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真佐江(40)の最後の秘密~闇の力が目覚めてしまったので、こうなったらてっぺん取ってみようと思います。さあ、俺のタマをとりたいヤツからかかってこいや! 返り討ちにしてやんぜ!~  作者: イトウ モリ
2章 美緒(13)の誰にも言えない秘密~自分の中に眠る悪女の血が目覚めてしまいました。どんな手段を使ってでも推しをゲットするつもりです~
13/35

美緒 2-1



 PM 8:50

 野々原家のリビング。


 夕食を終え、食後のお茶が出てくる。

 美緒はマグカップのお茶が冷めるのを待ちながら、両親に週末の予定の話を始めた。


「ねえパパママ。私ね、今度の日曜日にね、友達と【異世界体験】ってお店に行くんだ~」


「は!?」

「え!?」


 両親のリアクションに美緒は面食らった。

 予想した反応よりも5倍は大きかった。


 何故にそこまで驚くか。


「……ちょっとなにその顔。怖すぎなんですけど。

 ……あ。わかった! あぶないお店だと思ったんでしょ~?

 変なクスリとかやっちゃって異世界トリップ~とか言っちゃってる客がいるようなお店だと思ったんでしょ~? も~! パパもママも心配性だな~! もっと自分の娘を信用してよ~! そんなヤバい店に行くわけないでしょ~」


 母は頭をかきながら、湯呑みにお茶を注ぎ――角度をつけすぎたのか、フタからお茶をこぼしていた。


「……あ、あはは。そっか、そうなんだねー……。ふーん、異世界体験かあ……ママそんな店、初めて聞いたな―……」


 母がこぼしながらお茶を注いだ湯飲みを父が手に取った。

 もう片方の手には飲みかけの発泡酒の缶がある。


 普段の父は発泡酒を飲んでるので、お茶は飲まない。そもそも今父が口をつけている湯飲みは母のものだ。母の飲むお茶がなくなってしまった。


 動揺し過ぎである。

 自分の娘が変なクスリでパキっちゃうとでも思ったのだろうか。たしかに学年の中でそういうことをしている生徒がいるという話は聞いたことがある。

 だがしかし、自分の娘を信用して欲しいものである。非常に心外である。誠に遺憾である。


「みーちゃん? それはどういうお店なんだい? パパも知らないんだ。教えてくれる?」


 仲の良い両親は、驚いたときと同じように夫婦で同じような表情を浮かべた。

 驚きすぎたことが恥ずかしかったのだろう。ふたりとも微妙な苦笑いだ。


 まったく。しょうがない両親だ。


「あのねあのね! 私が昔読んでたラノベあるでしょ?

 どれも似たような話ばっかりで、完全に書いてる作者本人の自己満足を満たすためだけのような、チートとかハーレムとか溺愛とか妄想パラダイスなのばっかりのやつ!」


「……それ読んでる自分も同類だって思わないの?」


 母がげんなりした顔でつぶやいたが、美緒は聞こえないふりをした。


「それのね! 悪役令嬢の転生体験できるお店がオープンしたんだって! その名も【異世界体験 for ladies】!」


「はあ!? 初耳なんだけど!!」


 母がなぜかものすごく驚愕していた。予想外の食いつきだ。


 まさか母が悪役令嬢に興味があったなんて知らなかった。

 母の性格だと悪役令嬢に転生するよりも、戦士とかになってモンスター退治とかをする方が絶対に好きだと思っていたのに。


 母も実はちゃんと女性らしい部分があったらしい。食いついたなら話は早い。そうとなればさっそく交渉開始だ。


「お店もー、かわいくてー、おしゃれでー、自分のアバター的なやつもー、超かわいくできるみたいなんだー!

 ねえいいでしょ〜? お小遣いちょうだーい」


 父が場を仕切り直すように湯呑みをトンっと置いた。

 そして真面目な表情で美緒に向き合った。


「きっとそういうお店はいいドレスを選ぼうとすると課金しろって言ってくると思うよ。

 みーちゃん、悪いけどああいうのは中毒性があるから、1カ月で1000円までしか使っちゃダメ。

 きっと初回はいろいろ入り用だから3000円まで認めるけど。それ以降は1カ月で1000円。それが守れるなら許可するよ」


「さっすがパパ! 話がわかるう! じゃあはい! 三・千・円♡」


 かわいらしく両手でちょうだいポーズをする美緒に、父が苦笑しながら財布を取りに腰を上げた。


 それを制したのは母だ。


「ダメ! 自分のお小遣いから出しなさい! パパにたかるんじゃないの!」


「えー? いーじゃん、ママのケチー! たった3000円でケチケチしないでよー!」


「たった、じゃないの! 無駄遣いしないで!

 この先、景気だってどうなるか分からないんだから今はなるべく質素にコツコツと……!」


 そこに父が話に割って入った。


「……ママがそんなこと言うの珍しいね? 何かあったの?」


「なにもないですけど?」


 母の返事が早すぎた。


 美緒には分かった。母は何かを隠している。


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