真佐江 1-2
アッシュとギガンテスはお互い仰向けになり、空を見ていた。お互いの全力と全力をぶつけあった結果の、清々しい引き分けだった。
んもう! 二人ともヤンチャなんだから! と、空が優しく笑いかけてくることは絶対にないが、そんな言葉を投げかけてきてもおかしくないような、どこか慈愛に満ちた暖かな日差しの降り注ぐ空だった。
「あー! やっぱギガちゃんは強いなー! めっちゃくちゃ楽しかった! また勝負しような!」
アッシュが満足そうに笑いかけると、ギガンテスも大きく裂けた口を開き、笑顔になった。
拳を交えた男たちの間に言葉はいらない。
もはや二人の間には種族と言語を超えた絆が芽生えていた。
「そういえばギガちゃんってさ、その腹、どんな鍛え方してんの? やっぱ地道に腹筋運動とか?」
ギガンテスはアッシュの言葉が理解できたのかどうかは不明だが、自慢げに自分の腹を叩いた。
そして起き上がると、大木ほどの大きさの棍棒を得意げに素振りし始めた。
「おいおい。その運動で腹筋は鍛えらんないだろ? え? もしかして『俺は腹筋だけじゃない』って言ってんの? あはは! わかってるって! ギガちゃんが怪力なのはわかってるってば!
ギガちゃんは腕力も最高! よっ! ミスター筋肉! 肩から大樹が生えてるよっ!」
アッシュは笑いながらギガンテスの筋肉を称えるコールをしてあげる。
そして、気づいた。
「……ギガちゃんってさ、目ん玉1個しかないじゃん? 今日は俺と1対1だったけどさ、もし人間が束で来たときって、どうやって戦ってんの? 目ん玉ひとつじゃ全員はさすがに見てらんないだろ?」
ギガンテスがぎくっと身を固くした。
痛いところをついたようだ。
「そういえばギガちゃん、その棍棒、基本縦振りばっかだな。しかも大振りの。
で、動きもそんな速くないから、かわされると次の攻撃出すまでちょっと間もあくし。その間に攻撃されるとパニックになるだろ? そーすっと、もうこっちの思うツボなんだよね」
ギガンテスが困ったように頭をかいた。全部図星だった。
「俺思うんだけどギガちゃんって、攻撃パターン変えたらもっと強くなると思うんだよな。
……うん、よし決めた! 新技考えようぜ! ギガちゃんがもっと強くなってくれた方が俺も楽しいし!」
アッシュが笑うと、ギガンテスも大きな一つ目を輝かせて話に乗ってきたのであった。