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真佐江(40)の最後の秘密~闇の力が目覚めてしまったので、こうなったらてっぺん取ってみようと思います。さあ、俺のタマをとりたいヤツからかかってこいや! 返り討ちにしてやんぜ!~  作者: イトウ モリ
1章 真佐江(40)の誰にも言えない秘密~友達をいじめたやつをシメたら、仲間を集めてシマを荒らしに来ました。仕方がないので昔みたいに暴れます~
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真佐江 1-6



 モンスター=倒すもの。

 モンスター=倒して経験値&金を得る手段。


 そんな構図が前提で、大体のゲームは始まる。


 そういうルールだから。

 そうしないとクリアできないから。

 なんの疑問も持たずに目の前のモンスターを狩る。


 そうしないと、先に進めない。


 別に特別な恨みはない。

 家族を殺されたとか、家を焼かれたとか、そんな理由もない。


 ただ出会ったから。

 倒さないとレベル上がんないから。金が手に入らないから。経験値が増えないから。


 それだけの理由で目の前の生き物の命を奪う。


 アイテムを奪い、金を奪い、命を奪う。


 若いころにゲームをしていたころは、いちいち余計なことを考えたこともなかった。


 そういうもんだと思って、何も疑うことはなかった。


 でも……。


 ここがゲームの世界ではないと知って。

 別の世界でのリアルだと知って、モンスターだって生き物なのだと知って。


 少し考え方が変わったのかもしれない。


 モンスターだって、人間と同じ、ただの生き物だ。

 モンスターにとって、人間はただの恐ろしい侵略者だ。


【アッシュさまは……まるでモンスターの仲間みたいな言い方をされるんですね。

 まさか、噂通り本当に人間を裏切るおつもりですか? いくらアッシュさまでもそれはやり過ぎだと思います】


「おいおい、声がムキになってるぜ天の声。

 お前って実はまだ若いだろ? そうだな……二十歳前後くらいか? 大人の階段の登り始めってとこだろ? 違うか?」


 天の声からの返事はないが、怒っている気配は何故か伝わってきた。


「悪い悪い。別にバカにしたわけじゃねえんだ。

 ただなんつーか……歳をとるとさ、若いころには見えなかった角度でモノが見えるようになるんだよな。

 ……人間ってさ、必要悪とか仮想敵って言ってさ、自分たちが団結するために、共通の敵って存在がないとダメなんだよな。まとまんねえんだよ」


【共通の敵……ですか?】


「そ。俺たちの世界にはモンスターなんていないから、いちいちいろんな御託(ごたく)や大義名分を並べて用意しなきゃいけないんだよ。

 つまり――……人間同士であいつは敵だの味方だのってラベリングしてさ、仲間意識ってのを芽生えさせないと協力し合えない。つまり平和が維持できないんだよな。バラバラになっちまうの。

 そういうのがまあ、いじめとか……極端な例えだと戦争ってことになったりすんだよな―……きっと」


 学生が社会人になったところでいじめはなくならない。


 歪んだヒエラルキー。いびつな上下関係。


 自分より下の人間がいないと不安でしょうがない人間たちが、自分の安心を得るための生贄を血眼になって探している。


 弱いものいじめというのは、人間の誰しもが持っている(さが)のひとつなのかもしれない。


 ネットの誹謗中傷、失敗や過失に対しての異常な叩き行為……。


 モンスターカスタマー、モンスターペアレント、モンスターペイシェント。

 それを過剰に叩いて正義をきどるYouTuber。


 異世界に行かなくても、現実世界にだってモンスターはあふれている。


 誰もが自分こそ、モンスターを倒す勇者だという幻想の中で仮想敵を倒してレベルアップにいそしんでいる。


 まるで攻撃対象がなければ生きていけない中毒者だ。


 人間という存在は、基本的にどこか攻撃する対象がないと生きていけない野蛮な生き物なのだろう。


【それは……人間同士で争うということですか?】


「そうゆうこと。

 だからモンスターが存在するってのはさ、ここの神様的なやつが人間同士に共食いさせないように、代わりの攻撃対象っていうか、言っちゃ悪いけど……生贄をわざわざ用意させたような感じだよなって、なんかそう思ったわけ。

 そう考えると、もし魔王ってのがいるんだとしたら、そいつはこの世界の仕組みに抵抗するため、自分の仲間を人間たちから守るために戦うわけだから、モンスターたちからしたらヒーローだよなあ。

 もしいたら会ってみてえや。

 んで詫び入れないと。俺が余計なことしてすんませんでしたってさ」

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