どうして空は青いの?
「どうして空は青いの?」
「それは愚問だよ。どうして海は青いのだろう?って聞いてくるのと同じくらい。」
隣で親子がそんな会話をしていた。やはり、長年子育てをしていると、子供の素朴な疑問もサラリとかわせるようになるのだろうか。
海水浴場では、何も考えていなさそうな子供達の喚き声と、必死に誘い文句を考えている男達、そしてそれを待つ女達でごった返していた。映画帰りだろうか、子供達が3Dメガネのようなものをつけて走り回っている。
彼らの熱気にやられて、海が蒸発してしまいそうだった。
幼稚園児らしき子供が親と手を繋いで、波打ち際に立っている。
私は初めて海に入ったことを思い出す。海はてっきり青いものだと思っていたが、実は透明だったなんて。ガガーリンは地球は青かったと言ったが、本当は地球は透明だったと言うべきではなかったのか。訂正するなら今からでも遅くはない。
そんな難しいことを考えていると、太陽の光に誘われて強烈な眠気が襲ってきた。瞼が重くなる。
いつの間にか意識が遠のいていた。
どのくらい寝ていただろうか。気がつくと、体の自由が奪われていた。
真空パックに入れられたような息苦しさを感じる。体を動かそうとするが、思うように力が入らない。
砂に埋められたのだ。なんとか脱出しないと。バタつくたびに顔に砂がかかる。
一旦冷静になって考えようと、犬のように顔の砂を振り払い、目を開けた。周りに助けてくれそうな人はいるだろうか。空を仰ぎみると、青いはずの空が黄色に染まっていた。地球が滅亡するかのような不穏な雰囲気を醸し出していた。
必死で体を左右に揺する。上下に動かす。
早く逃げないと。顔の穴という穴から体液を流し、言葉にならない声を発する。
隣から子供達の笑い声が聞こえた。なんて呑気なのだろう。