終わることのない世界をふたりで
「あなたがラビ、さん?」
人違いだったらどうしよう。そんな不安がにじむ表情。脱帽だ。この演技力に、何千回も俺は騙されて来たのか。
『そうだよ。きみが、トモくんかな?』
そう答えるべき場面。ノベルゲームの"探偵"である桜日木陰と、"主人公の幼馴染み"である大伴麟が、初めて現実で出会う転換点。ここから桜日木陰は、ゲームのドラマに関わって行くことになる。
「そうだよ、麟くん」
笑って答えれば、彼は、あれ?と言うように首を傾げた。
「なんで、本名を……どこかで会ったことありましたっけ?」
あくまで初対面の振りを徹底する彼に、さすがだなと感心する。やはり彼は馬鹿ではない。その彼が、初めてやけっぱちの馬鹿をやった相手が、俺で本当に良かった。
「何度も会っているよ。"前回"は、恋人同士にすらなった仲じゃないか」
まだ、きょとん顔を続ける。素晴らしい役者だ。
「"世界は終わらなかった"よ、さあ、責任を取って、麟くん」
「責任、って……と言うか、ラビさん、まさか、覚えて」
やっと崩れた彼の演技に、自然と口角が吊り上がる。
「恋人の責任なのだから、決まっているよね?一生、添い遂げるんだよ」
繰り返しは終わらない。"幼馴染み"と結ばれる。そんな結末をまだ迎えていないから。そんな王道な結末が、きっとこの世界には足りていない。
だが、知ったことか。
世界は延々に繰り返す。みな、十八年間を終えると、すべて忘れて巻き戻る。俺と彼、以外は。
ふたりだけは、記憶を重ねて行ける。巻き戻っても。繰り返しても。
それならばもう、それは繰り返しではない。俺と彼の、ふたりだけの永遠だ。
まだ少年らしさの残る手を取り、柔らかい髪をなでる。
戸惑いと困惑をあらわに、焦った顔でこちらを見上げる顔は、とても愛らしかった。
「末長くよろしくね、麟くん」
拙いお話をお読み頂きありがとうございました
蛇足はここで終了です
実は蛇足の方を先に書いたので
もしかしたら本編がわけわからない感じになっていたのではといまさら……
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました