に…」
俺が丁重に断ろうとするのを無視し、リリナとセリーナは老婆の方へ駆け寄った。
「おばあさん予言者なんですか?!私たちのことも予言してください!」
「手持ちが少ないというのは大嘘なので、予言をお願いします!」
内心めんどくさいなと思ったが、この2人の反応を見た俺はふと思った。
俺が住んでた世界では、予言とかそういうのは当然ながら胡散臭い印象があった。
何しろ根拠がないからな。
しかし、ここは異世界、魔法だってある。
予言を信じてみるのも悪くないかもしれない。
俺も予言を受けてみることにした。
俺たちが老婆の元へ駆け寄ると、老婆は懐から水晶を取り出し、それっぽいことをし始めた。
「まずそこのお嬢ちゃんから、うーん、あんたは、この世の命運を握ることになるね。あんたの決断が、人類の存続、いや、この世界の全ての生物の存続を握るよ。」
セリーナのことだ。なんか、一気に嘘っぽくなったな。
「次はそこのお嬢ちゃん、あんたは、とんでもない子を授かるね。前代未聞な子だよ。しっかりと面倒を見て置かないといけない。」
リリナの子がとんでもない…??お相手さんがちょっとよろしくない人なのかな?
「メインディッシュはあんただよ。あんたは、ここ5年以内に大切なものを失ってしまう。その悲しみに耐えられなかった時、全てが終わってしまう。私に見えるのはここまでだよ。あと、予言は絶対だ。今見えた出来事が揺るぐことはない。それを踏まえた上で生活しな。ちなみに、予言が絶対なだけであって、未来が絶対なわけではない。」
「それはどういうことですか?」
「例えば、あんたが5年以内に大切なものを失うという予言に対し、今の段階で大切なものが一つしかなかったとしよう。そうしたら、失うものはその一つで確定する。しかし、大切なものをこれから増やしていけば何が大切なものに当てはまることになるのかはわからない。」
「おばあさん、その大切なものって、一つですか?それとも二つですか?」
「う〜ん…二つだね。一気に失うわけじゃない。時間差で失うね。二つ目は、失うという表現は少し合ってないかもしれないね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
とりあえず、俺はリリナとセリーナを失わないよう、これから大切なものをたくさん増やしていけばいいのか。
大切なものをみつけていく。
旅らしくていいじゃないか。
そしてその後、代金は当然ながらたっぷりと取られた。




