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真佐江(40)の最後の秘密~闇の力が目覚めてしまったので、こうなったらてっぺん取ってみようと思います。さあ、俺のタマをとりたいヤツからかかってこいや! 返り討ちにしてやんぜ!~  作者: イトウ モリ
1章 真佐江(40)の誰にも言えない秘密~友達をいじめたやつをシメたら、仲間を集めてシマを荒らしに来ました。仕方がないので昔みたいに暴れます~
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真佐江 1-5



 森の茂みから、ぬっと巨人が姿を現した。


 ギガ奥さんがアッシュに飲み物を持ってきたのである。

 アッシュはあわてて声をひそめ、奥さんへ警告する。


「――あ! おいダメだってば! 体デカいんだから歩き回んなって! すぐに人間に見つかっちまうだろ? 頼むから大人しくしててくれよ、アンタひとりの身体じゃないんだからさ……。

 差し入れなんていいって、気なんて使わな……あ、でもそのお茶うまいから好き。

 ありがと、飲むよ、そこ置いといて。あと早く家に戻れよ、あぶねえから」


 ギガ奥さんはお上品に裂けた口を手のひらで隠しながら微笑むと、のしのしと巣穴に帰って行った。


 アッシュはギガ奥さんの大きな背中を見送ると、持ってきてもらった黒いお茶を飲んだ。


 飲み物が注がれているのはとても硬い殻だ。

 くるみの殻を大きくしてお椀にしたら、似たような感じになるのかもしれない。


 中に入っている黒い液体は、この森で採れる何かの木の実を絞った汁らしい。この辺のモンスターたちの間では人気の飲み物なのだそうだ。


 味としてはコーヒーに似ていて、アッシュもちょっと気に入っていた。


 すごく固い木の実なのだが、ギガちゃんの強靭な握力でギューッと握りつぶすと、実の汁が抽出されるのである。ちなみにアッシュの握力では汁1滴絞り出せなかった。……少し悔しかったりする。


 アッシュは男らしく黒い茶を一気に飲み干すと、器を適当に放り、再度辺りの気配を探った。


 さすがに根こそぎふっ飛ばした甲斐もあり、探索している人間は今のところ近くにはいないようだ。


 少しだけ緊張を解く。


 アッシュはふと思い出し、天の声に話しかけてみた。


「なあ天の声、聞こえる? この世界ってさ、魔王的なやつっていないの?」


 前回のラスボスはただのナンパ師だったし、その前のラスボスも元・光の騎士だった。よく考えたら人間ばかりと戦っている気がする。


 本来こういうゲームだと、ラスボスは魔王と相場が決まっているのに。


 まだアッシュは魔王の魔の字すら耳にしていない。


【魔王……ですか? そうですね、モンスターは基本、実力主義な生き物なので、強いものに従う習性があります。

 絶対的な強さを持つ存在がいればひれ伏すと思いますし、その対象がきっとアッシュさまの言う魔王という存在なのでしょう。

 ただ……いまのところ、そのように突出した存在がモンスターたちの中で出現したというのは……】


「ふーん、いないのか。

 じゃあ特にここのモンスターたちっていうのは、誰かの命令で人間を根絶やしにしろとか、そういう指令は受けてるわけじゃないんだな?」


【そうですね、基本は本能です。目の前に現れた外敵を排除しようという単純な反応しか、モンスターたちはできません】


「ふーん、なるほどね。

 じゃあこの世界で人間とモンスターが敵同士って設定なのは、ただ単に自分のテリトリーの奪い合いっつーか、小競り合いみたいなレベルってことか」


 天の声がむっとした声で言い返してきた。


【……そういう言い方をされますけど、人間にとってモンスターが生活圏内に現れるというのは恐ろしいことなのですよ。

 程度とかレベルとか、そんな言い方は不謹慎ではありませんか?】


 珍しく感情的な反応の天の声に、アッシュは思わず小さく吹き出した。


「そりゃお互いさまってやつさ。モンスターだって、いきなり出会った人間に襲ってこられたら、ビビるし怖いし、やべえから先に潰しとこうって思うんじゃねえの?

 俺の世界じゃ『卵が先か、鶏が先か』って言葉があんだけど、こっちじゃなんて言うんだろうな?」


 アッシュの問いかけに、天の声は返事をしなかった。

 ただし納得していない雰囲気なのは伝わってきた。

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