彼誰時に笑顔の君は
「おーいお前ら生きているか?」
「まずメガネ君のドーム解くか…ってあれ?デブがいない?あぁいたいた。あれデブ君ずっと意識あった感じ?てかドーム自分で解いたの?あぁ色々あるのね。おけ。後で話聞かせてよ」
「んー先輩はダメっぽいね。1番面倒くせーな」
「蛍…よくここまで闘った。簡単に治せる部分は今ここでするか」
「そして長谷川…驚いた。4になって2日目でこれは予想外だ」
「さて…よぉ亜人…。相変わらずホラー映画に出てきそうな見た目してんな。ここは痛み分けで終わろうじゃねーか。なんだその顔?話の意味分かってねーな?俺の友達傷つけたぶんお前も同じ思いしてもらうぜ」
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汝、光の如く、空気の如く、水の如く
胎盤が生命の木であるなら、肺は生をめぐる枝とし、葉脈は踊る。生きた証は木紋が残す。
この世界が我を求めるなら我はそれに応える。
オダ家のしきたりに乗っ取り、我、大地讃頌
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「…悪く思うなよ。力を得たばかりの主人公とメンヘラヒロインにはお前みたいなラスボス級はまだ早いんだよ」
「じゃーな、また会おう」
「お前らが地球ひっくり返す前にだよ」
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冷たくもないけど暖かくもない、僕の火照りを冷ましてくれるような心地よい風が吹いていた。
昼寝をしている時に網戸を通して入ってくる世界一気持ちいい風。
あぁずっと続けば良いのに…って願った瞬間、だいたいこういうのは終わる。
「長谷川くん…」
蛍の甘い声が聞こえた。
目を開けると薄黒い空の中に街頭がぼんやりと蛍の顔を照らしていた。
「ほたる…」
身体は倦怠感と痛みで動かすことができなかった。僕は草の上に仰向けになっているようで、ズボンと靴下の隙間を刺す草が少しかゆかった。
「帰ってこれたんだ」
僕はゆっくりため息をついて言った。
「うん…帰ってきたよ。長谷川くん。ありがとう…」
僕は蛍のその言葉に何て返せばいいか分からなかった。あの瞬間の記憶がない。蛍があの子供にやられ、絶体絶命にまで追い込まれた時、僕は何かしようと…あぁダメだ。頭が痛い。
まぁ良い。帰ってこれた。
反省は明日だ。今日は生きていることを喜ぼう。
「もうすっかり夜だね」
僕は蛍に話しかけた。蛍は困ったように笑った。あれ?さっきからずっと僕の視界には蛍がいる。
「ばか。彼は誰時だ。とっとと立て。帰るぞ」
と僕は突然腹を蹴られ、横に一回転した。
僕を蹴ったのは夕根仁だった。
「人の彼女に膝枕されて嬉しかったか?この不純野郎」と、夕根仁は無様に地面に這いつくばる僕に向かって唾を吐くように言った。
その言葉の意味を理解しようとしていたら、頬がどんどんと熱くなっていった。
「え、え?え!?はぁ!?あぁ!」
こうして僕の長い長い1日は、夕根仁の蹴りで幕を閉じた。疲れ切った僕と蛍をよそに、仁はとっても楽しそうなキラキラな笑顔を振りまいていた。




