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真佐江(40)の最後の秘密~闇の力が目覚めてしまったので、こうなったらてっぺん取ってみようと思います。さあ、俺のタマをとりたいヤツからかかってこいや! 返り討ちにしてやんぜ!~  作者: イトウ モリ
1章 真佐江(40)の誰にも言えない秘密~友達をいじめたやつをシメたら、仲間を集めてシマを荒らしに来ました。仕方がないので昔みたいに暴れます~
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真佐江 1-7



【モンスターはそこまで賢くありません。

 仲間意識もありません。本能のままに人間を襲う存在です】


「賢さは関係ねえよ。んなこと言ったら人間だってすげえアホなやつがたくさんいるぜ?

 お前、ギガちゃん夫婦を見てみろよ。奥さんや腹の子供のこと、めっちゃ心配してんじゃん。すげえいい旦那やってんじゃん。

 人間の中にゃ自分のことしか考えらんねえガキみたいな父親もたくさんいるぜ?

 奥さんが育児でてんてこ舞いなのに「オレのメシまだぁ?」とか言っちまうようなガキンチョがウヨウヨとさ。ガキどころか動物以下じゃね?

 つまりさ、人間もモンスターもお互い様ってことだよ、上とか下とか関係ない。生きもんだって以外なーんにも変わんねえよ。

 ……ま、別に、お前にその価値観を押し付ける気はねえし、俺はそう思ってるってだけだから。

 ま、ムカついたら聞き流しといてくれよ」


 天の声はもう何も言わなかった。


 アッシュは滞在時間ギリギリまで粘り、ギガンテス夫婦に挨拶をし、出歩かないように注意すると、異世界から離脱した。


(平和のためのラベリング……か……)


 天の声に伝えた言葉を、真佐江はもう一度頭の中で無意識に繰り返していた。



・・・



 仕事を終え、異世界体験のVIPルームに入ると同時に、いつもの黒魔道士が飲み物を用意してくれる。


「アッシュ様、お待ちしておりました。本日はエスプレッソです」


 頼まなくても、もはやウェルカムドリンクが自動で出てきてしまう。


「お、おう。サンキュな。

 せっかく出してくれたから今回は飲むけど……最近なんか胃の調子が悪いんだわ。

 今度からカフェラテにしてくんない?」


「かしこまりました。淹れ直してきましょうか?」


「いや、いいよ。うまいはうまいし、量少ないからこれはもらう」


 真佐江はデミダスカップに口をつけ、男らしくエスプレッソを飲み干した。

 毎度思うが、そのへんの店よりもここのコーヒーはうまい。

 無料じゃなくて金をとってもいいレベルだと思う。


 空になったデミタスカップを受け取った黒魔道士が、おそるおそる尋ねてきた。


「あの……アッシュ様? 最近よくおいでになっていますが、もし宜しければ月額コースに変更いたしましょうか?」


「え? マジで? まあ……たしかに30分とはいえ、連日だと財布がきついしな……」


「今月すでにお支払いいただいた分を引いて、月額プランに切り替えましょうか?」


「え? いいの? マジで?」


 めちゃくちゃ嬉しい黒魔道士の提案に、真佐江の顔が輝いた。


「はい。アッシュ様には闇の騎士様の魂を解放していただいた御恩がありますから」


「うっそ、いいの? ホントに? じゃあそうしてもらおっかな。

 ……なんかそういやあ、お前のこと、首つかんで脅しちゃったことあったな。悪かったよ」


 真佐江は黒魔道士の頭を当てずっぽうで撫でくり撫でくりする。なにせ黒いズタ袋をかぶっているので、中身の輪郭がよく分からないのである。


「いえ。もう忘れてください。アッシュ様には大変感謝しておりますので」


「お前、いいやつだな。ホント悪かったよ、首とかつかんで握っちゃって。

 じゃ、ちょっといってくるわ。エスプレッソうまかった。ごちそうさん」


 真佐江が黒い玉座に座り、異世界に旅立っていくのを見届けた黒魔導士はポツリとつぶやいた。


 その表情は黒い布に覆われ、うかがい知ることはできない――。


「ええ、本当に……。心の底から感謝しておりますよ……」

 

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