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真佐江(40)の最後の秘密~闇の力が目覚めてしまったので、こうなったらてっぺん取ってみようと思います。さあ、俺のタマをとりたいヤツからかかってこいや! 返り討ちにしてやんぜ!~  作者: イトウ モリ
1章 真佐江(40)の誰にも言えない秘密~友達をいじめたやつをシメたら、仲間を集めてシマを荒らしに来ました。仕方がないので昔みたいに暴れます~
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真佐江 1-1

こちらは熟女クエストシリーズのNO.3作品です。

もし宜しければ、ぜひ1作目からお楽しみください。(タイトル上のシリーズ名からどうぞ)



 現実世界の時間でいうところの、PM18:45。


 野々原 真佐江(40)は、異世界にいた。


 ただの体験型ゲーム施設と見せかけて、実は本当にプレイヤーを異世界に転移させているというトンデモ施設である【異世界体験】――。


 真佐江は定時で仕事を終えると、近所の商店街の一角にごく普通のアミューズメント施設として、いけしゃあしゃあと営業しているふてぶてしい異世界体験へ直行し、いつもの30分1700円コース(物価高騰のあおりで200円値上げ)で勇者アッシュへ転生し、傍若無人で破天荒な異世界ライフを満喫していた。


 というのもここ最近、真佐江の業務中のイライラが特にひどいのである。


 今までだったら気にならなかったような些細なことがいちいち(かん)に障り、胃がキリキリと痛む。

 かと思えば、気分が落ち込み、意欲が低下し、仕事の作業効率まで低下する。


 まだ40歳を迎えたばかり。更年期障害には早すぎる。

 更年期なはずはない。だからこれは仕事のストレスだ。


 無能・能無し・足手まといな上司同僚部下たちによる連続精神攻撃を日々受け続けていることによる蓄積疲労だ。間違いない。


 そう、これは蓄積疲労。そして蓄積ストレス。


 きっと疲れているんだ。ストレスと疲労のせいで、いつもよりストレス耐性力が低下して、そのせいでストレスに過敏に反応しているんだ。


 原因が特定されれば話は早い。即決即行動派の真佐江は速やかに解決策を講じた。


 つまり、ストレス発散。


 ――というどこまでも自分に都合の良い言い訳をして、真佐江は仕事帰りの貴重な30分をアッシュとして過ごすことにした。



 アッシュはフィールド内をぶらつき、ぶちのめせそうなモンスターを物色する。


 とはいっても、もはやアッシュが満足するような強さのモンスターはその辺にはいない。


 レベルの低いモンスターは、アッシュの姿を目にするなり逃げ出してしまう。

 アッシュが素手でゴーレムを砕ける化け物だという認識は、モンスター界隈のもはや一般常識レベルになりつつあった。


 自分の拳を受け止めてくれる強い相手を探し求めたアッシュは、あてもなく彷徨い続けた結果、かつてのラスボス、ガローランドの城の跡地にたどり着いた。


 以前ガローランドの城が建っていた場所は、ガローランドの死と共に崩れ去っていたが、今はきれいに整地され、小さな墓が作られている。


 その墓は、とても小さかったが美しい墓だった。


 墓に故人の名前は記されていない。

 英雄眠る、とだけ刻まれていた。



 アッシュは近くに咲いていた花を摘むと、ガローランドの墓へ手向け、手を合わせた。


(よお、ガローランド。どっか平和な世界に転生できたか? 今度は悪い女に引っかかんなよな)


 祈りを捧げているときだけは、アッシュのささくれだった心が少しだけ穏やかになった。


 だがやはり、仕事で蓄積した苛立(いらだ)ちは収まらない。


 思い切り暴れないと家には帰れなかった。

 仕事のイライラを家庭に持ち帰りたくはない。


 なんとなく花を摘んだ森へと戻り、あちこちを行く当てもなくさまよっていると――。


「――あ!」


 アッシュは顔を輝かせた。


 そこには、ずっとアッシュが会いたくてたまらなかった相手がいた。


 大きな体。

 澄み渡った青空のような皮膚。

 顏の面積半分を占める大きくつぶらな一つ目。


 なによりアッシュが接近しても逃げ出さないでくれる貴重なモンスター。


 ギガンテス――!


 嬉しさがこみ上げる。

 まるで恋した相手に出会えたときのように、胸が高鳴った。


 自然とアッシュは駆け出していた。


「ギガちゃーん!! めっっちゃくちゃ会いたかったぜー!

 俺の腹パンとお前の腹筋、どっちが勝つか勝負だーっ! いっくぞーっ!」


 アッシュは子供のようにはしゃぎながら、腕をぐるんぐるん回して、自分の5倍はあろうかという巨人に向かって突撃していったのであった。


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