美緒 2-5
ミーシャになった美緒が目を開くと、そこは豪華なお城の中だった。
自分以外にも女の子たちがたくさんいる。
そんな中、玉座に座っているのは典型的な悪役令嬢顔の少女だ。
(あれ? 聖女じゃなくてやっぱり悪役令嬢コースじゃん)
ミーシャ(=美緒)が不思議に思っていると、性格が悪くて気の強そうな悪役令嬢が口を開いた。
「私の名はセーラ。あなた達に聖女の力を与える存在。あなた達が本当に聖女の力を受け継ぐ器を持つものかどうか、試させていただくわ」
悪役令嬢だと思ったら、まさかの聖女の親分だった。
(待ってー! この人、絶対に聖女の顔じゃないんですけどー! 配役ミスですけどー!)
ミーシャが驚いているうちに、なかば強制的にチュートリアルが開始された。
そこで始まったのは、どこの旧世代のお嬢様学校だよと思うような教育だった。
ジェンダー教育に馴染みがある聖女見習いミーシャにとって、ひたすら優雅に上品に女らしさを強要するチュートリアルは苦痛だった。
そして死ぬほどつまらなかった。
そして失敗すると、セーラからむちゃクソ見下された。しかも見下し方が典型的な悪役令嬢だった。
(……絶対にこの女、聖女じゃない……)
ミーシャは早々に飽きてキレた。
「もーいーでーす! やり直しま~す! 聖女コースつまんないんでリセットしまーす!」
他の聖女候補たちも含めて、全員がミーシャに注目した。
ミーシャはそんなことお構いなしだ。さっきの機械音声に向けて大きな声で話しかけた。
「やっぱりー、ハーレムアイテムは欲しかったけどー、いまどき聖女とかってー、もうオワコンだと思うしー。
やっぱもっかい悪役令嬢で好き勝手に楽しくプレイするんでー、再ロードでお願いしまーす。
AIさーん、聞こえてるー? おーい!」
【あ、あの、ミーシャさま……そういうのはですね……あのですね】
なぜかAIが動揺した声でたしなめてくる。
すごい。AIが困ってる。しかも困ってる演技が上手。
すごいすごい、状況に応じてそういう演出までできるとは。
美緒はAI進化の目の当たりにし、とても感心した。