5話 制圧
「…まったく、こんなひよっこたちをいじめて何が楽しいのかしらね。」
「…福慧隊長?!」
「隊長?茂はあの人知ってるの?」
「勿論。あの人が来ればもう安心だ。オレたちはあの子連れて離れるぞ!」
「福慧翠華…どうしてこんなところに……」
頬を冷たい汗か伝う感触を感じる。
こんな感覚、いつ振りだ…?
「どうしてって…いちゃ悪いの?」
「いやー、大問題だね。お前がいてはこちらの目的が果たせないからね。」
息が張り詰めそうなこの緊張感。加えてさっきのガキのせいで身体が思うように動かない。
ここから逃げおおせるには………
「おら!くたばれや!」
ドドドドドッッ!!
僕はなりふり構わず、残りの銃弾を発砲する。
今のうちにこの場から脱出を……
「……私の相手をするのに、"その程度の"武器じゃあ、心許ないわね。」
「マジか……」
くそっ、生身で弾きやがった…
有り得んのかよ、こんな事…!
「さて、捕まる覚悟はできたかしら?五体満足でいたいならこれ以上抵抗しないことをお勧めするけど。」
一歩一歩、ゆっくりと迫る福慧。
「へへ…それで「はいそうですか」と言うようでは悪役は務まら…ふぐっ?!」
「それは残念。じゃあ、少し痛い目見てもらおうかしら。」
「が…っ、はっ…!」
おも…っ……!
何だよコレ…ただの打撃じゃない…!
いき、息が…続かない…
だが……
「くくっ、間一髪ってところか……」
「これは……鏡?」
福慧の眼前には、底なし沼にはまっていくかのように鏡に吸い込まれていく、ゲシュの姿があった。
「させるか!」
即座に鏡を叩き割る福慧。
「ちっ…逃した。」
一歩遅く、ゲシュは鏡の中へと姿を消していた。
そこにはただ、散らばった鏡の破片だけが、夕日を反射してまばゆく輝いている。
「ひとまず、茂たちと合流しましょうか。」
「福慧隊長!さっきはありがとうございます!」
「まったく、情けないわね。NDFの隊員ともあろうものがあんなのにのされちゃうなんて。」
「やっぱり能力の使い方がまだまだね。こりゃあまた私との特訓コースね。」
「げっ!またあれですか……」
茂の背中をバシバシとぶっ叩く福慧さん。あんな勢いで叩いて、背中壊れないのかな…
「っと、話が逸れたわね。」
「それで、連絡にあった被害者2名の容態は?」
「はい、どちらも傷こそありますが重症ではありません。」
「そうか、大事に至らなくて本当に良かった。」
「そしてもう一人、私が感謝しなければならない人がいるわね。」
そういうと、福慧さんは振り向きざまに僕の顔を見る。
「あなたでしょう、さっきの雷は。」
「は、はい…!といっても、自分でもよく分からなかったのですが…」
「ありがとう。あなたがその勇気を出してくれなかったら、私は間に合わなかったかもしれないわ。」
「いえ、とんでもないです…」
「いや、とんでもないことよ。あなたは今、3人の命を救ったの。」
「守るってとても難しいことなのよ。ただ力があればいいってものじゃないからね。」
「しかしあなた、話を聞くに能力に目覚めたのは最近の話かしら?」
「最近というか、ついさっきですね。僕もまさか自分に能力があるなんて知りませんでした…」
「能力を発現したての頃はみんなそんなものよ。どれだけ強い能力だって、使う機会がなければないも同然だからね。」
「…しかし、そうなると異能力部の手続きをしなきゃね。通ってる高校は茂と同じ?」
「高校ですか?確かに茂と同じですけど……そもそも異能力部というのは一体」
「まあまあ、それは入ってみてのお楽しみってやつね!」
「安心しなさい、事務的なことは私がしておくから。あなたは思いっきり青春を楽しみなさい!」
「そういえばあなた、彼女とかいるの?いないなら今のうちに恋愛しておきなさいよ、私みたいな年齢だと結婚なんて「ちょっと、隊長!」」
なにやら恋愛事情について熱弁を振るう福慧さん。僕が戸惑っていると、茂が静止に入る。
「エルは隊員じゃないんですよ。いつものうざ絡みはやめてください。エルがテンパってるじゃないですか?!」
「…あらそう?それは失礼。ついアツくなっちゃったわ。」
「それじゃあおばさんはここら辺で失礼するわ。異能力部の活動頑張ってね~」




