旅路[11]
2人は高精度の空間認識を使えないため、とりあえず明かりを照らすことにした。
すると、ほぼ同時に仮面の男が暗転魔法を発動。
俺の光源魔法をちょうどピッタリと打ち消せる出力だった。
神業だった。
俺の予備動作だけで、どんな魔法を使おうとしたのか、
どのくらいの出力で使おうとしたのかを事前にわかっていたということだ。
なぜわかったんだ?俺たちの心を読まない限り、できるような技じゃないぞ。
俺はこの場において仮面の男が一番の強敵だと判断し、仮面の男に剣を向けた。
しかし、俺がどうフェイントをかけても、どんな魔法を使おうと、
全てかわされた。
こんな強い相手の攻撃なんだから、当然攻撃面も強いのだろう。
と思ったが、魔法も剣術も普通だった。
強いていうならば、具現化系の魔法が得意といったところか?
土やレンガの壁を作ったりするのが異常に早かった。
逆に言えば、それ以外に何か飛び抜けているものはない。
何かがおかしい。
あんな神業ができるやつなら、もっと出力の高い魔法を出せるはずなのに。
あれ、もしかして…?
その時、俺の頭の中で鍵がはまった。
なるほど。そういうことか。
あいつの全てがわかった。
あいつは、建物を媒介に俺たちの心を読んでいたんだ。
いわば、建物自体が、読心魔法の術式を組み込まれた魔道具になっているようなイメージだ。
俺の魔力探知で探知できるのは、相手が術式を発動した瞬間だ。
あいつは、自分自身が読心魔法を使っているわけではなく、
建物にすでに術式を組み込んでるだけで、現在進行形であいつが読心魔法を使っているわけではない。
魔力探知で探知できなかったのはそのせいだ。
どうだ?仮面さん。俺の予想、ドンピシャだろ?
俺が心の中でそういうと、動きが少し揺らいだ。
この予想で間違い無いだろう。
俺は建物にかけられている術式を詳しく知るために、建物に術式調査魔法をかけた。
どうやら、読心魔法以外に、心音魔法もかけられてた。
喋らずとも、脳内に直接言葉を送り込める魔法のことだな。
なるほど、それがバレないために仮面をかぶってたのか。
そして、侵入者が来たことを建物にいる全員に知らせ、地下に勢力を集めた。
地下に誘導して仕舞えば、簡単に逃げ出すこともできないから、ここに集めたのか。
仕組みさえわかればもう大丈夫だ。
術式解除魔法で建物の術式を全部解除しちゃおう。
「おい!やめろ!!」
仮面の男がそう言ったのを無視して俺は建物にかけられた術式を全て解除した。




